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MMB《エムエムビー》――魔法と音楽?そんな競技あるの?  作者: 大和由愛


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そらとギャル

 初めてのMMBの試合の次の日、学校で――


「えー!MMB部ないんですか!?」


 そらの大きな声が職員室中に広がり、先生達の視線が一斉に集まる。

 

 けれど、そんな視線より”MMBがない”という現実の方が、よっぽど衝撃で、胸が締め付けられるように痛んだ。


「去年、全員卒業しちゃってね」


 先生はパソコンを打つ手を止めずに答える。そらは机に手をつき、勢いよく身を乗り出した。


「そんな~!私、絶対にMMBの全国大会に行きたいんですよ!」


 先生は顔をしかめ、椅子ごと少し身を引いた。


「そんなんにやりたいなら、自分で部活作ったらどうだ?」

「作れるんですか!!!」

 

 そらは声を上げ、さらに距離を詰める。

 

 先生は少しげんなりした顔をしつつ、引き出しから一枚の紙を取り出し、そらに差し出した。


「部活作るなら、最低三人だな」

「三人……三人集めれば……!」

 

 そらは勢いよく申請用紙を受け取り、胸の前でぎゅっと抱きしめた。そして、職員室を飛び出した。


 (絶対に部活を作るんだ!あの日約束したんだから!)


 そう意気込み、部員集めを始めて、早くも一週間がたった、だが、集まった部員はゼロだった。田舎だとはいえ、あの世界的に人気のあるMMBだ、やりたい人は沢山いる、そう思っていたのに一向に部員が集まらない。


「なんで~?部員集めるくらい簡単だと思ったのに」


 そらは中庭のベンチに座りながら、ため息をつき肩を落としていた。


「勧誘足りなかったのかな〜」


 ここ一週間でそらがやった事と言えばチラシを書いて掲示板に貼った事と友達を勧誘した事くらいだ、MMB部の事を知らない人は沢山いるだろう。


「やっぱりもっと積極的に行ったほうがいいよね!」


  自分自身を納得させるように喋りながら、立ち上がり校舎の中に走って行く。


 そうしてついたのは1年1組の教室の前だ、そらは一度、昼休みでドアの空いている入口から、ざわざわしている教室の中を覗き見る。


「よし!」


 小さく放たれた言葉を言い終わると同時に、教室内に足を踏み出す。


 その瞬間、見慣れない生徒が入ってきたことに気付き、昼ご飯を食べていた生徒たちの視線が一気にそらへ集まる。先ほどまでザワザワしていた教室が静まりかえった。


 そらは、視線に一瞬小さくたじろぐが、教卓へと足を進める。


「1年2組日向そらです!MMB部、部員募集中なので、入部希望者はぜひ私の所まで来てください!初心者でも大歓迎です!」


 静まりかえっていた、教室内にそらの大きな声だけが響いた。もう少し、反応があっても良いものだと思うが、教室内は依然として、静かなままだった。


 流石のそらも、この静かすぎる空間に耐えられなくなり、教室をあとにしようとした時だった。


「 しつも~ん、MMBってどんな事するの〜?」


 沈黙を破ったのは、少し気だるけたけど、明るい声だった。


 その瞬間、教室中が笑いに包まれる。


「ひかり〜今どきMMB知らない人いないよ」

「え!うっそ、マジで、え?みんな知ってるの?」


 沈黙を破ったひかりと呼ばれている少女は、一般的にギャルと呼ばれる存在なのだろう、髪は金色で制服をオシャレに着崩している。


 そらは、反応してくれた事の嬉しさで、目を輝かせながら、ひかりの目の前まで走ってやってくる。

 

「興味ありますか!?」


 ひかりは凄い勢いで目の前までやってきた、そらに驚きながら口を開く。


「いや、別に……」

「今日の放課後練習するから一緒にやろう!」


 反応してくれた嬉しさで、もはや、ひかりの言葉は耳に入っていなかった。

 

 放課後になり、そらは校門前で、ひかりが来るのを待っていた。


「ほら待ってんじゃん」


 その声に気づいて、顔を上げると、ひかりと何人かの女の子がいた。

 

「あ、ひかりちゃん、じゃあ、さっそくいこっか!」

「マジで?」

「ほら、行ってきなよ」


 ひかりは少し顔を歪ませるが、一緒にいた子たちに、背中を押される。


 練習場に着くと、そらは練習場の前に立っていた女性を見つけ、ぱっと表情を明るくして駆け寄った。


「さっちー!」

「お、そら」


 ひかりは少し緊張している様子で、少し小さめの声で挨拶をする。


「はじめまして、三条ひかりです」

「そらの友達か、私は佐久間千佳(さくまちか)です。よろしく」


 三人は挨拶を済ませ、練習場へ入っていく。


「ところで今日は、何するの?」 

「今日はねー実は特別にクラブチームの練習に混ぜて貰えることになったんだよー!」


 ひかりが聞くと、そらは凄いでしょーと言わんばかりに胸を張る。


「ちなみに、さっちーが監督なんだよ」

「今回だけだからなー」


 さっちーこと佐久間千佳が、念を押すように言った。


「わかってるって、もともと知り合いで、手伝いしたら、今回だけ参加させてもらえることになったの」


 そう話しているうちに、クラブチームのメンバーが次々と集まってくる。


 今日は全員来ているわけでは無いようで、10人ほどだった。


 佐久間千佳が全体に声を掛ける。


「練習始めるぞー今日は初心者が二人いる、優しくしてやるように、それじゃあ、いつも通り準備体操と走り込みから」


 監督の声にみんなが「はい!」と返事をし、迷いのない動きで練習に取り掛かる。


 普段運動なんてしない二人には、最初からキツイ内容で、周りが当たり前のように走り続ける中、呼吸はすぐに乱れ、足は鉛のように重くなる。


 走り込みが終わるころには、すでにへとへとになっていた。


「なんで、あたしがこんな事……」


 二人で床に寝転がって、ゼエゼエと肩で呼吸をしていると、監督の声が聞こえた。


「それじゃあ、今日は練習試合をするぞー」


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