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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第12章 北蒲原郡聖籠町『StylishArts』
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第102話『地下』

 ビルの最深部にある実験室へと走るレーゼ達。


 地下へは、一階まで降りた後、ロビーの北にある通路を通った先にあるエレベーターか階段を使えば辿りつける。


「……まぁ、壊されていますわよね」


 操作パネルを押してもエレベーターはうんともすんとも言わなかった。


 予想はしていたことなので、誰も落胆することは無い。


「希羅々、確か地下って、中辺りにフロアになっているところがあったよね? 割と広めの」

「ええ。開発中のアーツを使った模擬戦が出来るよう、そういう作りになっていたはずですわ」


 一般の人は立ち入り禁止の地下であるが、希羅々も真衣華も、父親が『StylishArts』の関係者だ。


 故に、ここから先の構造は、大まかではあるが知っている。


「ここ、地下五階まであるんだ。一番下に、最終実験室っていう大きな部屋があるよ。そんで、地下三階に今ちらっと話していた広めの部屋があるの」

「地下三階から地下四階へは、その部屋を通り抜けないといけませんの。皆さん、気を引き締めて下さいまし。警戒は怠らぬように」


 だから予想もついた。この先に、人工レイパーがいることも。


 希羅々は皆にそう警告し、雅達は無言で頷いた。


 敵が待ち構えていると分かっても、大人しく階段で降りていく一行。


 地下一階と地下二階は、通路となっている。両脇に、研究室があった。


 中には、一目見ても何に使うか分からない装置がいくつもある。


 希羅々と真衣華曰く、アーツの修理やメンテナンスの際、より専門的な調査を行う場合は、この研究室にある設備を使うらしい。


 通路を通り抜け、地下三階。


 そのフロアに足を踏み入れた瞬間――



 一行に、突如何かが襲い掛かった。



 警戒していたため、散り散りに飛び退くことになったものの、回避に成功する。


 針だ。


 直径五センチ程、長さ三十センチ程の針が壁に突き刺さっていた。毒でもあるのか、突き刺さったところの壁は変色し、脆くなっている。今襲い掛かってきたのはこれだ。


 危うく串刺しになるところであり、皆一様に顔を青褪めさせた。


 それでもレーゼと雅、愛理は攻撃が飛んで来た方向に目を向ける。


「……やはり、いたか」


 全身黒っぽい黄色の、人型のレイパーだ。頭は歪な形状だが、ところどころ蜂に似た複眼や顎の面影が残っている。


 右腕の先端は蜂の尻部のような形状となっており、ここから針を飛ばしたのだろう。


 一方、左腕や体や足はまるでナナフシの様に細く、全体的にアンバランスだ。


 分類は『人工種蜂科レイパー』といったところか。


 すると、


「右からも来るわよ!」


 優の警告で、咄嗟にその場を離れるレーゼと雅、愛理。


 直後、今まで彼女達がいた場所に、マシンガンのように黒い粒が飛んでくる。


 見れば、ヒマワリの種のような形状をしていた。


 レーゼ達が人工種蜂科レイパーに目を向けていた時、同じように優達は別の場所にいるレイパーを注視していたのである。


 全身黒味掛かった緑色の、人型のレイパーだ。こちらも頭部は歪な形状であり、ところどころ大きく凹んでいる。


 特徴的なのは、胸部にあるヒマワリの花だ。直径五十センチ程で、花といっても枯れかけであり、ヒマワリ特有の暖かさや快活さは全く無い。


 先程の種子は、ここから飛ばしたのだろう。


 左腕の先端は球状となっており、タンポポの綿毛のようなものが無数に生えていた。こちらも恐らく飛ばして何か攻撃をしてくるのだと思われたが、今一想像が付かない。


 分類は『人工種ヒマワリ科レイパー』だろう。


 部屋の奥には、下へと続く階段があるが、二体ともここから先へは行かせないと言わんばかりの雰囲気を見せる。


「……あのヒマワリのような奴、私がやるわ」

「じゃあ、私レーゼさんと戦う」


 レーゼと真衣華が、慎重な顔でアーツを構え、一歩前に進み出る。


「愛理、手伝ってくレ。あの蜂みたいな方を何とかしたイ」

「分かった、良いだろう」


 志愛と愛理も、緊張した面持ちで戦闘体勢をとる。


「私達も――」

「ミヤビ達は先に行って。この先に、まだ敵がいるはずよ。ここで時間を掛け過ぎるわけにはいかないわ」

「いえ、しかし――」

「こっちは大丈夫だよ希羅々。それより、お父さんが心配でしょ?」

「……それは……」

「桔梗院、ここは任せろ」

「……くっ」


 人質となっている父親のことは、勿論希羅々だって心配だ。


 それでも、真衣華達だって同じくらい心配である。


 だが、しかし……真衣華も愛理も「任せて」と言う。


 ならば、今は彼女達を信じよう。そう思った。


 故に苦渋に満ちた顔だが、希羅々は頷く。


「……私の攻撃で隙を作る」


 優が、弓型アーツ『霞』を構えてそう呟いた。


「分かっタ。撃ったら走ル。一気に攻め込むゾ」

「隙なら、私も作ります」


 雅も剣銃両用アーツ『百花繚乱』をライフルモードにし、胸の高さに構える。


 優と雅が、二体のレイパーの足元に、それぞれエネルギー弾を放った。


 同時に、一行は目的の方向へと走り出す。


 レーゼ、真衣華は人工種ヒマワリ科レイパーへ。


 志愛、愛理は人工種蜂科レイパーへ。


 そして希羅々、雅、優は奥の階段だ。


 脇目も振らずに先頭を走る希羅々に、レイパーを狙撃しながら跡を追う優と雅。


 そんな彼女達を人工レイパーは妨害しようと動いたが、そこにレーゼ達が攻撃を仕掛け、邪魔をする。


 背後で戦闘が始まる音を聞きながら、希羅々達は階段を降りて行くのであった。

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