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03 はじめてのバトル


 武器欲しさに勢いで店を後にして来た。

 持ったのはジョブだけだが。

 それでも嬉しく思う。

 着いたばかりの場所は覚えている。

 出入り口だ。

 街の外へ出て見た。


 見渡す限り草原だ。

 広大で起伏もあり遠くに角切りにされたような石の山が見える。

 木々の葉が渦巻くようにうっそうとしているのは森だろうか。

 池や小川の水面もキラキラと揺らいでいた。

 風が吹いて草がなびく。

 好きな風景で良かった。

 口笛でも吹きたい気分だ。

 いかにもゲームの序盤を思わせるフィールドが広がる。

 あまり遠出はしない方がよい。

 敵よりも、毒沼などに知らずに足を踏み入れたらヤバイことになる。


 足元に注意を払いながら敵の姿を探すため慎重に歩を進める。


 しばらく歩くと草むらにガサガサと怪しい気配があった。

 案の定、スライムのようだ。


 コンビニで売っている和菓子の「くず餅」みたいな丸っこいやつだ。

 それは子豚ぐらいのサイズだった。

 全身は薄っすらとした緑色だ。

 身を屈めて気配を消しながらそっと近づいた。

 顔がわからないから後ろ姿だよな。


 そのまま無言で近づき殴りかかると画面に『バトル開始!』と出た。


 敵は1匹だ。

 ぷよぷよしている。

 その頭上に赤いライフゲージが見えた。

 あれを減らせばよいのだな。


 殴って殴って殴り倒そうとした。

 3、4発連続で殴りつけることができた。

 やっぱり背中側だったのだ。

「キュルル」と声をあげてこちらを向こうとしている。

 不意を突いた感じかな。

 そのまま勢いでダメージを与え続けられるかと思ったが振り向いてきた。

 目や口らしきものが確認できた。

 敵意ある表情がうかがえた。

 先に手をかけたのは俺だがそんなことは言ってられない。


 ついに敵も向かってきた。

 身体に振動が伝わってきた。

 目の前に赤い血しぶきが「びしゅっ!」と飛ぶ。

 出血の演出か。

 知らない内に俺のHPが大幅に減っていく。

 反撃を喰らったのがわかる。


 敵のライフゲージが半分になったが、『デジル残りHP515』と表示されている。

 スライム1匹にすでにHP85も奪われた。

 ゲームなので痛みはないけど、回復薬も何もない。

 あと半分のライフゲージを削り切るのにこちらもまた85減るのか。

 それともそれ以下ですむのか。


 すこし厳しい状況だが、とりあえず頑張った。

 なんとか倒したようだ。

 力尽きたスライムは「シュンッ!」という音とともにその場で姿が溶けた。


 


 獲得したもの。


 EXP 2    

 つぎのレベル必要EXP 18

 金  10


 薬草 1  買値80 売値8

 回復量 50HP



『デジル残りHP 485』




 

「え? たったのこれだけ……」


 だよな。

 分かっていたけど、少ないな。

 というよりかは削られた自分のHPが大きいのだ。

 頑張った分、ダメージが減ったか。


 防具がただの服だ。

 来た時、上の服を脱いで見た。

 ステータスに変動は見られなかった。

 この服はオマケだったな。

 防具とはちがうようだ。


 しかし薬草が1個もらえた。

 売値は8Gか。

 回復に使うのが賢明だな。


 薬草を使って見た。



 HP50回復した。

『デジル残りHP535』



 スライムならあと9匹倒せばレベルがアップするけど。

 このゲーム仕様だと計算上、続けてそんなに倒せるか心配だな。

 うまく敵の攻撃を()けるしかないな。

 向かって来たら左右どちらかに飛んで回転しながら、(かわ)して見るか。

 盗賊が素早くて得意そうだが、これで手傷が軽減できればラッキーだ。



「単独で居そうなやつを狙い、再挑戦だ」



 2匹目だ。

 ──倒し切るまで頑張った。


 回転で攻撃をよける。

 その作戦がうまくいったのは、最初の一度だけだった。

 その後はよける行動を読まれて起き上がるまでにダメージを喰らった。


 ソロだから敵の注意がすべて俺に向けられている。

 ソロは不利だな。

 誰かと組めば有利になりそうだ。

 酒場のサポを借りるだけの金の余裕がない。

 あれは恐らくNPCだろう。


 他の冒険者がどこかにいるはずだ。

 この【女神エンジン】というVR機を購入したリアルプレイヤーだ。


 開始したら、わりとリアルでNPCと他の冒険者の見分けがつかない仕様だ。

 全員フルCGだ。

 話をしてみなければ良くわからん。

 それはさておき。


 このままスライムだと1000G貯めるには100匹も仕留めなきゃ。

 500Gで50匹。

 毎回、薬草ドロップがあるとは限らない。

 このレベルで他の敵へいく選択肢はないわ。

 もし死んだら『最初から』だろ。


 スライムしか選択肢はないわ。

 厳しい仕様だな。

 いま街に戻ってPTを探して空振りだったら時間をロスしてしまう。

 武器屋との約束の時間がある。


 あと8匹を頑張って倒し、レベルアップに期待するしかない。

 薬草をいくらか持ち帰れたらいいのに。

 盗賊だったらドロップ率が良くて最低2個落とすんだったな。

 ジョブの選択ミスをしたか。

 金策は盗賊で盗むと相場が決まっているのに。

 どの道、武器も防具もないけど。


 しまった!

 宿屋に寄って宿代の確認をしておくのを忘れていた。

 そんなに高くはないだろうが。


 死ぬ手前で宿を取るか。

 手前では町に着くまでに何に出くわすか分からないし。

 HPが100を切る前に休憩回復をしに行かねばならないだろうな。


 いま所持金は20Gだ。

 レベルが2に上がるまでに100Gしか貯められない。

 レベルアップで全回復したりしないのかな。


 あと8匹だ頑張ってみよう。


 1匹ずつ確実に仕留めて行く。



 次ので10匹目だ。

 レベルアップは目前だ。


 バトルを開始してからここまで薬草のドロップは合計5個だった。

 いまHP210だ。

 少し不安になってきた。

 だが回転で敵の攻撃を躱す作戦にも時々効果を得られるようになった。

 運良く回転で躱す効果を得ているのでこの結果だ。


 あと1匹だ。

 ──頑張って仕留め切ったぞ。


 薬草のドロップはなかった。




『レベルアップを確認しましたのでお知らせします』




 冒険者デジル レベル 2


 所持金    100

 剣士レベル  2

 

 経験値 20/50


 HP   135/850

 MP   040/040


 攻撃  11

 防御  11


 薬草使用回数  5

 レベルアップまでに250HPを回復しました。

 

 獲得所持品なし。


 


「おいHPはいいが、攻撃防御が1しか上がってないぞ」


 MPは使用していないから。

 右MAX値と左現在値だな。

 MAXHPが250も増えている。

 まじかー。

 エグいぞ剣士タイプの体力の上がり方。

 しかし。


「回復せんのかい……まじか!」


 戦闘に慣れたわけではないがうまく立ち回れたのか。

 薬草は全部使い切った。

 回復した合計ポイントが表示されとるが参考にしろということか。

 まだよくわからんが。

 金は100Gか。


 それより次のレベルに30EXP必要だと。

 つぎは15匹か。

 スライム以外は未経験だ。

 魔物の変更はまだ早いだろう。


 とりあえず一度回復しなきゃ。

 宿屋に向かおう。

 慎重に(きびす)を返して街へ向かう。

 無事に辿り着いた。



「100Gで何とかなるだろうか」



 スタート地点の街だし……お手柔らかに頼むぞ。


 宿屋へ足を踏み入れた。



「いらっしゃいませー!」


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