ようこそ上海へ 後編
クソ、今何時だよ・・。
麻酔を入れられて何時間か寝ていたのか頭がボーっとしているのか脳が働きが悪い気がする。先ほどの傷跡が赤くはれていて自慢の身体が台無しだ。
お腹も空いている。最後に食べたのが22:00ぐらいだったから多分午前の7時ぐらいだとは思う。
さっさと脱出したいところだけど何せ手錠がかかってる・・・。紐なら、時計の刃物で切れるとは思うけど。
廊下から足音がする。こっちに近づいてきている。
体力がなくなった捕虜みたいにぐったりしている仕草を取りながら待ち続ける。扉が開いて特戦の女がトレーを持ってきてた。
ロールパンとシチューだ・・。中華料理じゃないのか?
別の容器に果物がたくさん入っている。
女はトレーをテーブルに置いてパンを半分にちぎりそれを口の中に。
ああ食べたい・・・!
「半分はあなたに」
え?
「どうぞ。麻酔が思った以上に効いてまして3日は寝てましたよ」
と言ってツヤのあるロールパンを私の口に差し出した。
「死ぬかと思った。暗闇の中さ迷ってたから」
「口をあけてください。パンを入れます」
あけた口に半分のロールパン丸ごと入れられる。美味い、ほんのりと甘く素朴な味だ。どこか懐かしいパンの味だ。続いてシチュー、果物を半分いただいて・・、
「ありがとう、美味かった」
「私は敵なのにどうして食事を与えた?」
と質問を投げると、
「人が苦しんで死ぬのが嫌だから・・」
そういって容器をまとめながら言う。
今頃だけど特戦の女の目元はクマがあり、体質なのかそうなのかはわからないけど特徴的だと言える。
彼は椅子を持って私の前に置いておくと腰をかけて、
「では本題へ・・あなたの軍についてお話を。兵力は?」
と尋問を開始した。
「兵力は30ちょっと」
「30万の兵力ですか?」
「いや、300人だ」
「・・・!?」
ん、驚いた顔をした。なにせ民間軍事会社より少ない。正確には350人ちょっとかな。
「A.G.P社とA.K.A、日本赤軍以上に少ない数ですね」
占めた、A.K.Aの情報を聞けるチャンスだ。
「主な活動は?」
「要人護衛ぐらい」
「要人護衛のほかにもやってる経歴があるのではないでしょうか」
うっ、あの事か・・。
「救出とかテロ対策ぐらいだよ」
「ある程度把握しているのでいいです。名前はミトさんですね。会社の運営は彼方ですけど・・オペレーターですね、間違いありませんか?」
クソ・・・徹底的に調べたな・・・。つうか分かってるんならもういいだろこれで。殺されるじゃないか。
オペレーターは指揮官みたいな役割で大抵の責任はこっちにある。特にオペレーターがヘマして捕虜になったり死亡すると全体的に影響がでる事がある。何件かそう言う事例があったのでサブオペレーターを用意した。これは口が裂けてもいえない。
「分かってるじゃないか。もういいだろ」
「最後に国籍です・・・?あれ?」
国籍か。これが分かると国にも迷惑がかかし面倒ごとになりかねない。大抵は不明国籍で活動するのが一般的だけどもう後は無いので、
「私の国籍は日本のはずだけど・・・」
「・・・?ああ、ハーフでしたか。あれおかしいですね・・大尉の見間違いでしょうか・・・」
とブツブツ言う。確かに外見は白人だけど中身は日本人だしアメリカ人だ。生まれつき日本の血が回っているからな。
廊下越しから騒ぎ声がする。中国語で何か叫びながら銃を撃つような音が響いてうるさくてしょうがないと思うと、扉が破られて目の前に鈴が!
「鈴!」
びっくりした特戦の女は振り向くまえに鈴が取り押さえて、デジタル迷彩を着用した元班員らが鍵を片手に手錠を外し、三日ぶりに私は自由の身となった。
私物品を班員に持たせて毛布で身体を包んで、班員の下誘導されていく。
「ずいぶん派手にやったなあ」
白壁の壁に血がべっとり倒れて、出入りをしていたのか武装警察と公安が床に倒れて行動不能になっている。
班員らの方に"上海軍区"のワッペンが左腕についてる。正規軍じゃないか!
公安部施設から外へ出て行くと上海市街地が大騒ぎして、一般市民らが逃げ惑っていると一番高い私達が泊まっていたホテルの最上階、中階が爆発した。
「何が起きてる!?」
私は英語で叫ぶとハマーに押し込まれた後運転手が「爆破テロです」と言い、鈴と元班員らを乗せて急発進。
公安の拳銃が火を吹かれて後から武警のハマーが1台追撃してくる。
意外と中国国内も中東のように荒れているらしく軍隊が大量に配備されていたのもその理由の一つだったらしい。
走っているうちに海のほうへ。狭い路上を難なくすり抜けていく。幅広い河に1艇の小型船が待機していた。
「エイミーのユニットか」
ハマーはブレーキの音に横滑りする。盾代わりに被弾する車両を背に、小型船に班員と共に飛び乗った。
鈴も大型バイクで駆け付けた。
まるでホンコン映画のようなアクションバイクから小型船へジャンプして乗り込むとエイミーの彼女の着地と同時にボートを急発進!
「エイミー、おかえりなさい。上海の旅行はどうだった?」
私は、
「ああ、楽しかったよ。もう行きたくないね」
と言い、「せめて上海料理か北京料理くらいは食べたかった」ぼやいた。
ただ中国の旅行は依頼主が多いので・・、しばらくは楽しめそうだと思った。