非日常1
目覚ましの音に意識を覚醒させられ、男は目を覚ました。
「朝か……」
いつのまにかベッドで寝ていたようだ。寝る前のことを思い出そうとするも、うまくいかない。
「今日も企画作りか……」
二度寝したい気持ちを振り払い、男は体を起こした。
つけたテレビからは、昨日起きた電車事故の原因について解説者が何やら言っている。
事故なんて、身近に起きなければ関心などない。
男は急いで支度しながら思う。
それこそ、自分か、同僚にでも起きない限り……。
男はテレビを消し、慌ただしく会社へ向かった。その時には、男の頭の中は、企画のことで一杯になっていた。
明らかに、数が少ない。
いつもなら、男よりも早く来ているはずの、同僚達の姿が見えなかった。それも、何人も。
「おい、聞いたか。また電車の事故が起きたらしい。あいつら全員巻き込まれたって」
同期の友人が、男の疑問に答えた。
「幸い死者はいないみたいだが、多数怪我人が出たって。最近物騒だな。俺、電車通いじゃなくて良かったよ」
事故の影響か、会社全体が仕事の雰囲気ではなく、男もその日の仕事は集中出来ず、企画は完成しなかった。
帰り道、男は昨日のことを考えていた。何故か、アパートに帰ってから寝るまでのことが思い出せない。
何かがあったような……恐らく、大事な何かが……。
だが、いくら考えても思い出せず、男は歩みを早めた。
その、歩く男の、街灯に照らされた影が、僅かに動いたことに気付く者など、いるはずもなかった。




