季節イベント『全裸』
1話前に本編も更新しておりますので、そちらもどうぞ!
プロローグも終わったことだし、こういった話も定期的に投稿しようと思います。
相模原宅。
学校から帰宅した優は、部屋に鞄とブレザーを投げ置いた後、風呂場へと向かう。
普段は夕食を済ませた後に入浴するのだが、今日は戦闘訓練の授業がいつもより激しく、湯船に浸かってゆっくり体を休めたかったのである。
脱衣所で服を脱いで、いざ風呂場へ。
シャワーを浴びながら、みーちゃんや愛理とチャットでもしようかと悩んでいた、その時だ。
「さっがみーん!」
「きゃぁぁぁあっ?」
湯船の中から、束音雅が飛び出してきた。
全く理解が追いつかない優。湯船の底には、間違いなく誰もいなかったはずなのだ。
当然雅は全裸。そんな状態で、彼女は優に飛びかかる。雅の目は、完全に変質者のそれだ。
刹那、何故か風呂場の壁が砕け、穴が開く。
この現象に疑問を抱くより先に、優はその穴から逃げ出す。
「まってくださいよー!」
「ちょちょちょちょちょ、何これぇぇぇえっ?」
平日の夕方。
奇跡的に人通りの全く無い道を全力疾走する優と、追いかけてくる雅。
見られちゃまずい体の部分を手で隠す優とは対照的に、雅は「どうぞ見てくれ」と言わんばかりのスタンスだ。
今の雅に捕まったら何をされるか分からず、親友とは言え本能的に恐怖を感じてしまう。
徐々に距離が詰まっていくも、必死で逃げる優。
気がつけば、愛理の住むマンションまでやって来た。
「愛理助けてー!」
「ええい、何だ騒々しい――って、きゃぁっ?」
愛理の部屋は七階だ。扉を破壊し、中へと入る優。
部屋の奥から出てきた愛理が、全裸の優と雅を見て聞いたことの無い悲鳴を上げた。
「一緒に逃げるわよ!」
「あわわわわわ! こっちだ!」
愛理に先導され、向かう先はベランダ。
「待って! 愛理まさか――」
「せぇのっ!」
愛理が優の手を引き、地上から約二十メートルのところから飛び降りる。
すると、
「しまった! これでは死んでしまう!」
ここで愛理はようやく、投身自殺まがいのことをしたことに気が付いた。
「あんた馬鹿なのっ? 錯乱してるのっ?」
「ぐぉぉぉっ!」
愛理の右手に嵌った指輪が光り、手に握られるは刀型アーツ『朧月下』。
その刃をマンションの壁に刺し、ガリガリと傷跡を残しながら二人の落下速度を緩やかにしていく。
そして無事に地面に着地した二人は、思わずその場に倒れこんでしまう。
「ぐへへー! いっただっきまーす!」
「来ないで来ないでぇぇぇえっ!」
「む、無念……!」
そんな二人に、マンションの七階からダイブしてくる雅。
その時だ。
「ふン!」
「うごっ?」
どこからともなく権志愛が現れ、雅の腹に、まるで野球のバットで弾き飛ばすように棍型アーツ『跳烙印・躍櫛』を叩きつけた。
何故かカキーンというBGMが響き、空の彼方まで飛んで行く雅の体。「あーれー」なんて間抜けな声がフェードアウトする。
「二人とモ、大丈夫カ?」
優と愛理に手を差し伸べてくる志愛。
礼を言って、その手を取ろうとしたところで、
視界がブラックアウトした。
***
「――なんて夢をみたんですよ」
「悪夢ね……。正夢になりそうなのが、たちが悪いわ」
雅の家。たまたま雅が不在の時に。
優が今日見たという夢の話に、レーゼは苦笑いを浮かべるのだった。
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