大和型護衛艦主砲砲撃 長射程砲弾使用(平成22年大改装時装備) 敵艦側視点
「嵐を抜けましたが、レーダーには日本の巡視船が急速離脱しているのみです。現海域に日本艦隊は見当たりません」
「監視を厳としつつ、衛星との接続を最優先で日本解体を探せ。必ず近くにいるはずだ!」
「遼寧および山東の両空母は艦載機の発艦準備中ですが、格納庫に収納していたため、発艦に15分との事。大連および天津は嵐によりエレベーターとカタパルトの点検作業との事です。発艦可能までには最低30分必要と連絡が入りました」
忌々しい日本海軍め。何が海上自衛隊だ。装備は下手な海軍より優れているではないか。しかも空母まで実戦配備しながら、扱いは駆逐艦と言い張る。一体、どこのバカが固定翼機を数十機運用可能な艦船を、駆逐艦と言い張るのか理解不能だ。
「司令、レーダーに反応あり。距離200にて高速で飛来する物体。速度……マッハ5です! 我々の向かっております! 方角から、日本艦隊より飛来したものと推定。数、12」
「どういう事だ!? 少なくとも日本艦隊までは4、500キロは離れているはずだ! それに、ミサイルの飛距離ではあり得ないぞ!」
「ですが司令、事実です……飛来物、分離! 前後に分かれました。前部がさらに加速……バカな! マッハ7? 高度5万で尚加速中。方角は艦隊に向かっていますが、高空を飛来しているため、こちらに着弾するとは思えません」
「艦隊、散開しつつ回避運動。艦載機は発艦急げ」
一体日本は何を考えて攻撃した? どう考えても、高度からこちらに当たるとは思えないが、何か秘策でもあるのか?
「艦隊、回避行動。各艦の艦長に伝達!」
艦橋が慌ただしくなる中、日本の攻撃の意図を考える。
推進剤と思われる熱源反応が無い事を考えれば、ミサイルではない。当然精密な誘導など無理だろう。かといって、ここからではどの陸地も遠い。しかも我々のコースに向けている。
「し、司令! 飛来物再度前後に分離しました。先端部が急速に高度を下げながら、我が方に向かっております。数、12のまま……速度、マッハ5を超えて飛来します!」
誘導弾なのか? この距離でか?
「司令、着弾まで残り30秒! 艦載機の発艦間に合いません。飛来物……空母に向かっております!」
「空母に回避運動を優先させろ。恐らく実弾だ。早々当たるとは思えん!」
「りょ、了解。空母は艦長の判断により回避優先」
「着弾まで20秒……15秒……10秒……5秒!」
「な、何だ!?」
艦橋から空母を見ていた見張りが叫ぶ。
「どうした」
「砲弾と思われる物が細かく分離……散弾のように空母へ襲いかかっています!」
「散弾だと?」
飛行甲板はそれなりに装甲を施している。散弾でどうにかなるとはとても思えないが、何を考えての攻撃だ?
「遼寧及び大連に着弾した模様! 煙が立ち込めています!」
「状況を報告させろ。発艦はどうなっている?」
一瞬の静寂。その一瞬が長く感じる。
「し、司令。再度飛来物を捕捉! 数再び12!」
な、何なのだ? 何をしたい?
「遼寧より通信。甲板前方が大破。発艦不能! 発艦準備中の艦載機が爆発した模様です。また飛行甲板の下にも被害が出ているとの事。他に後部飛行甲板にも被害多数。離着艦不能!」
「大連……な、なんだと? 大連、飛行甲板が大破、使用不能とのこと! 艦中央部及び後部で火災発生!」
「ば、バカな。散弾で甲板を貫通したというのか!?」
「不明です。大連は艦橋にも被害が出ている模様……艦長以下20名以上が死傷していると連絡が入りました!」
な、何という事だ。我々の虎の子空母が、これ程簡単に無力化されるとは……。
「第2波に続き、第3波も確認! 狙いは空母としか考えられません!」
「第2波の着弾まであと1分を切りました。先程よりも飛来速度が上がっています!」
次々と入る報告に、思わず狼狽える。
「艦隊に通達せよ。甲板にいる乗員は、すぐに艦内へ避難! 急がせろ!」
ブザーが鳴り響くが、まるでそれはこれから訪れる悪魔の叫び声にさえ聞こえる。悪魔など信じていないはずなのに、そうとしか考えられない。
「山東、戦闘機発艦! どうなさいますか?」
「偵察に向かわせろ! 一体何が起きているんだ? 情報が不足しすぎだ!」
「な……敵砲弾、高度2000にて散弾状になりました!」
は?
「ダメです! 発艦した戦闘機が巻き込まれます!」
すぐさま前方で、火だるまとなった戦闘機がきりもみ飛行を始め、艦隊の前方に展開していた駆逐艦へ爆発しながら落下していく。そして避ける間もなく、戦闘機が駆逐艦へと激突し、巨大な爆炎が上がった。
「敵砲弾、艦隊を覆うように降り注ぎます!」
ば、バカな……。
「戦闘の駆逐艦に被弾多数! 火災が発生した模様! 空母にも被弾しています!」
「鄭州に被弾、連絡途絶!」
「西安、艦尾消失。航行不能!」
「荊州、艦橋大破した模様! 続き、濰坊通信途絶!」
次々と入る信じられない被害報告に、思わず手に力が入る。
「艦長、直撃弾来ます!」
その報告を聞いた直後、我が艦に鋼鉄の雨が降り注いだのが分かったが、私の意識はそこで永遠に途絶えた。