5話
それから数日間。忽然と彼女は姿を消した。
牧瀬楓は俺が作り出した幻だったのか、現実だったのか、分からなかった。
そう思うのは、彼女の会話に違和感があったからだ。
俺は探すことにした。楓さんを。
太陽がまだ昇っている頃。
教会を訪れる。中に入るのは初めてだ。
中に居る神父に話しかける。
「こんにちわ」と返すと挨拶を返してくれる。俺は本題に入る。
「ここにシスターさんが居ますよね。名前は牧瀬楓さん」
神父は首をかしげる。
「そんな人は居ません」
そして続ける。
「教会にはシスターはいません。修道院になら居ますが」
教会にシスターなんて居ない? じゃあ俺が会ったシスターは? 牧瀬楓は一体何者?
「それより、君。お祈りしていかない?」
その一言が俺を現実へ巻き戻す。
「ごめんなさい。今日は遠慮しておきます」
夜。雨の中、一人で濡れている女の子を見つけた。それは俺がずっと探していた人だった。
「なんで来たんですか?」
「雨で濡れたアンタを探すのに、理由なんていらない」
「私、シスターの格好して君に近づく痛い女なんですよ?」
そうだったのか。怒りみたいなものはなかった。ただ妙に体が熱い。
「シスターの格好する痛い女かもしれないけど......」
俺は息を吸う。空気が冷たい。
「それでも、牧瀬楓は普通の可愛い女の子だから!」
雨に濡れている彼女が、自分の映し鏡のように見えた。
「悠人君」
ぽつりと呟いた。彼女の声は弱々しくて、今にも消えそうだ。
その声が好きだ。ずっとずっと聞いてきたから、その時、彼女と過ごした時間が永遠のように感じた。
「一緒に家に帰ろう?」
そう言って楓を強く抱きしめた。




