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56 ハウジングイベント その捌

ちょっと戦闘時、残酷描写ありです。


猪突の弓での追尾効果の矢でまず3連射でワルザを狙ったが、ワルザの前に大楯を持った鎧姿の男が現れ飛来する矢を剣で叩き落された。

そしてワルザは彼らに守られ後衛に姿を消す。


(思った以上に敵の数が多い)


倒れた馬が暴れるので馬車から避難した護衛対象たちをクラウスさんとヘレンさんが後ろに連れて行った。私たちがまず盾になって彼らを隠す。

やはり隙をついて草地に投げ出されていた伯爵をクラウスさんが助け出し、クロが土魔法で壁を作り地形を変えていく。

そして全員にメリッサちゃんがヘイストのバフをかけてくれた。


「広範囲魔法発動します。時間稼いでください!」


サーシャに言われ、今度は私とペケポンさんにメリッサちゃんから攻撃力アップのバフ。


「ジロー、メリッサちゃんにアレを」


ふよふよ浮かぶステルスアルマジロのジローはラジャ、と前脚を上げてメリッサちゃんに新しいスキル――【ステルスリング】をかける。人間サイズのメリッサちゃんの足元に金の環が縁どられ、それが見る見る彼女の頭上へ。その環の動きに合わせてメリッサちゃんの体が透明になった。


「メ、メリッサちゃん?」

「おねーさまの眼前にいますわー。わたくし、ちゃんと消えております?」

「あ、すっげ。ほんと見えないよ、お人形ちゃん」


ペケポンさんが感心して言う。

眼前の草が小さな音立てて折れるので、確かにそこに誰かがいるのはわかる。


「見えないだけで音や足跡で判別できるから重々気を付けて。見つかったら速攻戻ること。ね?」


見えないけれどメリッサちゃんはドンと胸を叩いたよう。


「お任せあれ。わたくしが彼奴らを内側から切り崩して参りますわ!」

「フレンドリーファイアないからサーシャの魔法に巻き込まれても大丈夫でしょ。じゃあ、お人形ちゃん頑張って。――ほら、来た」


そう言ってペケポンさんも土壁から駆け出していく。

その後を小さな足音が付いていったので、メリッサちゃんも走り出たようだ。

そして私はヒラリと土壁にジャンプして登り陽動だ。兎人のジャンプ力は気持ちいいな。

威力の高い鉄(やじり)の矢を使い、弓も攻撃力の高いフレンドゴーストの弓に変える。倒しに行くぜ。私の前にはジローさんがいて変わらず【アイギスの盾】の鉄壁で守ってくれる。頼りにしてます。

魔法攻撃は…避けに行く!


言った直後に私に向かって炎が襲ってきた。

私はそれを認めると背後にヒラと躱し、別の土壁の上に立つ。


(メリッサちゃんのかけてくれたヘイストのおかげで いつもより体が素早く動く)


そしてまずはHP低そうな魔法職から狙いをつける。

熊鍋と攻撃力アップのバフ重ね掛けのおかげか、なにか内から沸々とパワーが沸いている。【鵜の目鷹の目】で弱点を見つけ、そこに向かって矢を放つ。


(――行けっ)


いつもより力強い音で矢が飛んで、魔法使いの心臓を打ち抜き一撃で光の粒子に変えた。クリティカルショットのアナウンスが聞こえた。

そして、彼らの中で怪しい動きをする者が出始めた。――同士討ちだ。メリッサちゃんが奴らの傍にたどり着いたのだ。


(【魅了】のエフェクトが見える。メリッサちゃん、無理しないで…!)


メリッサちゃんはガルドラーだ。本来の得意魔法は歌い上げる【呪歌(ガルドル)】だが、相手の陣地で同士討ちさせるのに使うのは また別の【魅了】魔法だ。これなら敵に呪文を聞こえないようにつぶやくだけでいい。そして【魅了】はドール種が生来持っている魔法で他の種族より効果的。さらに今手に持っている水晶のワンドの効果で魔法効果30%アップされている。


(攪乱に成功したら逃げてきてと言ってあるけど…!)


メリッサちゃんの身を案じつつも、私も戦闘に集中する。

敵が近づこうとするのを見つけて後退。もちろん、後退時罠を仕掛けるのは忘れない。

クロが前衛に出てまた魔法具を起動する。ペケポンさんと私の代わりに攻撃を受けてHP減ったジローが癒される。今はいつもヒーラーとしても活躍してくれるメリッサちゃんがいないから。

別の土壁に移動した私は罠に嵌りHP減らした斥候にまた重い矢を放つ。


(弱点を、狂いなく)


再度心臓へ一撃。2人目のクリティカル。弱点を外さなければクリティカルは存外容易に出てくれる。

3人目はペケポンさんに2人の賊が襲い掛かるのを背後から討つ。

このクリティカルは、ほぼラッキー。


「範囲水魔法展開します! "大氾濫!"」


直後後ろのサーシャが魔法を展開。するとドッと溢れる水のエフェクトが足元から沸き起こり急流が前方の敵を押し流す。

相討ちしていた後衛にいた敵らはこれでほとんどが粒子になって消えていた。

HPの減った手前の敵を立て続けに屠る。


(4、5、6人…! …あ!!)


6人目を連続でクリティカルで倒したところで称号がついた。


("一撃の覇者"! お姉ちゃんも持っていたヤツだ。よっし!)


「あとはワルザのみだ!」


クラウスさんが状況説明してくれる。

私はメリッサちゃんが作り置きしてくれているMPポーションと発奮薬を飲む。発奮薬は物理攻撃が高くなるのだ。

そして戦闘中の音楽が変わった。

ラスボスのワルザが後衛から野太い声をまき散らして走り出てきた。その前を――大きいラットのような鼠が走っている。その鼠にしがみついているのはお人形サイズに戻っているメリッサちゃんで、片手で鼠にしがみつきながら、小脇に何かを抱えている。


「サンダーボルト!」


ペケポンさんの声と同時にピシャーンと天から雷が落ち、ワルザのHPがかなり減った。

これは意外だった。正直、ペケポンさんは今まで魔法を使っていないので効果は低いのだと勝手に思っていた。

だが、ワルザは止まらない。

私はワルザに追いつかれそうなメリッサちゃんを助けるべく弓を引き絞り――。


その時、彼女が抱えているのが何かを知り、私はすべての動作が止まった。


それは、メリッサちゃんの 足 だった。



――今まで私は魔法を攻撃に使うというのは考えていなかった。


私の場合、魔法の強度を左右する魔力と知力値の伸びが悪いから。


だが、風魔法はずっと付け続けていたのでLv4まで上がっているし、使っていないが魔法の種類、アーツも出ている。矢の速度や方向の補助に風魔法を吹かせるのが私の魔法の使い方なので、意外や細かい魔法の制御も上手くなっていた。


私は冷静だった。


スキルの付け替えを即座に行い、【罠】を外し、【付与】を付ける。

補助的に使うのではなく、風魔法で矢に威力を増したかった。

獲物の体にねじ込むように。


――明らかに私は冷静だった。憎悪と怒りで支配されつつも、怨敵に最大の苦痛をもたらす方法を咄嗟に考え付くくらいには。


――まず、足。


ワルザの右足の甲に矢が着弾し、アーツ"竜巻"が付与された矢はその場で爆発した。やつが獣のような悲鳴をあげた。


――右目。


顔に刺さった矢は相当HPを削ったが、まだヤツは消えない。脳まで達していなかったのか? だが、奇声を上げ座り込む。


――痛みはないのか? NPCだから? イベント戦闘だから? どこだ? どこが一番ヤツに苦痛を与えられんだよ、私のメリッサちゃんを傷つけたように!


私は今度はヤツの大きく開いた口腔内に狙いを定めた。

冷静だ、冷静だ。私は冷静だ。ヤツを惨殺するための秩序だった動きが出来るくらいは。


だが、次の瞬間聞こえた声にハッとした。



「おね~さま~~~!! 心臓です! 心臓を狙ってくださいませ! 時間がありません、お早く、お早く!」 



……私は狙いをその声に導かれたように狙いを変え、放たれた矢は弧を描き、そのままワルザの胸元に消えた。そしてワルザも光になって、その場から消え失せた。






シンとなった場にメッセージが響く。イベント戦闘の勝利を告げていた。

そのアナウンスの音声と重なるように、ペケポンさんが呟いた。


「妹ちゃん、怒るとめちゃくちゃ怖い…。なぶり殺しじゃん…」


ペケポンさん、聞こえてますよ…。




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