表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お姉ちゃんが毛皮を着替えて帰って来る

作者: 西風の剣

 近所で見掛けるモフモフしたお婆ちゃんの可愛い猫さんを見ていてこの話が生まれました。とても仲の良い姉妹がまた一緒に暮らしたいと強く願った話です。


 5月15日 本作の後に投稿した連載物の告知部分を削除しました。

 「エマお姉ちゃん、今まで本当にありがとう・・・」


 エーリカは愛猫のエマを埋葬しながらこらえきれず涙を流した。


 年老いたエマが、昨夜家族全員が見守る中で逝ってしまったので、彼女が生前よく爪研ぎや木登りをしていた大きな庭木の根元に穴を掘り、埋葬することにしたのである。


 エーリカが産まれる前からエマは自宅で飼われていた。エーリカが産まれてからは、彼女が泣き出す度に、母親のエルナのところまで走って行き、エーリカが泣いていることを伝えに行くのである。物心ついてからも、エーリカにとってエマは「優しいお姉ちゃん」そのものであった。


 「生まれ変わったらまた一緒に暮らそうね・・・」


 エーリカは埋葬が終わった後、用意していた黄色い水仙の花をお供えした。花言葉の「私の所に帰ってきて」と同じく、彼女の強い願いがそこにあった。


 その夜、エーリカは不思議な夢を見た。


 「エーリカ、いくら何でも今日明日中にはアンタの所に帰って来られないんだから、しっかりおし!」


 「エマお姉ちゃん!?何で夢に出て来るの!?」


 「アンタのことが心配だと猫神様にお願いしたら、少しアンタのところに帰っておいで、と許可をもらったんだよ。まったくあんなに悲しまれたんじゃ、心配でおちおち天国で休めもしないよ!」


 「猫神様ってホントにいるんだねぇ。夢でもお姉ちゃんに会えて凄く嬉しいよ。私、お姉ちゃんがいなくなって凄く凄く悲しかったんだよ。もっと一杯お姉ちゃんと一緒に居たかったよ・・・」


 「エーリカ・・・気持ちは凄く嬉しいけど、猫の21歳と言えば人間の年齢でおよそ100歳だよ。もうお婆ちゃんだから仕方ないことさね。」


 「お姉ちゃん、21歳だったの?その割にはもの凄く元気だったんだけど?」


 「そりゃ毎週定例の猫集会で年下のお嬢さんたちと顔合わせてたから、そこで情報交換して身体に気を使ってたんだよ。ブラッシングはアンタが欠かさずしてくれたからね、ありがとうよ。」


 「猫の世界もいろいろあるんだねぇ・・・というか猫集会、凄いね。」


 「話は変わるけど、猫神様が言うには、アンタの母親のエルナ、その妹が飼っている猫がもうすぐ身籠もるらしいから、アタシはそこで毛皮を着替えてアンタのいるところに帰って来られるようだね。」


 「そう言えば叔母さん猫飼ってたね。確かノルウェージャンフォレストキャットだったかな?わぁ、モフモフだぁ。でもエマお姉ちゃんが生まれ変わったら、今度は私の妹になるの?」


 「バカ言うんじゃないよ!誰がアンタの妹になるんだよ!姉に決まってるさね!こんなシスコンのアンタがいるんじゃ、おちおち天国で休めもしないよ!」


 「シスコンなのはお姉ちゃんだってそうでしょう?」


 「・・・話は終わりだよ!すぐに帰ってくるから、いつまでもメソメソするんじゃないよ!」


 「誤魔化さなくても良いのに・・・叔母さんにはお姉ちゃんが帰って来られるように話しておくから。」


 「もうすぐ朝になるから、そろそろアンタが起きる時間だね。猫神様が言ってたけど、今度会うときアタシの記憶はアンタと一緒に過ごしたときのままらしいね。あと、お互いがテレパシーで会話ができるようにしておくから、だってさ。アイツ余計なことを・・・」


 「猫神様ってお姉ちゃんの知り合いなの?」


 「二軒隣にメインクーンのカールっていう、でっかい猫がいただろ?アイツが今の猫神様になってるんだよ。もっと他に適当なヤツがいそうなもんだけどねぇ・・・しかも知り合いでアイツの姉のような存在だからと、次の猫神様にアタシを推薦しようとあちこちに根回しやってるようだから困ったもんさね。」


 「えー!?お姉ちゃんが次の猫神様になるの?」


 「まだ引き受けるとは言ってないけど、今度の生まれ変わりでアイツにはかなり無理言ったから断れそうにないねぇ。それじゃ、また会えるんだから、元気で頑張るんだよ!」


 「うん、わかった。お姉ちゃん、会えて凄く嬉しかったよ。」


 「アタシもだよ。それじゃ。」


 エーリカは目が覚めたとき、大好きなお姉ちゃんとの会話のおかげで、すっかり元気になった。猫は2ヶ月ちょっとで産まれて来るので、またすぐに彼女たちは出会える筈である。ところで、彼女の最近の悩み事と言えば・・・


 「そういえば、生まれ変わったお姉ちゃんの名前はエマで良いのかな?それとも他の名前が良いのかな?お姉ちゃんとはテレパシーで会話できるようだから、今度聞いてみよう。」


 「それと、ノルウェージャンフォレストキャットの子供なら、間違いなくお姉ちゃんモフモフで可愛いだろうなぁ・・・一杯抱きしめたいけど、大きくなるまでは我慢しなくちゃ・・・早くお姉ちゃんに逢いたいよぉ・・・」


 エーリカのシスコンどころではない姉への溺愛ぶりを天国で見ていて、再会が少し心配になるエマであった・・・

 エマが生まれ変わったらエーリカの妹になるんじゃないの?と作中のエーリカと同じことを考えた作者もエマに叱られそうですねw

 エマとエーリカというお互いに情愛が深い姉妹が作者は大好きです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ