表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/16

11 あなたの命。(わたしの命)命を大切にね。

 あなたの命。(わたしの命)命を大切にね。


 影の国のどんよりと曇っている薄暗い空からは、いつものように、真っ白な雪が降っていた。

 タタはカカと一緒に影のお城の大きな正門の前で、一度立ち止まると、そんな雪の降る見慣れた空を見上げた。

 タタは白い肌のてのひらで落ちてきた雪をつかまえる。

 その雪をつめたいとはタタは感じない。

 でも、にこはそうではないみたいだった。

 生きている人間のにこにとって、『雪はとても冷たいもの』なのだ。

 出発前の部屋の中にいるときに、タタはカカと一緒ににこの小さな体を(落っこちないように)ふかふかの毛布でぐるぐる巻きにして、それをカカの大きな背中にロープでぐるぐると巻き付けるようにした。

「にこ。ごめんね。でも、少しの間、我慢してね」

 汗をかいて、とてもつらそうな顔で目をつぶっているにこをみて、タタは言った。

 でも、ずっと眠っているにこはタタになにも言ってはくれなかった。(タタはとても悲しそうな顔になった)

 タタは空を見ることをやめると、ぐるぐる巻きになったにこの横に乗っかるようにして、カカの背中の上にのった。

「カカ。二人だけど、大丈夫?」とタタは言った。

 ぐるる、とカカは首を動かして、タタを見て、大丈夫、と言った。

「どうもありがとう。カカ」と言って、タタはカカのほほにそっとキスをした。

「……、お母さん。ごめんなさい」とにこは言った。

 にこの声を聞いてタタはにこをみる。

 でも、にこは目をつぶったままだった。にこは夢を見ているのだと、タタは思った。(にこが見ている夢が幸せな夢でありますようにって、タタは思った)

「カカ、行こう」

 とタタはカカの背の上から、そう言った。

 ぐるる、とカカは言って、その大きな体をぶるぶると震わせるようにして、大きく背伸びをすると、それからカカはまるで風のような速さで、影の国の雪のつもった真っ白な大地の上を音もなく、走り出した。

 このあたりで一番高い山のてっぺんに向かって。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ