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それはたしかにそこにあった。
『ぼんやりとしたあったかいもの』。
それは確かにそこにあって、今もまだ消えることなく、ぼんやりとそこで輝き続けていた。
「あった。よかった」
と思わず、その大きな赤い瞳に涙をいっぱいにためながら、タタは言った。
「カカ! こっちだよ! こっちにきて!」
とタタは向こうのほうを探していたカカにそう大きな声で言った。
にこを背負っているカカはすぐにタタのところまでやってきた。
すると不思議なことがおこった。
あんなに弱っていたにこが、このぼんやりとしたあったかいものに照らされると、まるで炎のあたたかさで冷たい体をあっためることができたかのように、だんだんと、いつもの元気なにこに戻っていった。
青白かった肌も、もとの赤みのある肌に戻ったし、汗もひいていったし、その寝顔も、だんだんと苦しんでいる顔から、とても安らかな寝顔に変わっていった。(でも時間がたちすぎていたのか、にこは目をあけてはくれなかった)
このぼんやりとしたあったかいものがあれば、にこは助かる。
にこはもとの世界に戻ることができる。
とタタは思って、嬉しくなった。
でも、すぐに同じくらいにすごく悲しい気持ちになった。
なぜならそれは(しかたがないことだけど)にことタタとカカの『永遠のお別れ』を意味していることだったからだ。
だけど、タタはそんな自分の考えをすぐに小さく頭をふってかき消した。そんなことは別にいいんだ。はやくにこを助けてあげないと。
にこ。
待っていて。もうすぐだからね。
とタタは思って、笑顔になると、すぐに次に自分がやるべきことをやることにした。