切り裂きジャック
煙草を吹かしながら、アルミ缶の酒を飲む。これが私の日課だ。
午前2時。
辺りは静かで風が窓を叩いている音しかしない。
どうして私はこんな処にいて、まだ息をしているんだろう。
クソ。
また目覚めてしまった。
眠剤と酒は相性が良いはずなのに、眠ることができない。耐性ができてしまったのだろうか。量を増やしたところで、さほど変わりがない。
少しふらつく。
その程度しか踏み出せないのか、私は。
おもむろに携帯を開く。液晶画面の光がまぶしい。
私にはお気に入りのサイトがある。
【切り裂きライブ】
ここでは私みたいなやつでも気軽に受け入れてくれ、そして、私と同じような日常を抱えている、いわば『似た者同士』達が住人である。
特にこの時間帯の参加者は多い。
サイト管理者の意志としては、悩める仲間同士、改善の道へと歩んでいって欲しいそうだが、実際私はそんなことどうでも良い。
仲間が居る。
例え掲示板の投稿が作り話であるとしても、他人の悩める書き込みなどを見ていれば、落ち着くのだ。ただそれだけ。
今日もここで私は文字を入力する。
ルイ:『眠剤数十錠と缶酎ハイ三本のんで寝てみた。けれど、いつもと同じ!一時間くらいしか眠れなかった(泣)どうして、この世は生きにくいんだろう?毎日ウザイ。』
数分後、レスが返ってくる。
☆あーゃ☆:『こんばんゎぁ☆ルイさん、どぉしたの?また逝けなかったの?(つд`)?☆あーゃ☆も、さっき眠剤と例の薬飲んだらハイになっちゃって寝られませぇん(-_☆)だから切っちゃいましたぁ((・∀・))藁』
ルイ:『☆あーゃ☆、やるね!でも明日学校あるじゃん?絶対見つかるって…』
☆あーゃ☆:『だぁぃじょぶ(^o^)仮病つかって休んじゃいますから☆んで、フリータイムカラオケいってきまーす(^-^)/~~餅、おやつはクスリ♪』
ルイ:『不良娘だ(笑)ここに悪い子がいますよー(笑)』
☆あーゃ☆:『ルイさんいぢゎるだぁ(/_;)クスン(/_・、)』
ルイ:『ドSですから☆あたくし☆んぢゃ、あたくしもスッキリしてこようかな(笑)』
☆あーゃ☆:『いってらっしゃぁい(^^)ノシ』
ほんの少しチャットを済ませて、仲間がまだいるか確かめる。
今夜もみんなどこかで、私と同じことを考えてると思うと、ますますやる気が湧いてくる。
こんな風に毎日やり取りして、過ごしている。
みんな死ぬ気なんてないくせに。
だから、そんなんじゃないってことを証明してみせるかのように、私は右手にカミソリを持つ。
左手首の太い血管めがけて、一気にザックリ…。
世の中はおかしい。
死んでも言い奴らばっかが、ウジャウジャしているのに、何でそいつ等を殺さないんだろう?
疑問、不思議、理解不能。
てか、私の頭はそんなことばかり考えている。
私が正義の世の中を造り上げたい。そして、都合の言い奴達ばかりで暮らしたい。
仲良く暮らした後は、地球を爆弾で一思いに消滅させるんだ。
夢。
とんでもなくパラレルな。
気づけば3時半。
私の左手首が少し重さを感じてきた。
紅い。
あかい。
アカイ。
血。
ふう…、と溜め息が出る。
今日1日の、任務は完了致しました。
さて、明日はどんな一日が待ってるのでしょう?
私は私をこう呼んでいる。
―――――『切り裂きジャック』




