プロローグ①
数ある作品の中から本作を見つけていただき、ありがとうございます。
この物語は、前世で「推し」を助けて命を落としたオタク高校生が、異世界で最強の執事に転生し、今度こそ「最推しのお姫様」を全力で幸せにするお話です。
※本作の絶対ルール:鬱展開は一切ありません!
読者の皆様が疲れた時に読んで、心が温まり、自然とニヤニヤしてしまうような、平和で多幸感たっぷりな物語を目指します。
どうぞ、安心してお楽しみください!
いつもと同じ朝、俺はいつも通りに通学していた。
今の生活に不満はない。それなりに楽しい学校生活、優しい両親、気の良い友達。
そして何より、俺にはこの通学路を歩く最高に幸せな理由がある。
(……きた、今日もマジで女神……!)
俺が絶賛片想い中の女の子、神田詩織さんだ。
白く腰まである綺麗な髪、吸い込まれるような青い瞳、メリハリのあるスタイル。おまけに誰にでも優しく、勉強も運動も完璧。
アニメ大好きオタクな俺からすれば、彼女は画面から飛び出してきた「推し」そのものだった。
高嶺の花すぎて、数回言葉を交わしたことがある程度だけど、こうして毎朝彼女の姿を拝めるだけで、俺の人生は120点満点だと言い切れる。
しかし、その幸せな日常は唐突に終わりを告げた。
「あはは! 待てよー!」
ふざけて歩いていた男子生徒の集団が、詩織さんの横を通り抜ける。その際、彼女の肩が強く弾かれ、彼女の体は車道の方へ——。
「危ないっ!!」
咄嗟だった。俺は全力で叫び、彼女を歩道側へと突き飛ばした。
その瞬間、身体の感覚が消えた。
トラックの衝撃。道路に跳ね飛ばされる自分の体。
(あ、これ死んだわ……)
不思議と冷静にそう悟った俺は、せめて死ぬ前にと、霞む視界で彼女を探した。
無事そうだ。良かった。
安堵とともに、俺の意識はぷつりと途切れた。
次に目を覚ますと、俺は綺麗な川のほとりに立っていた。
状況を理解するのに時間はかからない。
「これが三途の川か……本当にあるんだな」
「物分かりがいいね、話がスムーズで助かるよ」
背後から聞こえた声に振り返ると、そこには身長190センチはあろうかという大男が立っていた。
黒髪でスッキリとした、でも優しそうな顔立ち。黒と赤の着物を粋に着こなし、低い声がいわゆる「イケボ」ってやつだ。
「やっぱり死んだんですか。なら、俺はこの川を渡ればいいんですか?」
俺が聞くと、男は隣に来て一緒に歩き出してくれた。
驚いたことに、川は凄く浅かった。足首がつかる程度だ。
「日頃の行いがいいと川は浅くなる。よくやったな、お前はすごいよ。あそこで飛び出せるなんて、なかなかできないことだ」
男に褒められ、不意に涙がこぼれた。
……ああ、俺、死んだんだな。
「みんな、ごめん。さよなら……」
川を渡り切る手前まで、男はずっと俺を慰めてくれた。
「あの……お名前、教えてください」
「シン……とでも呼んでくれ」
シンさんは、川を渡った後の説明を始めた。
天国か、地獄か、あるいは「その他」か。
「その他だったら、また会うことがあるだろうね」
意味深な言葉と共に、俺の身体が淡い光に包まれ始めた。
シンさんは嬉しそうに、「やっぱりこうなるよな」と笑う。
「意識が戻ったら、会いに行くからな!」
その言葉を最後に、再び俺の意識は闇に消えた。
次に目を開けたとき、そこには知らない天井が広がっていた。
豪華なシャンデリア。周りには綺麗なドレスの女性や、メイド服姿の女性。
(……あれ? 病院じゃない?)
状況を確認しようと手を伸ばしたが、目の前に現れたのは、白くてむちむちした「赤ちゃんの腕」だった。
「…………っ!?」
驚いて声を出そうとしても、「あうあうあー」としか喋れない。
(これ赤ちゃんじゃん!)
そのまま流されるように寝かしつけられ、不覚にも寝てしまった俺が再び目を覚ましたのは、深夜のことだった。
窓から月明かりが差し込む静かな部屋。ふと顔を上げると、枕元にあの男が立っていた。
「目が覚めたようだね、おめでとう」
シンさんだ。夢じゃなかった。
『シンさん! 本当に来てくれたんですね』
(あうあーあう!)
「あぁ、喋れないか。……よし、念話を繋ごう」
シンさんが指パッチンをすると、頭の中に直接彼の声が響くようになった。
『ここは天国ですか?』
『違うよ。君のいた世界とは別の、異世界だ。アニメ好きだったでしょ? おめでとう、異世界転生だよ』
シンさんは、ここが「名門執事の家」であること、そして王族と使用人が凄く仲が良い国であることを教えてくれた。
『俺、執事になるんですか?』
『そうだね。でも、あと何年かすれば、執事になれたことに凄く感謝する時がくる。これだけは断言するよ。君は前世の分まで幸せになるんだ』
そう言ってシンさんは、俺にある修行を勧めた。
『魔力と、その容量を増やしておきなさい。今はまだ魔法は使えないけれど、心臓の下あたりにある温かいもの……それが魔力だ。それを意識して形を変えたり刺激を与えるだけでいい。どうせ暇だろう?』
『……確かに、寝るか飲むか出すかしかしてないですけど。母親にお世話されるのは居た堪れないです……』
『我慢我慢(笑)。君は愛されているんだ。……ああ、そうだ。一つだけ。前世で好きだった人の記憶だけ、一時的に消させてもらうね』
『えっ!? どうして!』
『誤解しないで、今の君にはまだいらないんだ。大丈夫、15歳になったら返すよ。それが一番良いタイミングだからね』
シンさんは優しく微笑み、「では、また来るね」と言い残して消えた。
それから俺は、言われた通り魔力を増やす修行に明け暮れた。
この世界の「家族」から注がれる惜しみない愛情を全身に浴びながら、俺は一歩ずつ、完璧な執事への道を歩み始める。
そして——6年後。
ついに運命の歯車が、大きく回り出すことになる。
お読みいただき、ありがとうございます!
三途の川の案内人・シンさん、なんだか食えない男ですが、イケボで着物姿のイケメン……神様も「推せ」そうですね(笑)。
これから始まるアルフレッドの第二の人生、一体どんな「推し」に出会うのでしょうか。
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