20 第2の町プルミエへ
『フィールドボス レアボス、灰色熊変異種:ホワイトベアを倒しました』
『成功報酬SPと"白熊装備"が得られました』
『初討伐報酬 魔石:ホワイトベアカライトを得ました』
『ジョブLvが上がりました。狩人Lv6になりました』
おお、ジョブLvが上がった。すばやさが上がったぞ~。
SPも振っておこう。取得可能スキルは変化なしだし、セット出来るのは5つ迄だから、このままのスキルをまず育てようか。そういえば、定番の【鑑定】は生えてこないのかな?
「きゃー、これは」
「かあわいいいいい!」
今私たちは、ふわふわの毛皮のロシア帽、やっぱり真っ白な襟巻き、裾に毛皮をあつらえた真っ白ポンチョ、足元はふわもこムートンブーツ。お手々は皮手袋。勿論両方とも色は白--という装備。
4人同じものが出ました。早速身に付けてみる。着替えはパパッとステータス操作で済むからゲームはラクだね。装備としては現段階手に入るものとしては高機能。私の篭手よりひとつ劣るけど、武器に弓を使用なら体術使わないし、そこまで影響ないでしょう。私も着ています。
サーシャとホノカお姉さんはテンションあげあげです。いつも民族衣装着込んでいるハニーさんも衣装萌えかと思いきや渋い顔で
「夏の装いじゃない…」
と、呟いている。でも、ロバに乗っている彼女もお揃いの白熊装備。
まあそうだね。夏にこんな白一色だと野生では目立ってしまって、そうそうに狩られちゃう。
「冬装備かな。季節がゲーム内にあるのかな」
そう、この装備寒さ耐性が付いていた。絶対、冬仕様のフィールドあるよね。
「寒冷地のフィールドあるのかもね。出来れば季節が欲しいな。ハウジングに期待しているの」
「ハウジング?」
「そうよー。ホノカお姉さんはガッツリ生産できる自宅工房兼、店舗を得るのに頑張りたいのよー」
私はハニーさんを見る。
「私も店舗は欲しいね。でも、今は行商が楽しいから、自分の戦闘力も上げたいね」
「ハウジング…」
私は思わず呟く。
自分好みのお家なんて、素敵じゃない?
いや、おとーさんの建てた家に不満があるわけじゃないのよ。決して。
でも私次女だし、いずれ家を出るだろうし、そうしたら自分の棲家を手に入れないと。
うん、多分、普通にお一人様でマンションに住んでいる自分が想像つく。
「…自分好みの庭のある家っていいですね~」
ホワホワホワン。想像する、イングリッシュガーデンに佇む私…。
現実でやることを想像する。虫。虫。虫。虫との闘い。…私には敷居が高い。
「私もお家入手目指しちゃおうかな~」
ゲームで。虫のいないこの世界は素晴らしい。
「いいですね! いつ、ハウジング実装されるんでしょう?」
サーシャがハニーさんに振る。
「それが情報もまだなのさ。だから、攻略組もプルミエで腐っていたんだろうけど」
お金の使いどころがなかったのか。ふむ。
そんな雑談をしながら、道々に沸くモンスターを倒しつつ、プルミエに向かう。やがて、壁に囲まれた町が見えた。
ハニーさんが指で示す。
「あの壁に囲まれた町がプルミエだよ」
壁の一角には大きな門があり、その前で衛兵が一人一人身分証の確認をしている。
これは、プレーヤーも同じ。ファンシーでは見なかった光景だ。
ハニーさんがロバを人の並ぶ列の最後尾につける。
「…おかしいね。ここまで並ぶことなんて珍しいよ」
「なにかのイベントフラグかな?」
「どうだろう…。あ、私たちの順番だ」
衛兵は私たちをジロジロと見た。
衛兵は一人、もう一人は普通の町民に見えた。
だが、その彼が私たちをじっと見る。
「…鑑定しているね。なんのつもり?」
ハニーさんが冷ややかに言った。
「これは失礼しました。パーティー全員が珍しい装備で揃えていらっしゃるので。どこで入手したか伺いたいのですが」
ハニーさんが私たちを見る。どうする? と目で聞いてくる。
別段隠すことではないので、うんと私たちは頷いた。
「森を越えるときのボスがレアボスだったの。そのドロップだよ」
「レア? …情報を伺いたいのですが」
鑑定して来た男がグイと身を乗り出す。
その様子を衛兵が嫌そうに眉を潜ませた。
「おい、そこまででいいだろう。あんた達、ギルドに所属しているか?」
「冒険者ギルドに所属よ」
「フィールドボス討伐なら報告義務がある。そこに報告してくれ。さ、行った、行った」
こら、と衛兵と鑑定男ともめるのを尻目に私たちはプルミエに入場した。
プルミエの町もファンシーと同じ中欧風の色合いの可愛い町並みだが、空気感が違った。
なにせ、広場の音楽が不安感を煽る、暗い音楽なのだ。ファンシーのブーカブーカいう明るいアコーディオンのBGMと違って、風の音に混じって、チーンシャラン、チーン…という仏壇のお鈴の音かと思う音色が耳に聞こえるのだ。
そして、明らかにNPCがいない。広場にいるのがプレーヤーばかり。彼らもこの状況にザワとなっている。期待する者、不安を持つ者、様々だ。
「これはイベントよね…。さすがに、この間までのプルミエと様子が違うわ」
ハニーさんがグルリと辺りを見回す。
「衛兵さん、報告義務があるって言っていたけど」
「冒険者ギルドよね。行ってみましょ」
私たちは足早に、プルミエの冒険者ギルドに向かった。




