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後編

???目線での話

 銀河の辺境をのんびり散歩していた私は、宇宙船に鳴り響くアラートによって緊迫した状況へとおちいった。

 幸いなことに宇宙船の故障は大したことなくホッとしたが、修理に必要な道具を積んでいないことに気づいた。

 しかたなく私は一番近い星『地球』に着陸して、修理道具を調達しなければならなくなったのだ。

 表向き地球には、他の星の者は来ていないことになっているため、あるていど都会に近く、姿を隠すには充分な自然が広がる地域に着陸した。


 偏光技術とボイスチェンジャーで姿や言葉は地球人と見分けがつかなくなれるため、物資の調達も容易だろう。

 だが、ただ1つ問題がある。地球人は炭素系の生物であり、私はケイ素系の生物なのだ。

 違いを簡単に言えば、炭素生物を燃やせば炭になり、ケイ素生物を燃やすとガラスになるというものだ。

 問題とは、地球で簡単に手に入る私の食料となるものが、砂くらいしかないということ。

 まったく、これでは味気ない。


 それから毎日、私は町に行っては材料を仕入れて修理を続けた。

 簡単に思えた修理だったが、地球のものは道具一つにしても勝手が違うため、思うようにはかどらない。

 それでも少しずつ修理を続けていたある日のこと、背後で何者かの気配がした。

 振り返ると、地球の子供が好奇心いっぱいの目を輝かせなから宇宙船の機器をのぞき込んでいる。

 しまった! 私は姿を変えていなかった!


 しかし私と目があった子供は、“ニカッ”と屈託のない笑顔を向けた。私も笑顔を返すと、子供はさらにニコニコしながら近よってくる。そして子供は自己紹介をして、私が何をやっているのか尋ねた。

「これは故しょ……オホン。私はこの星へ遊びに来た。名はバスァという」


「遊びに!? うわっ、すっげ!!」


 それから時々その子供がやってきて、いつの間にか、私を“ボス”と呼ぶようになり、私と話したり、修理の真似ごとをしたりしていた。

 私が食事をしている時に来た時など、同じように砂を食べてしまい、あわてて吐かせなければならなかった。

 これは私の星の者にしか食べる事ができないと教えたが、あの後も「砂っておいしい?」と尋ねてくるので、子供が理解できたのかどうか不明だ。

「ねえ! どうしていつもドングリで遊んでるの?」

 修理を見ながら子供が尋ねた。

 ドングリ?

 ああ、ダグリオットのことか。

 確かに地球人にはドングリに見えないこともない。

 しかもダグリオットという音の響きもドングリに似ているため、そう解釈したのだろう。

「これで遊ぶのはとても大事なことなのだ。このドングリの扱いはとても難しいのだが……そうだな、特別に君のぶんをあげよう」

 交換し終えた機器を渡すと、子供は自分で拾ってきたドングリを見よう見まねでならべ始める。

 ふーむ。理解していないはずなのに、なかなか筋がいい。


 また、本星と連絡を取り合っていた時に、立体映像を見た子供は「ボスの子供だ!」と大はしゃぎしていた。さらに宇宙船に乗り降りするためのゴンドラは「プールだ!」と言って乗りたがったが、さすがに宇宙船内に乗せるわけにはいかない。

 私がこの星に着陸するにあたって、この星独自のウイルスに感染しないよう、感染防止対策をしてある。

 逆に子供が宇宙船に乗り込んで、私の星のウイルスに感染させてしまっては大変だ。いつの間にか、私はこの辺境の地で出会った小さい友人が来てくれるのを楽しみにしていた。それでも修理は進み、とうとう別れの日がやって来た。


 私が地球に滞在を始めてから4か月。この友人に出会わなければ、どれほど孤独な時間を味あわなければならなかっただろう。

 だがしかし、この大切な友人に対して、私がしなければならないことがあった。地球はまだ未公開の惑星なのだ。異星人に出会ったなどと言っても信用されないか、ウソつき呼ばわりされてしまう。それは避けなければならない。


 だから……だから、友人の記憶から私のことを消してしまわなければならないのだ。

 別れの日、私は友人に記憶を消してしまうことを告げたが、友人は予想どおり嫌がった……嫌がってくれた。

 だから私は友人と約束したのだ。

 友人のためにいったんは記憶を消す。だが完全に消すわけではない。

 再び私がこの星を訪れた時、思い出すように暗示をかけておくから……と。

 宇宙船の移動には、宇宙船全体を包む空間を凝固させるため、半径約5kmの分子運動に影響して周囲の温度を7℃から9℃下げてしまう。

 いつか友人の暮らす町の気温だけが、突然低くなった時、そして、ダグリオットと間違えたドングリの葉で私が戻ってきた合図に気づいた時にこの記憶はよみがえるだろう。


 ……私は友人のことを忘れない。


 光の18倍の速度で飛ぶ私の宇宙船で往復すると、地球の時間で15年が必要になるが、私にとってそれは、ほんの数日のことにしか過ぎないのだから。

 しかし、成長した友人が私を思い出しても、異星人である私を受け入れてくれるだろうか?

 その心配が杞憂に終わることを願い、私は宇宙船の発進ボタンを押した。

覚えのある方、その後の子育てがどうなったのかお教えいただければ幸いです。どうか、とっても幸せでありますように。

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