修学旅行
「春人......君が好きだ」。
彼女の言葉が今も脳裏に浮かぶ。
彼女の姿が脳裏によみがえる。足まで隠れる白いロングワンピース、黒い髪、白い顔。
同じ夢が何度も何度も頭の中で繰り返される。彼女はその言葉を飽きることなく繰り返し、彼女の手は少しずつ私の頬を撫でながら私の顔に近づいてくる。しかし、いくらこの光景を何度見ても、私は毎晩心が乱れるのを抑えられない。
理由は簡単だ。
いくら彼女を見ても、かつて愛したあの子を見ても… いくら見ようとしても、彼女の顔が見えないのだ。
口も鼻も目もない、無表情な顔しか見えない。
あの夢はもう二度と見たくないと願うばかりだが、毎晩そう思っていても、また夢を見てしまう。
あの少女はもう存在しない。彼女は私が幼い頃に事故で死んだ。
遺体は見つからなかった。夢を見るようになってから、写真で彼女の顔を見るのが怖くなった。
彼女は本当に存在したのだろうかと疑うようになった。
学校に行くのが怖くて、孤立してしまった。
でも、それが私の問題の始まりだったのかもしれない。
聞いてくれ、いろいろあったのはわかるが、このままでは成績は伸びない。 どう思う?君の将来を台無しにしないためにも、この旅行に行くのは良くないよ」。
個別指導担当の教師が、遠足の広告を印刷したものを見せながら、私を教師用ラウンジに呼び出したときの言葉である。
一身上の都合で数え切れないほど学校を休んでいた私は、困り果てていた。
両親からは「重荷になっている」と非難されていたので、私は久しぶりに学校に戻ることにした。ところが運の悪いことに、私の「将来」を言い訳に、私を侮辱することも辞さない迷惑な教師に横取りされてしまった。
おかげで私は、古いバスの中で私と同じような境遇の生徒たちと一緒にいることになった。学校になじめず、性格も違う問題児たちが、何人かの教師の怒りの原因になっていた。
修学旅行」と銘打ってはいたが、実際は大学のゼミのような合宿で、3日間休みなく勉強した。そうやって家を空けられるなら、別にどうでもよかった。
「春人、学校に戻ったんだって?やっぱり嘘じゃなかったみたいだね" 」。
"ああ、おかげで今、君とここにいる。 戻ってくるのはいい考えじゃなかった」。
「そうですか」。
涼太の友人のスポーツバカもバスに乗っていた。
不幸なことに、彼はサッカーしか得意でないようなので、私たち全員と一緒にここにいるのは必然だった。
「黙ってくれないか、うるさいよ」。
「ごめんね、俐歌......私たち、おしゃべりがうるさくて......」。
スマートフォンを手放さず、私たちに話しかけていた少女、俐歌は、涼太と同じように成績の悪い面倒な生徒で、その性格も加わって、この汚い古いバスで私たちと一緒にいても不思議ではなかった。
「後ろの人たち、おしゃべりはやめて! 楽しい旅行じゃないんだから! あなた、その電話を置きなさい!」。
「チッ、黙れ、クソブタ!」
「何だと?
「さあ、さあ、先生、怒らないでください。自分がいい先生だということを示すんだ」。
優しい先生が体育教師の怒りを止めた。
こんな優しい女性が、私たちみんなと一緒に何をしているのだろう。この環境には全くなじめない。
「理恵子先生の言う通りです、こんなガキに腹を立ててはいけません」。
問題は解決したかに見えたが、先生は体育教師の態度に緊張して笑わずにはいられなかった。
「さあ、これから3日間、ビーチホテルで将来のための勉強をするんだ。理恵子先生と私は、君たちが責任感のある人間になるよう、私たちの責任で手助けをするつもりだ。
「先生!!!!!!」。
私が最後に覚えているのは、バスが峡谷を急降下するときの轟音とクラスメートの悲鳴だった。