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追放された副隊長は、人と竜が憎み合う世界で“共に生きる国”を築く ~剣より対話を選んだ最強の軍師は、やがて魔王と呼ばれる~  作者: 竜太郎


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苦い椀・夕刻の判断

雨の匂いが残る浜の集落で、アレンは一枚の記録を読み返した。薬師でもあるミレアが竜紋の熱を抑える煎じ薬を作る。完治はしないが眠れる程度にはなる。 期限より命を優先する判断に反対も出た。彼は反論を封じず、失う物と守れる物を地面へ書き出した。 代金を問うアレンへ、彼女は薪割りを命じる。禁忌大陸で最初に与えられた役目は、剣とは無関係だった。


集まった者たちは同じ種族でも同じ考えでもない。だからこそ、全員が従う英雄より、異論を残したまま一緒に働ける決め方が必要だった。


「決める前に、ここにいる全員の話を聞く」アレンがそう告げると、最初に返ったのは賛成ではなく沈黙だった。沈黙を拒絶と決めつけず待つと、やがて最も若い者が不安を口にした。


作業の途中で竜紋が熱を持ち、視界の端が赤く染まった。彼は壁へ手をつき、痛みが引くまで誰にも命令しなかった。苦痛を隠して強者を演じれば、周囲は無理を正しいと思ってしまう。


すべてが片づいたわけではない。だがアレンが答えを持ち帰らなかったことで、住民たちは自分たちで続きを話し始めた。その声が夜更けまで消えないことを、ミレアは少しだけ笑って聞いていた。


最後に残った道具を片づけると、誰かが何気なく彼の分の椀を置いた。歓迎の言葉はなくても、その場所は昨日より少しだけ内側にあった。


小さな決定だった。それでも、遠くの権威ではなく目の前の暮らしから決めたという事実は残る。誰かの恐怖を利用しない選択が、この大陸では新しい道になっていった。


見届けた者は英雄譚を口にしなかった。水が戻った、薬が届いた、今夜は家族が眠れる。ただそれだけの報告が重なり、アレンへの警戒をゆっくり信頼へ変えていった。


(本文実測:702字)

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