初まり
つたない文ですが、読んで頂けたら幸いです。
かれこれ30分は過ぎたか。未だに男は机の上のパソコンとにらめっこをしている。企画に問題があるのかチェックしているのだろう。時刻は夜9時を回ろうかというところ。周りは、空き席が目立つようになっている。
また、残業か……。
男はため息をつく。
情報化社会となり、仕事がスピーディーに進むようになっても、残業は無くならないな……。だが、これが日常。一日中パソコンの前でやりたくもない企画の考案。アニメやラノベのような展開なんて、起きやしない……。
男が会社を出たのは、それから二時間後のことだった。
アパートへの帰り道、男は街灯の明かりに照らされていた本を見つけた。
その本は長年埃を被っていたのか、とても汚れていた。
「古臭い本だな……。表紙が掠れていて読めない……」
表紙を開いた。不思議なことに、中はまるで新品のように綺麗だった。
「……………?」
中には何も書いて無かった。真っ白なページしか無い。
「変な本だな……。まあ、一応明日交番にでも届けるか」
男は本を鞄に入れ、アパートへ向かう。後ろからついてくる者がいるとも知らずに――
自分の部屋の扉の鍵を閉める時になり、男はようやくその存在に気付いた。
黒い体。小柄な体格。顔は醜く、ニタリと笑う口からは鋭い歯が見えていた。
「何だ……お前は…………」
それはキヒヒと笑い、掠れた声で
「ごきげんよう。悪魔です」
男が理解に追い付くには、数分を要した。




