異能者狩り2
リオはフードを深くかぶりなおすと、目の前にいる門番に向かって加速する。
「おい、お前っ!」
「この先はーー。」
リオは一瞬にして足もとにマナを集め、そして、それを爆発させる。
リオの体は簡単に吹っ飛び、彼女は門を軽々と超える。
「何っ!」
「異端者かっ!」
彼女は空中で回転をして勢いを殺し、着地する。
「……。」
リオは空中から一本の両刃の剣を取り出した。
「マナよ。」
「くそっ!」
「こいつ一人だやっちまえ。」
「てあああっ!」
「我が剣に宿れっ!」
襲い掛かる兵士たちにリオは捌き、手加減をして伸していく。
「くそ……。」
「化け物かよ。」
「怯むな、怯むな、こいつ一人だっ!」
「応援を呼べ。」
リオは兵士たちの声を聴きながら僅かに口角を上げた。
うまくいけば全ての兵士が自分に目を向ける事ができる、そうすれば、まだ捕まっていない能力者が囚われずにすむかもしれない。
それは傍から見れば自己犠牲にしか見えないかもしれないし、彼女一人でどうこうできるものでもないのだが、彼女はその方法しか知らなかった。
自分に注目すれば、他の者に目がいかない、そうすれば、大切な「仲間」が平穏で過ごせるかもしれないのだ。
「絶対に…今度は、私が守る!」
襲い掛かる兵士を決して殺さないように彼女は一人一人を捌く、それはまるで、演舞のように美しかった。
しかし、世には多勢に無勢という言葉がある、どんなに彼女が能力者であったとしても、根本的な性別は女性であった。
いくら、斬っても斬っても、次から次へと湧いてくる兵士にリオは読み間違っていた事を悟った。
彼女はどんなに多くても数十の兵士しかいないだろう、と思っていたのだが、残念ながらその倍以上はいたのだった。
そして、疲労が重なった彼女は兵士の足払いにあい、転んでしまう。
「くっ!」
すぐさま態勢を整えようとする彼女だったが、すぐに十数本の剣が彼女に突き付けられる。
「……。」
「降参しろ。」
「…………。」
リオは俯き、そして、小さく何かを呟く。
「火のマナよ……、我が呼び声に応えいでよ……火柱っ!」
先ほどまでリオがいた場所に大きな火柱が立ち、兵士を呑み込んでいく。
リオはふらつきながらも、その場を去ろうとするが、どうやら足払いを食らった時に足を挫いたのかすぐにこけてしまう。
「……っ!」
「居たぞっ!」
「こっちだ、どうやら怪我をしているようだ。」
「手間かけさせやがって。」
火柱に呑み込まれなかった兵士がまだ数人残っていたのか、徐々にリオに近づく。
「へぇ、一人に何やっているんだ?」
「えっ?」
「ちっ、仲間かっ!」
兵士が剣を構える前に疾風の如く一人の青年――セトーデが刃を走らせる。
「何で……。」
「…水臭いじゃないかよ。」
「……何で…。」
「放っておけるか、俺の命の恩人を。」
「……だけど。」
「だけども、しかしも、かかしもねぇよ。」
「……。」
「俺はお前を助けたかったら助けた、お前が気に病むことはねぇよ。」
リオは二、三回瞬きをした。
「……………変わってなかった。」
「ん?」
風でかき消された声にセトーデは首を傾げるが、リオはそれに答える事はなかった。
「セトーデ…さん。」
「セトーデかセトでいい。」
セトーデがそう言うがリオは首を横に振った。
「これから、どうするつもりですか?」
「取り敢えずは……。」
「えっ?」
セトーデはニヤリと笑ってリオを担ぎ上げる。
「は、離してっ!」
「嫌だな、足を怪我してるんだろう?」
「……。」
「そんなら、大人しくしとけよ。」
セトーデの指摘に黙り込むリオに対して、セトーデは不敵に笑って彼女を抱えたままその場を逃げ出したのだった。