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第8話

 翌日真太は翼について行くつもりで早起きした。イヅも同じくである。

 翌朝のニュースも相変わらず怪物の映像が流れていた。そしていよいよ、西京タワーの場面だ。

「あ。ここから見て無かったな」

 真太とイヅは、テレビを見る事にした。テレビカメラは良い位置にあって、怪物と西京タワーを同時に映せている。

「何だか怪獣映画っていう感じだな。現実離れしている」

 真太はそう言いながら見ていたが、イヅの様子が変わった。そして、

「ここんとこの人、画面大きくならないかな。怪物と目を合わせたみたいだ」

 テレビ間近に陣取って、西京タワーの中を指さしている。

「そんな事が分かるのイヅ。そうだパソコンでテレビを見て画面を切りとって拡大したら良いんじゃないかな」

 真太は何となくアイデアが浮かぶ。もしかしたら前世の知恵が出て来たのか。イヅは驚いたように真太を見たが、そこの所は追及せず、

「じゃぁ、真太は出来るの」

 と一応聞いてみる。案の定、

「翼んちでやってもらおう」

 と言って家を飛び出すので、イヅは慌てて真太を追った。真太は翼が家を出る前に、前世の自分の実家でもある翼んちに行きたいものだと思い、イヅを掴んで瞬間移動である。

 だが、まだ翼は爆睡中だった。間に合ったと思って真太は翼を叩き起こす。

「なんだよう、まだ早いよ。何の用?」

「イヅが怪物と西京タワーにいる誰かが目を合わせたと言うんだ。翼はパソコンでテレビ画面を操作できるだろ、きっと」

「ふぇー、そう言う事」

 あくびをしながら翼が操作する。イヅは嫌な予感で気分が悪くなるが、こうしてはいられない。日の国にも仲間が居るとしたら、真太と自分とだけでは手が足りない気がして来た。

 三人でパソコン画面を見てみた。実際には翼と真太には分からない。イヅしか見る意味は無いのだが。

 イヅは西京タワーの中をガラス越しに見た。中は暗くてはっきりと顔は認識できない筈なのだが、イヅは感じた。怪物の目に似ている。

「この人、多分若い女の人だね。紺のブレザーにグレーのギャザースカートの人だ」

「事務員風だね。きっとどこかの会社勤めが終わって帰るとこだったんだな」

 翼はそう推理した。

「だけど、イヅには分かっても、この画面ではちゃんと映ってはいないな。どうするかな、イヅ」

 イヅはきりっと、

「現場に行って聞き込みだな。真太は翼とDNAを調べている助教授に会ってみて。僕は昨日、こうゆう服を着ていた人を探す。こっそり探さないと証拠が無いから、騒げないと思う」

 翼は、

「そうだね、割と微妙な人探しになりそう。イヅの透視とテレパシーで探すしかないね。僕らにはどうしようもないや」

「じゃあ取り合えず、西京迄ひとっ飛びして、それから二手に分かれるか」

 真太が、翼の首根っこを掴もうとするので、翼はあきれて、

「もう行こうとしている。僕を見てよ、まだ用意できてないんだけど」

「その格好じゃダメなの」

「助教授は、どこかの研究所を借りている筈、変ななりではいけないよ。大学行く時の服にする。真太はそれで良いよ、今更だし」

「そうだな、俺は勉学とは関係を断ったからな」

 と言う訳で西京にひとっ飛びすると、午前8時前で、熱心な研究者が仕事を始め出すかもしれないと言える時分であり、そんな適した時間帯で助教授を尋ねることが出来た。


 助教授にあらかじめ連絡してみると、国立病院の研究所のラボの一画を西京大生物学部に貸してもらえたそうだ。そこで翼と真太は国立病院の研究所に行き、入所の手続きをした。割と厳しい場所である。住所と名前を書き、身分証明書を見せなければならなかった。

 翼は学生証を持っていたが、真太はそういうものはもちろん持っていない。真太は自分の身分と言うものについて、しばし考える。

「俺ってどういう奴になるのかな。こうゆう正式な場所に来たら・・・」

 住所と名前を書いて、呆然としてしまったが、なぜか受付の人が奥へ入ったと思ったら、数分で出て来て、

「紅琉真太さんは顔パスだそうです。こういう人も時々いるんですよね。USBBからのリストに載っていましたからね」

 とにっこりした。真太の正体、知られたのだろうか。追及はせず、黙って入所しておいた。何のリストか良く分からないし。

 あらかじめ教えられていた場所に行き、西京大助教授に初めて会った真太、助教授から、

「あなたが紅琉真太さんですか、私は西京大に所属している北条ミツルと言うものです」

 とご丁寧な挨拶をされ、名刺迄くれた。訳が分からないが、真太はハイとばかりに出来るだけ丁寧にお辞儀して、名刺をもらっておく。帰ったらパパにでもやろうと思う。

 翼は二人の妙な挨拶はスルーで、要件に入る。

「あの、北条さん。例の奴はもうDNAを調べたのですか」

「ああ、あの後、早速機械に入れたよ。一晩掛けて、さっき結果がすべて出た。予想どおりだ。そしてね、桂木君。ここだけの話だが、親のひとりの身元が割れたんだよ」

「本当ですか、でもどうしてそんなに早く」

「実は、わしらの性でね、こういう調べ物は、ついDNAの一致が無いか、既にデータとして持っている人物の分に検索を掛けてしまうんだよ。あきれるかもしれないが、だからこそ見つけたんだがね。生物学の研究者一覧に載っている者のDNAは解析されていてね、研究の練習とでも言うか、君のも、もし、ここの研究者として名を連ねたら自分で練習がてらDNAを解析する事になるだろうね。そういう所なんだよ。だから、この肉片に一致するものが研究者の中にあるかどうか調べてしまったんだよ」

「そして一致したのがあったと言う事ですか。でも、どうしてそいつはそんなリスクを冒したんでしょうね」

「そこなんだが、そいつは西京ではなくUSBBの研究施設にいて、おそらく他の研究者にDNAの解析をされていたんだろうな。本人は知らないんだろう。そして、道を誤った事を皆に知られる事となったと言う事態さ」

「誰か聞いても良いでしょうか」

 翼は恐る恐る聞いた。

「いいさ、どうせ皆に知れ渡る。解析したデータは他の研究者たちにも、西京大でだけだが、情報を共有する事になっているからね。USBBの研究施設にいる岡重一輝と言う奴だ。紅琉君が調べていた例の研究所だよ」

「ひぇっ」

 思わず妙な声を出してしまった、真太。内心どうして知っているのか訝るが、しゃべると藪蛇になりそうで黙っておく。

 すると翼が、

「実はもう一方のDNAについてもこちらで今、捜索している所です。あの怪物の移動ぶりが、親を追いかけているようだと言い出した能力者が居て、あの西京タワーの中に存在感を感じているんです。それで、その人を捜索している所です」

 『翼、言っちまったな。岡重一輝を教えてもらったからな、こっちの手も言うのがWin‐Winだろうな』と思う真太。

 そして思わず、口に出す。

「どうするかな、これから。やっぱりパパに相談して、もう丸投げでいいかな。パパ達の担当で良いみたいだし」

 翼がそれを聞いて、

「じゃあアボ叔父さん達に報告って言う事だね。そういう事になりましたので北条さん、お世話になりました。急ぎの報告になりそうなので、僕らこれで失礼します」

 翼があいさつし出したので、真太も同じくで、研究所を出た。

 研究所の前にはすでにイヅが待っていた。しょげた感じがしたので、どうしたと駆け寄ると、

「見つけたけど、あの人も被害者だね。何だか気の毒で、話をする気にもなれなかった。だから真太達のとこに来たけど。勝手に入る訳にはいかないみたいだから、待っていたんだ」

「そうか、じゃ、帰ろうか。もうパパ達の仕事だね、こりゃぁ。もうややこしい事はうんざりしてきたし」

 真太のやる気なしの言いように同感のイヅ。

 翼は彼等を観察して、これではまだ当分は、龍神界の一龍としては働けそうもないなと感じた。内心『あと少しで4歳かな、人間では学校にも行っていない年頃だし。僕は行ったけど』等と思う。



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