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01 ゲーム開始!


 64Kフルダイブ型VRシステム。

 なんという神々しい響きのアイテムなのだ。

 ずっとずっと前から超がつくほど欲しかったのだ。

 人はそれを喉から手が出るほどと表現する。


 どっちでもよい。


 ネットのゲームショップで見つけたんだ。

 とんでもなく安いんだ。

 最新のVR機でありながら、MMORPGが一本内臓されている。


『剣と魔法のファンタジー』


 俺好みのジャンルだ。

 安価であるからこそゲームが一本しか付いていないわけだが、それで充分だ。


 VRは初心者だからいまはそれで充分なのだ。


 たったの30円だ!

 安すぎるだろ。

 怪しいぐらいの安さだが紹介映像を見る限り、ログインユーザーは1万人越え。

 すでに1万人が買って遊んでいるVRゲームなのだ。

 即買いだ!

 そんなもん即買いに決まっている。


 注文してから3日で自宅に届いたのだ。

 さっそく箱を開けた。


 VRゴーグル本体が一台。

 薄ペラな説明書が一枚。

 入っていたのはそれだけだ。


「充電器はねぇのかよ……」


 まあいい。

 本体を手に取って見よう。

 おい電源スイッチがどこにも見当たらないんだけど。

 

「まさか、ゴミを掴まされたのか? 30円だもんな」


 説明書に目を通すと、こう書かれていた。




「お買い上げありがとうございます。

 ご使用方法は本機を頭部に装着後、画面の指示に従うだけです。

 ゲーム開始直後は「お名前」の入力だけで大丈夫です。


 さあ、見たこともない冒険の旅に出かけてください!

 ご武運を祈っております! 『サンサン女神ゲーム店』」




 ゴーグルを装着するだけでいいの?

 そしたらゲームが始まるんだな。


 よし装着しよう。


 ゲーム三昧の日常を楽しむために一人暮らしを始めたところだ。

 誰にも邪魔をされることがない。



 ブワワワワ──ッッン!!!


 起動音だな。

 洗濯機並みに、けっこうやかましい音だな。

 ハイパーマシンだからそれは仕方ないか。


 30秒ほど経過した。

 やけに長いな。



 ピピピ、ピピピピ、ピピピピピ──ッッ!



 なんだなんだ、補聴器から漏れだした様な高音の耳障りな音が響き渡った。

 あ……。

 目の前が真っ白になった。


 画面に一人の人物が現れた。

 なにが起こるのかと黙っていると、話しかけてきた。



『私は太陽の女神だ。心の準備はできたか?』


 おお!

 ゲームへログインする心構えのことだろうな。


「もちろん、いつでもOKです!」


 会話ができるのかな?

 どうせ、NPCだろう。



『では女神エンジンをセットアップする』


 なに?

 

「うおぉ、なんだ? 俺の頭の中に画面が押し込まれてくる……ような演出が!」


 わりとリアルだな。


「あれ? 女神を名乗ったNPCが見えなくなった……」


 と思ったら、白い画面が消えて元の俺の部屋の中だった。


「ゲームはどうしたのだ?」


 俺はあっけに取られた。

 頭がなぜか軽くなった気がした。

 頭部に手をやると装着したはずのVR機がなくなっていた。


「ゴーグルを外した覚えはない? どこへいったんだ?」


 まるでキツネにつままれたようだった。

 部屋の中を見回すと箱と説明書が消えていた。


「なんだ? 夢でも見ているのか俺は……」



 いまのは何なのだ。

 夢なのか。

 寝ぼけていたんだろうか。


 いやそんなわけない。


「おい、女神っ! ゲームはどうした!?」


 ふざけやがって。



『べつにふざけてなどおらぬ!』


「うわっ! びっくりした。ど、どこに居るのよ?」



 さっきのやつだ。

 もう声だけで姿が見えないぞ。

 でも、やっぱり現実のことだったんだ。



「ゲーム機どこいったの?」


『お前の脳内にセットアップした。喜べ、セットアップ完了だ』


「なに? 脳内って。どゆこと?」


『お前も馬鹿なのだな。脳内に挿入したのだ。もう取り外すことは叶わぬ!


 さあ、名前を名乗れ! そして、とっとと異世界へ行くのだ!』

 


 もう取り外せない?

 俺の体内に入ったと言ってるのか。

 外せない装備といえば呪われた装備のことだろ。

 冗談いうんじゃねぇよ。


 てか、異世界ってのは分かる。

 中世ヨーロッパ風のやつな。

 名前を決めたらオンラインゲームにログインするんだっけ。


 まあなんかの演出だろ。


 名前か……。

 そうだな。



「俺の名は、デジルだ」



 まあ、平成生まれのキラキラネームってやつだ。

 本名だが、ゲーム名っぽいだろ。

 


『デジル。その名を女神エンジンにインプットしたぞ!


 特別にルールを説明してやろう』


「なぜ特別なんだよ? 普通でも説明してけよ」



『デジルも、アホそうだから特別にな。


 ログインしたら異世界だ。適当な街にいる。

 外には魔物がうろついている。街で装備を整えろ。

 それを倒す、金、経験値、アイテム……まあ知っているか。


 いわゆるロープレだ。所持金はゼロからだ。破けても汚れてもすぐ元に戻る魔法の初期装備服だけオマケしてやろう、さあもう行け!』


「その説明、ゲーマーに必要か? で、死んだらどうなるんだよ?」



 アホそうだからってなんだよ。



『人間で開始して、10回死んだらゴブリンか豚に変えられる


 死ぬな、悲惨だぞ。あとは女神エンジンに聞け。以上!』



 そう言い残して女神は姿を消した。


 画面にメッセージが浮かんできた。

 女神エンジンに命じられる呪文は「ステータスオープン」のみ。

 なるほどな、と理解した瞬間その文字は消えた。


 まあ、そんなに怒りはない。

 30円で手に入れたゲームだ。


 で、どうやって始めるんだ?


「あ……」


 という間に、ファンタジーの街の中の入り口付近にいる。

 外に出ると魔物がいるんだったな。


 街の中に宿屋とか武器屋とかがあるんだな。


 お、目の前に半透明のモニターが出ている。

 なるほど、チュートリアルとかステータスを見られるんだな。

 さすがVRだ。

 360度、異世界じゃん!


「ていうか、まずはステータスオープン!」




 


 冒険者デジル レベル 0


 

 ジョブなし。酒場に行け。

 スカの街、スタート地点。

 魔王を倒すまで離脱不能ゲーム。



 所持金   0

 HP    500


 攻撃力  5

 防御力  5


 

 まず金を入手しろ。

 装備を手に入れ装備しろ。

 武器が必須。

 死ぬと『最初から』『続きから』の二択。

 

 『続きから』を選んで再度死ぬと『死2』となる。

 『死10』以降で下等種族に落とされる。


 無難に『最初から』を繰り返せ。これは無限に使用可能。

 あとは自分で考えろ。





「なんちゅう雑な説明なんだよ……」


 所々、意味不明だし。

 離脱不能ってなんだよ。

 そもそもゲームのタイトルはなんだよ。



 でもまぁオンラインゲームだから、誰かと組めば楽勝じゃね?

 

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