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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第13章 日本海~シェスタリア
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第111話『前触』

 ナランタリア大陸の南に広がる国、サウスタリア。大陸の約六割を占める巨大な国だ。


 その最西端には、シェスタリアという港街がある。


 上空には、天空島。


 少し前までは宿泊施設や、海産関係のお店が並んでおり、かつてこの場所を訪れた雅は、雰囲気は寺泊に似ていると思った。


 しかしレイパーの襲撃があり、壊滅寸前な被害を受け、今もなお復興活動が続いている。


 そんな中、今回の世界融合という現象に見舞われ、例に漏れずこのシェスタリアも大混乱だ。一体何が起きたのかとシェスタリアのバスターが調査に乗り出したものの、復興活動とどちらを優先すればよいか分からず、結果どちらも滞っているという悪循環に陥っている。


 街の郊外にある、少し開けた場所。


 そこに、一匹の山吹色の巨大な竜が降り立った。


「さて、着いたぞ」

「すみません、シャロンさん」

「わりぃな」

「何、大したことは無い」


 竜が、その見た目からは想像もつかない幼い声でそう言うと、背中から二人の女性が地面に降りる。


 一人は、赤いワンピースを着た、銀髪のフォローアイという髪型をした少女。


 もう一人は、黒い皮ジャン姿の、両腕に小手を嵌めた赤毛のミディアムウルフヘアーの女性。


 ライナ・システィアと、セリスティア・ファルトだ。


 二人を降ろした竜の巨体が光を放つ。


 すると体がみるみる縮んでいき、あっという間に十歳くらいの小さな女の子へと姿を変えた。


 灰色のダッフルコートを身に纏った、山吹色のポンパドールの幼女。竜人のシャロン・ガルディアルである。


 三人とも、雅とレーゼの仲間だ。かつて魔王種レイパーと死闘を繰り広げ、その際突如姿を消した雅とレーゼを探していた。


 二人が雅の世界に行ったのでは、という予想はしていたものの、どうすればその世界に行けるのか手掛かりが掴めなかったライナ達。


 いよいよ危険な方法を試すべきか……と思ったところで世界が融合し、二人と連絡が取れ、待ち合わせ場所のシェスタリアまでやって来たというわけだ。


 ライナ達はサウスタリアの北側にあるナリアという国にいて、そこからは本来なら馬車で来るのが一般的なのだが、シェスタリアのみならず、ナランタリア大陸全土の交通機関は混乱により現在止まっている。そのため、シャロンの背中に乗って飛んできた。


「それにしても、先に来ているアストラム達はどこに行ったのじゃろう?」

「避難所の様子を見に行くって言っていたぜ。俺達も行ってみるか。どうせ、ミヤビ達が来るまで少し時間もあるし」


 雅達と待ち合わせているのは、この三人だけでは無い。他にももう三人おり、彼女達は先にシェスタリアまで来ていた。竜とは言え、彼女達全員を一度に背中に乗せるのは無理だったので、シャロンは二往復したのである。


「ミヤビさん達、早く来ないかな……」


 ライナが海の向こう――丁度、日本がある方向だ――へと視線を向けながら、静かにそう独りごちるのであった。



 ***



 一方、その頃。


 シェスタリアの中央部にある、一番大きな避難所にて。


「やー、やっぱりどこもかしこも大騒ぎだね」

「無理も無いよ。全く……何で悪いことって重なるんだろう?」


 二人の少女が、そんな会話をしながら避難所から出てくる。


 一人は、ブラウンのロングコートを着た、薄紫色のウェーブ掛かったセミロングの娘。


 もう一人は、白衣のような見た目のローブを身に付けた、跳ねた前髪が特徴的な緑色のロングヘアーの娘。


 ファム・パトリオーラとノルン・アプリカッツァだ。二人も雅の仲間である。


 二人は学生だ。ウェストナリアという都市にある学院の生徒で、ひょんなことから雅と出会い、それからの付き合いが始まった。


 天空島での戦いの際も駆け参じ、雅とレーゼの捜索にも参加していた二人。当然、雅達がこちらに来ると聞いて、大人しく学院で待っているつもりは無い。


 そんな彼女達だが、以前ここで復興活動の手伝いをしていた。待ち合わせ場所に早く着き過ぎたので、今はどんな様子かと思い、ここまでやって来たのだ。


 先程まで、支援物資をいくつか運ぶ仕事を手伝っていたところである。


「おっとノルン。ミヤビ達がそろそろ来る頃じゃない? 港の方へ行こうよ」

「え、もうそんな時間?」


 慌ててノルンが確認すれば、現在時刻は十二時十七分。


 雅達の到着は十二時四十分頃と聞いている。


「行く前に、師匠に声を掛けなきゃ……。でも、どこにいるんだろう?」

「お偉いさんに呼ばれて、どっか行っちゃったきりだもんなぁ……。はてさてどこに行ったのやら」

「まあ、仕方ないか。連絡入れておけば――」


 と、そこまでノルンが言った、その瞬間。


 遠くから、爆発音が聞こえてきた。



 ***



 時は、少し前に遡る。


 時刻は十二時十分。


 シェスタリアの港にて。


「思いの他、早く着いたねー」


 船から降りた、白ブラウスに黒いワイドデニム姿の、エアリーボブの女の子。(たちばな)真衣華(まいか)が伸びをしながらそんなことを言う。


 彼女の後に続いて、雅やレーゼ、志愛達もぞろぞろとシェスタリアへと降り立った。


 昔であれば長距離を何日もかけて移動する船旅も、今や数時間で目的地に着けるくらいには進化している。丁度、二百年前の飛行機で移動するのと同じくらいの時間で済むのだ。


「ここが、異世界……。この間までみーちゃんがいたところ……」


 グルグル辺りを見回す、Tシャツ姿のラフな格好のサイドテールの少女は相模原(さがみはら)(ゆう)。『みーちゃん』というのは、雅のことだ。


「しかし……ここは随分寒いな。長袖を持ってくれば良かった」

「あ、そうだった……。ごめんなさい、皆さん。バタバタしていて、その話をするのを忘れていました」


 ブルリと体を震わせる、三つ編みの女性は篠田(しのだ)愛理(あいり)。彼女はノースリーブの紺のシャツ姿。


 ナランタリア大陸は、日本で言えば秋と冬しか季節が無いようなものなので、この格好では流石に寒いだろう。


 異世界の気温事情を知っていた雅やレーゼが一言説明していれば寒さ対策も出来たのだが、急な出来事でバタバタしており、二人とも説明を忘れてしまっていたのだ。


「みんなと合流したら、何か羽織るものでも貸してもらいましょう。それまでは申し訳無いけど、ちょっと我慢して頂戴」

「仕方ありませんわね……。まぁ寒いのは慣れていますし、少しくらいなら平気でしてよ」


 お嬢様口調でそう返したのは、ゆるふわ茶髪ロングの娘、桔梗院(ききょういん)希羅々(きらら)だ。彼女も白いウィピールを着ており、愛理程ではないが寒そうにしている。


「それにしてモ……何と言うカ、想像していたような『異世界』って感じじゃないナ……」


 志愛が、優のように辺りを見回して首を傾げ、少し残念そうに呟く。


「あ、志愛ちゃんもそう思います? パッと見ただけだと、確かに雰囲気は日本と似ていますよね」

「マーガロイスさん、あれが、以前束音が言っていた『天空島』ですか?」


 愛理が、空に浮かぶ島を指差して尋ねる。


「ええ。あそこで、あの魔王みたいなレイパーと戦って……それから、あなた達の世界に飛ばされたのよ。あれ、まだあそこに浮かんでいたのね……」


 かつての死闘が蘇り、レーゼは顔を顰めた。


 しかし、一つ息を吐いて心のスイッチを切り替え、改めて全員に向かって口を開く。


「ちょっと早いけど、仲間と合流しようと思う。今から連絡するからちょっと待っていて――」


 と、レーゼが話している最中。


 遠くで、爆発音が聞こえた。

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