過去夢
「………オ……リオっ!」
「ん~…もう少しだけ……。」
「この馬鹿、さっさと起きろよっ!」
「いだっ!」
頭に衝撃を受け、リオは慌てて顔を上げる。
「………痛いじゃないか…セト。」
自分の身に何が起こったのか分かったのかリオは唇を尖らせた。
「男だろうが、そんな文句は聞き入れねぇぞ。」
「はぁ…君って本当に……。」
リオは溜息を零す。
「それにしても、お前が俺よりも遅くまで起きねぇなんて珍しいな。」
「たまにはそう言う時だってあるよ。」
リオは体を起こして背伸びをする。
「昔のお前なら確かにそう言う時があったが、今のお前はそんなの今まで一度もなかったじゃねぇか。」
「そうかな?」
「そうだよ、調子が悪ぃのか?」
「………。」
緑色と赤色のメッシュの髪の間から覗かれる銀色の瞳が心配というように自分を見つめるので、リオはクスクスと笑いだした。
「何だよ、俺は心配してやっているのに。」
「ごめん、ごめん。」
リオが謝るがセトーデの機嫌はよくならない。
「うん、昨日眠りにつくのが遅かったからかな。」
「何かあったか?」
「何にもないよ、ただ、この旅ももう終盤だな…と思ったら寂しくなって。」
「……。」
黙り込むセトーデにリオは苦笑を浮かべる。
「前世はやり遂げた瞬間に、裏切られてブスリだったけど、今はどうなるかな?」
「……させねぇよ。」
「えっ?」
低い声音に思わず振り返るとそこにはいつもは飄々とした顔を真剣なモノに変えたセトーデがいた。
「セト?」
「させねぇよ。」
「……。」
「前世…俺はお前の敵を葬る牙として戦ったが、今はお前の身を守る剣として戦っているんだ、だから、絶対にそんな事はさせねぇよ。」
「セト……。」
二人は互いに互いの瞳を見つめる。セトーデは翠と紅の瞳をリオは銀色の瞳をーー。
「リーオ…まだ起きてないの?」
「――っ!」
ノックと共に仲間の声が聞こえ、リオは体を揺らす。
「あー、今行くから、先行っとけよ。」
「はいはい、あまりに遅かったらごはん抜きだからね。」
「わーてるよ。」
セトーデはリオに苦笑を見せ、彼の髪を撫でる。
「さっさとしろよ、あいつ煩いし。」
「あ…そうだね。」
リオが動き出そうとすると周りが歪み、そして、見慣れない天井が見えた。