氷解
ここ何日は何かがおかしい。
男は帰宅して、テレビを観ながら思う。
あまりに物事がうまく進み過ぎている。自分の思い通りに。いや、願った通りに……。
良く分からないまま採用された企画は、ほとんど男の考えるように進んでいた。経験上通らないと思われた希望は、例外なく通された。しかし、「通るはず」と思った希望は一部は通され、一部は却下された。
何故だ?明らかにおかしいぞ……。こんなの、俺の実力で成し遂げている訳じゃないじゃないか……。
男は原因を探ろうと記憶を遡る。
あの日の翌日からだ……。家に帰ってから寝るまでの間が思い出せない、あの日……。一体、何があったんだ……?
その日のことは、何回思い出そうとしても、無理だった。
あと、何故か引っ掛かる『契約』の二文字。あの日と何か関係が……?
男が悩んでいると……
「えーっ、オカルトですよぉーそれってぇ」
テレビから、超常現象を熱弁する専門家に容赦のない言葉を浴びせているアイドルの声が聴こえてきた。
「しかし、古代では……」
専門家も必至に食い下がっている。
「そんな昔のことなんか知りませんよぉ。今は、そう言うのって、誰も信じませんしぃー」
「だが、黒魔術等は――」
「……ん?黒魔術……。」
男は、専門家の言葉の中に、引っ掛かるものを感じた。
「黒魔術って確か、悪魔とか……っ!」
その瞬間、『悪魔』と言ったその瞬間に、男の疑問は全て解決した。
「思い……出した……。あの日、俺は、悪魔と――」
「思い出しちゃいましたね」
ハッと顔を上げると、そこには、あの日の悪魔がいた。




