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追放された副隊長は、人と竜が憎み合う世界で“共に生きる国”を築く ~剣より対話を選んだ最強の軍師は、やがて魔王と呼ばれる~  作者: 竜太郎


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人の岸

人類側へ戻ったアレンは、海辺の岩場から港の様子を確かめる。彼が持つのは封じた剣、和平文書の写し、処刑された使節の名簿だけだった。 朝、前夜の出来事を記した紙が議場へ届く。アレンは読み上げる前に、伝聞と確認済みの行を分けさせた。


アレンは和平文書を地面へ置き、三歩退いた。奪うことも焼くこともできる距離へ証拠を差し出し、自分の言葉を信じるよう強いなかった。


聖光教を終わらせるとは、祈る者を狩ることではない。恐怖を根拠に裁き、異論を沈黙として数える仕組みを働かなくすることだと、アレンは繰り返した。


魚売りは使節の顔を詳しく覚えていない。ただ薬草の匂いと、傷ついた仲間へ水を求めた声だけは証言できた。知らない部分を埋めない証言だった。


岩場には小舟を引き上げた跡と一人分の足跡だけが残った。軍勢が来たという教会の早馬より、現場の痕跡のほうが静かに事実を示す。


明日には教会の新しい布告が来る。それでも今日見た行為は消えない。人々は紙を分け、覚えた言葉を隣町へ運ぶ支度を始めた。


誰も全体像を知らない。港の者は禁忌大陸の議論を知らず、魔族側は王国内の抵抗を知らない。伝わった断片を断定へ変えないことが唯一の共通規則だった。


一日の仕事が終わると、見張りも書記も同じ鍋から食べた。立場の違いは消えなくても、明日の食料を誰か一人だけのものにはしなかった。


会議では賛成者だけでなく反対者の名も残した。後に失敗した時、責任を少数へ押しつけず、なぜその判断へ至ったかを全員が辿れるようにするためだった。


アレンは強さを示すため竜の力を使わない。重い荷を運ぶ時も先に滑車を組み、誰にでも再現できる方法を選ぶ。彼が去った後まで暮らしが続く形が必要だった。


(本文実測:710字)

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