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エピローグ

世界樹。それは、2874年、星を飲み込み、誕生した巨大な大樹であった。星々が一つまた一つと飲み込まれ、大地に生きるものはすべて死に絶えた。残ったのはただ一つ、巨大な樹――世界樹だけだった。すべてが終わったかに思えたその時、誰も予想しなかった奇跡が起きた。


世界樹の根元から、一つの蕾が膨らみ、そこから小さな生命が誕生した。その生命は、最初は一つ、次にまた一つと続き、そしてどんどん増えていった。誕生した命は、様々な形をしていた。人に似た姿もあれば、動物のような形をしたもの、さらには巨体で醜い姿をした者もあった。だが、どんな形であれ、彼らは生命として共に生き、成長していった。


新たに生まれた生命同士は、次第に結びつき、共に協力し合いながら新しい命を生み出していった。やがて集落ができ、村ができ、町ができ、都市が成長し、国が築かれた。その頃には、世界樹自体から新たな命が生まれることはなくなっていた。しかし、その理由は誰にもわからなかった。誰もがその理由を知りたがったが、結局答えは見つからず、世界樹の静寂だけが続いた。


時が流れ、最初は一つだった国々が、二つ、三つと増え、やがて何十という国が誕生した。国が増えれば、そこに住む種族も多様化した。人間、エルフ、ドワーフ、小人、ゴブリン、オーク、悪魔、ヴァンパイア、精霊、イシュター、ドライヤ――数えきれないほどの種族が、共存する世界が広がっていった。それぞれの種族には、独自の文化と役職があり、例えば月の光を司る「ルナシェア」という種族は、月光のエネルギーを変換し、まるで太陽光発電のようにその力を社会に役立てていた。


こうして、歴史は積み重なり、十三の国と数百の種族が形成された。そのすべてが、世界樹の力を中心に結びついていた。


だが、平和な時代が続く中、ある日、突如として一つの騎士団が現れた。その名は「オルディス騎士団」。この騎士団は、「Order(秩序)」という言葉から名付けられ、秩序を守るために結成された最強の集団であった。オルディス騎士団は、各国で最強と称される戦士たちが一堂に会し、十三人の騎士で構成されていた。その力は、世界樹の秩序を守るために必要不可欠なものとされ、誰もがその圧倒的な強さに恐れおののいた。


オルディス騎士団に挑戦する者はいくらでもいたが、どんな集団や団体がかかってきても、オルディス騎士団は決して敗れることはなかった。その強さは、伝説として語り継がれるほどであり、どんな敵も一瞬で打ち破った。


例えば、かつて山賊や海賊が集結したとき、その数は1万1千人にも上った。彼らは使われなくなった古城を拠点にして、オルディス騎士団を討つために結束した。だが、その結果はあまりにも簡単であった。わずか一刻も経たぬうちに、オルディス騎士団は連合軍を全滅させ、悪党たちはその後二度と表舞台に姿を現すことはなかった。


オルディス騎士団は世界樹の民から深く愛され、尊敬され、永遠に続く存在だと信じられていた。しかし、その永遠に思えた平穏は、ある日突然崩れ去った。


オルディス騎士団は、突如として消えてしまったのである。


最初は、長期任務に出ているだけだと思われた。だが、数ヶ月が経ち、騎士団は帰ってこなかった。やがて、彼らの失踪がただの一時的なものではないと理解されるようになった。その頃、奇妙なことが起こった。一つの国が滅びたのである。その国は、騎士団が消えたのとほぼ同時期に滅亡した。


世界樹の民たちは、何が起きたのか全く理解できなかった。騎士団が戻るのを待つ者、世界樹に祈りを捧げる者、そして絶望して何も考えられなくなった者もいた。しかし、時が経つにつれて、状況を受け入れ始める者たちが増え、そして皆、オルディス騎士団を「永失の騎士団」と呼ぶようになった。


オルディス騎士団の消失から数年後、また一つの国が滅んだ。そして、それが続いた。さらに数年後には、また一つ、また一つと国々が滅びていった。世界樹の民たちは、これが何を意味するのか、誰も理解できなかった。


そして、この物語は、オルディス騎士団の消失から17年後に起こる出来事へと繋がる。ある少年の物語が、今、始まろうとしていたのである。


その少年は、かつての世界樹の民たちが求めた「希望」を象徴する存在になるだろう。少年は、ただ一人であるが、彼の歩む道が、世界を変えるかもしれない。しかし、その道がどんなものであるか、少年自身もまだ知らない。そして、少年が辿るべき運命がどんなものであれ、それが世界樹の力とどのように絡み合っていくのかは、誰にもわからなかった。


オルディス騎士団が消えた17年後の世界。絶望と滅亡の中、少年の足音が静かに響き始めた。その足音が、やがて歴史を動かし、新たな秩序を生み出すのか、それとも破滅の道へと進んでいくのか、それはまだ、誰にも分からない。


だが、物語はここから始まる。そして、その結末は、少年の手の中にある――。



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