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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第12章 北蒲原郡聖籠町『StylishArts』
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第12章幕間

 雅達が『StylishArts』で戦っている頃。


 ウェストナリア学院にある、ミカエルの研究室にて。


 そこには、雅とレーゼの探索チームの六人――ライナ・システィア、セリスティア・ファルト、ファム・パトリオーラ、ミカエル・アストラム、シャロン・ガルディアル、ノルン・アプリカッツァだ――が集まっていた。


 これまで集めた情報を整理し、次なる指針を立てるためである。


 しかし、彼女達の顔は暗い。


 それもそのはず。集めた情報を整理すると言っても、直接雅やレーゼに繋がる手掛かりがあるわけでは無いのだから。


 彼女達は二人が雅の世界にいるという予想をしており、これは実際に合っているのだが、これだって証拠があるわけでは無い。確証が無く、まるで広大な砂漠でたった一粒の色の違う砂粒を見つけ出そうとしているような感覚に陥っているのである。


「どこか、ミヤビさんの世界に繋がる手掛かりがありそうな場所って無いでしょうか?」

「……ミヤビが最初に転移したっていう、倉庫の中を調べるのはどう?」


 銀髪のフォローアイの少女、ライナが聞けば、薄紫色のウェーブ掛かったセミロングの少女、ファムがそう提案する。


 しかしファムの顔は険しい。今のは苦し紛れの発言なのだ。提案しておいて難だが、そこに何かしらの手掛かりが見つかるとも思えない。


 それを察したからだろう。


「それよりも、もういっそ師匠の案を試してみませんか?」


 緑色のロングヘアーの少女、ノルンが代替案を出す。


「あぁ、あの『レイパーをわざと倒さずに弱らせる』っていう案かしら? 正直、危険が伴うからあまり気が進まないのよね……」


 金髪の女性、ミカエルがそう言って困ったように目を瞑る。


 以前、雅がミカエルに『二つの世界を自由に行き来する方法は無いか』と尋ねた際、ミカエルが提示した方法の一つがこれだった。


 無論ミカエルの言う通り、倒せるはずのレイパーをわざと生かしたままにするというのは危険極まりない。


 どこに転移するかも分からない上、意識がはっきりしたまま転移するとも限らないのだ。例えば、転移する際に意識を失ったりでもすれば、そのまままだ息のあるレイパーに殺されてしまう可能性もある。


「……じゃが、正直手詰まりじゃろう。アプリカッツァの言う通り、アストラムの案を試してみる時では無いか?」


 橙色のポンパドールの幼女であり、その正体は竜人のシャロンが呟いた。


 ミカエルが懸念している点も最もだが、シャロンはシャロンで別の心配をしていた。


 それは、魔王種レイパーのことだ。


 雅とレーゼがいなくなったのと同時に、魔王種レイパーもどこかへと消えてしまった。シャロンは、恐らく奴も雅達と同じところへと飛ばされているだろうと推測している。


 放置しておくには、あまりにも危険な存在だ。そんな奴を、雅の世界に転移させたままには出来ない。元は自分達の世界の化け物なのだから。


 雅やレーゼが心配なのもそうだが、魔王種レイパーを何とかする必要があった。


 そして全く同じことを考えていた人物が、他にもいた。


「……ミカエル、俺もシャロンと同じ意見だ」


 赤いミディアムウルフヘアーの女性、セリスティアだ。


「でも、二人とも……」

「心配すんなって。こっちにゃぁ六人いる。ま、何とかなんだろ」

「う、うむ……。まぁ確かにそうじゃが……ちと楽観的過ぎんか?」

「だけど、そうも言ってられないだろ? 二人がいなくなってからもう一ヶ月近くだ。あの魔王みたいなレイパーのこともある。今頃何をしているのかは分からねぇけど、もう既に何人か殺していても不思議じゃない」


 セリスティアとしては、雅の世界の人間のことが心配だった。


 強敵だったのは事実だが、それでも逃げられていい理由にはならない。


 やらかしてしまった以上、自分達の手で始末をつけるべきだと考えていた。


「まぁ、でもシャロンの言う通り楽観的か……。しっかり作戦を練って行動すべきじゃねぇか?」

「……そうですね。確かに、決断の時かもしれません。ミカエルさん、試してみませんか?」


 セリスティアの言葉に、ライナが腹を決める。


 それでも、頷ききれないミカエル。


 だが、


「先生、やってみない?」

「師匠、他に手も無いですし……」

「……分かったわ」


 ファムとノルンも賛同してしまえば、ミカエルとて納得するより他は無い。


 そんな時だ。


「おっと、もうこんな時間か……」


 セリスティアが時計を見る。既に夜中の一時を回っていた。


「悪い、少し席を立つぞ」

「あ、通信魔法を試すんですね」

「ああ。連絡つくかは分からねぇけどな」


 実はセリスティアは、一日に三回程度、通話魔法でレーゼと連絡がとれないか試みていた。


 直接レーゼと会話出来なくても、繋がりそうな気配等の僅かな手掛かりでもあれば儲け物だと思っていたのだ。やらない理由は無い。


 最も、これまで全て空振りに終わっていたのだが。


 屋内より屋外の方が通話魔法の感度は良いため、セリスティアは研究室を出て――窓の外を見て、あんぐりと口を開ける。


「お、おい皆!」


 慌ててライナ達を呼ぶセリスティア。何事かと思って外に出たライナ達も、外を見るとセリスティアと同じようにそれぞれ驚愕の表情を浮かべた。



 空が、七色に光っていたのだ。



「な、何ですかこれ……っ?」

「わ、分からぬ! こんなものは見たことが無い!」


 三百年以上生きているシャロンでさえ、何が起こっているのか分からなかった。


 そして――


「わっ!」

「何っ?」

「まぶしっ!」

「きゃっ!」

「ぬぅ……!」

「くっ!」



 世界が、白い光に包まれた。

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