それは私の非日常生活
一発書きのため誤字脱字多いと思います。ご報告下さい。
そいつと出会ったのは半年前、二回生に上がった時だ。
四月のコンパのような合コンのようなクラス会のような集まりに参加した時、食事の席で正面にいたのがそいつだった。
彫りの深い顔と真っ白な肌、真っ黒の髪に灰色の目。一目見てハーフだと分かる男で、名前は竜貴。
英国紳士っぽい物腰がすっごい魅力的なんだけど、生憎そこではあまり話さなかった。私の右隣の香水臭いきゃぴきゃぴの女が熱心に話しかけていたからだ。
私は斜め左の完全なる日本男児と趣味でやってるハンドボールについて語り合っていた。
すっごい美形の正面にいて話しかけられない残念さはあるけれど、それで全然良かった。
私の外国人好きはアイドルに憧れるミーハーな気持ちに似ている。
食事が終わって、それぞれ意気投合した相手と何となく話ながら二次会のカラオケに行った。
歌う組とはやし立てる組を交互にやることになって、私はすっごい大好きな米国出身のバンド(ボーカルだけ女性)の歌を数曲ノリノリで歌った。ほとんどの人が歌詞の意味が分かんない、と言う中、そいつが突然ステージにやってきて、俺もそれ歌える、と言うものだからデュエットすることになった。
香水女がすっごい睨んできたけれど、私からアピったわけじゃないし、私を睨むのはお門違いよ。
そしたらそいつがマイクを切って言ったの。あの女、香水臭すぎて叶わないんだ。暫く助けてくれ。
それで私は慈善事業のつもりでそいつの話し相手をした。さっきのバンドの話とか、私の大好きなドイツの話とか。竜貴はイギリス出身だと言うのでイギリスのフィッシュアンドチップスは美味しいのかとか。
そしたら三次会へ行くことになって。居酒屋に到着。仲間内ではザルで有名な私だけど、それと同時に、帰りたくなると酔って気分が悪くなったふりをして帰ることも知られている。
適当にお酒とおつまみを楽しんだ後、私は常套句を告げる。お酒飲みすぎちゃったみたい、ごめんね、歩けるうちに帰るよ。香水女がニヤッと笑ってた。
私は仲間達にも帰るねと言って、仲間達もそれぞれに気を抜いちゃダメだよとの忠告を受けてその場を後にした。
私は飽き性で、特に何かに縛られていないとすぐに色々やめてしまう。こんな飲み会も、日付が変わるまで呑んでるみんなが信じられない。
ゆっくりのんびり歩いていると凄い勢いで走る足音が聞こえた。ばたばたばたばたばたばたと来るもんだから思わず振り向いた。ひったくりだったらイヤだし。
そしたらそこにいたのは、普段の英国紳士はどうした、と言いたくなるような必死の形相で五メートル手前に竜貴がいた。何してんの、と言ったら送るよと言われた。また香水女にまとわりつかれたの、と聞いたらそれもあると言ったけれど、それ以上言おうとしないから黙っておく。そんなに人様の事情が知りたいわけでもないし。
ところで、こいつはどこまで送る気だろうと思った。私の家は大学から電車で一時間半、終電に間に合うように乗るつもりだったから、行けても帰れない。てゆーかこいつの家、知らない。
どこまで送るつもりと訪ねたら君の家、と言う。遠いし、終電間に合わないよと言ったら別に構わないという。家どこなのよと訪ねたらあっちこっちとかふざけた回答。ふざけないで、私送って貰わなくても帰れるしと言ったら送らせてくれないなら帰らせるわけにはいかないとほざかれた。お前何様だとイライラしながら言ってやると君こそ女一人、お酒の入った状態でこんな夜道歩くなんて信じられないと言う。
酔ってないし、用心はしてるんだから問題ないの、ほっといて帰れと言う。酔って無かろうが、女一人で歩く君の神経を疑うよと言われる。頼んでもないお節介焼くなと言う。紳士として当然だと言われる。そんなもん故郷でやれと言う。今はグローバル社会だと言われる。コミュニティーも大切にしろと言う。こんな不毛な口げんかの末、互いにいい加減言う言葉が無くなって黙ってしまった。それでも竜貴は当然のように私の隣で歩いている。それも、態々私の足幅に合わせて。どんなけ紳士なの。
結局私達は同じ電車に乗ってしまった。本当に大丈夫なのか、こいつ。
電車の中は私達のような飲み会帰りな大学生や社会人が、べろんべろんのハイテンションで仲間と騒ぎ、キャリアウーマンは静かに音楽を聴き、不良な女子高生が携帯電話に集中している。
各停に乗ってゆらゆら。その間、私達は一言も交わさず、ぼうっとしているだけだった。
乗り換えの駅に着いたので降りる。竜貴も一緒に降りてきた。
突然、飲み直そうと言ってきた。なぜと聞くと、さっきのでちょっと雰囲気悪くなったから仲直りに、と言ってきた。家に帰りたいんだけど、と言ったけど明日は学校四コマ目でしょと言ってきやがった。何で知ってるんだ。気持ち悪いなぁ、と冗談交じりで言ってやる。第一、お前私を泊める気か。
自他共に認める実は押しに弱い私は結局駅を降りて、竜貴の家にお邪魔した。酒は常備しているらしい。大学生の一人暮らしマンションとは思えない、綺麗な部屋だった。
CDひとつにしたって、流行の物からクラシックまで幅広くそろえてある。私はTVの前のガラス製ミニテーブルの端っこに荷物を置いた。そこにお酒を持ってやってくる竜貴。日本酒やら、ワインやら、ウィスキーやら。どれもそこそこ値の張るもので、おそらく同期とのデートなんかじゃとうてい有り付けないものばかりそろえてあった。ほんと、こいつって謎。初めて会ったばっかりの私を家に上げるだけでもどうかしてる。
とくとく。注がれたお酒と出された数種類のおつまみ。おつまみも私好みの、突き出しのような物ばかりで感動。ちょっと前に一緒に呑んだ男はスナック菓子とするめで済ませたから。私はジャンクフードが嫌いなの。
じゃぁ、仲直り記念に乾杯、って私の家みたいで笑えた。ことあるごとに祝い事をこじつけて祝うのが大好きな家族だ。
良いとこ住んでるのね。バイト頑張ってましたから。今もやってるの。あぁ。あ、このおつまみ美味しい。貝柱の甘辛、最近友達になった女の子にこれは受けるって。普通男におつまみメニュー勧めるもの?
さぁ?この日本酒、誕生日に貰ったんだどう?頂いて良いの、せっかくのプレゼントじゃない。いいんだ。美味しい物はそれに見合う人と共有するのが信条だから。・・・私はその日本酒に見合うって思って貰えてるの?本当ならこんな日本酒じゃ君に失礼だよ。何それくどき文句?一応そのつもりだよ、璃子さん。さっすが英国紳士、日本男児には到底真似できない技をお持ちで。お褒めにあずかり光栄です。褒めてないよ。
何杯呑んだか分かんない。ザルの私もココまで来ると明日に支障が出ることくらい分かってる。もうそろそろ寝るーと言って床に寝転んでやった。こんなんじゃお風呂も入れないし、泊めてくれる前提でのお誘いだし。そしたら洗ってやるから服脱げと言われて柔らかい大きなTシャツを渡された。あんまり適切な判断が出来てない私はうんーと言いながらそれに着替えて、着ていた服を放り出した。
洗濯機の音がする。ぱたぱたと行ったり来たりの音がする。何か暖かい物にくるまれた気がする。水道の水が流れる音がする。ハンガーを引っかける音の後、くるまれたまま抱き上げられて目が覚める。
何、と訊ねる。ベッドに運ぶ、と答えられる。いいよ、自分で歩くよ。ダメだ。重いよ。どこが。てゆーか姫だっこはやめて。無理だって、ほら下ろすよ。んー。
ゆっくり、それはそれは丁寧にベッドに下ろされた。柔らかい匂いに包まれて、私は寝そうになるんだけれど、一応言わなきゃ。無理矢理と言って構わないくらいの強引さでお酒に呼んだ相手でも一応。ベッドの提供には感謝を。
ありがとー、おやすみ。そりゃないよ。なんていう彼の情けない声が聞こえた気がした。
疲れる書き方をしてみたかっただけです。