願ってみたり
この世の中には、人気者とぼっちが存在する。特に、学校生活においては重要だ。
では、どんな人が人気になるのか。
まずは、コミュニケーション能力だろう。どんなにかっこいい人でも話が通じないなら人気はない。それに容姿、学力、運動、人の良さなどの能力がプラスされて判断される。能力に点数をつけるなら、コミュニケーションに60点、容姿10点、学力10点、運動10点、人の良さ10点になる。この合計で学校生活が決まる。つまり、学校の人気者は、能力点数が高いわけだ。
ぼくは、一番点数が高いコミュニケーション能力が予想以上に欠けていたのだ。
カーテンの隙間から、太陽の光が差し込む。それは、綺麗だ。神秘の光のようにぼくをどこかに導く道のようだ。遠くから音楽も聞こえる。女神様でも来るんじゃないだろうか。
音につられる様に顔を動かした。そこには、四角い箱がある。ただ、数字が書いている。
「はち、さん、ぜろ。」
ぼくは、慌てた。そして、天国のような場所から地獄に落とされた。
「やばい、学校が。」
寝起きだから声もあまり出ない。体の動きも鈍かった。
急いで準備した。そして走る。下駄箱で上靴に履き替え、また走る。それは、早い。もう陸上部になってもいいぐらいに。
扉を開けた。クラス全員がこっちを見る。ただ、ほとんどの人は黒板のほうを見直した。
そうだ、クラスの半数はぼくを認知していない。そのはずだ。ぼくなんかクラスにいてもいなくてもいい存在なんだから。学校で口を開く回数なんて数回、休み時間なんて大好きなラノベをずっと読むだけ。
そんなこと考えてる場合ではない。今は、目の前のことだ。
先生が少しびっくりしている。
「珍しいな、東出が遅刻するなんて」
「すみません、席に座ります」
先生には、そう言って自分の席に向かった。
「あいつ誰だっけ?」
「ぼっちの東出俊東出俊くんだよ」
どこからか聞こえた。もうぼくは、慣れている。いつものことだ。
周りに迷惑のかからない様に静かに席に座った。
すぐにチャイムは鳴った。
終わると同時に誰かが寄ってくる。それは、青山鈴青山鈴だった。この学校で話す唯一の女子である。
「しゅんが遅刻とは珍しいね」
「あーすずだったか」
「今日どうしたの?」
「夢見てたら寝坊したんだよ」
「しゅんらしいね、じゃあ呼ばれてるから行くね」
すずは、小学校から一緒だ。この桃山高校にぼくと一緒に進学したのである。彼女は、普通に友達もいたのにぼくだけしか進学しない高校を選んだ不思議ちゃんである。
その会話以降、誰とも話すことなく放課後。やっと人間関係など考えなくていい時間の始まりだ。
そう思いながら、金曜日によく行く家の近くの神社に行った。金曜日に行く理由は簡単。土日にいいことがあるように神様に祈るのだ。
お賽銭箱に100円玉を投げ入れ、鈴を鳴らす。
「気軽に話しかけれる自分の理想の女神様のような方が身近に居てほしいです」
心で爽やかに祈り、おじぎをして家に帰った。
今日の寝坊で走った疲れを癒すかのようにお風呂でゆっくりし、お布団の中に入った。冬に寒い所からお布団に入るのは気持ちいい!
おやすみなさい!
今日もまたカーテンの隙間から、太陽の光が差し込む。だが、土曜日だから昨日とは違う。今日も隙間からの太陽の光は、綺麗だ。女神様でも来るんじゃないだろうか。
だが、いつもの土曜日とは、全然違うものだった。
ふと光のほうを見ると、とてもかわいい美女がこっちを笑顔で眺めながら立っていた。