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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第12章 北蒲原郡聖籠町『StylishArts』
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第100話『反撃』

ミスって投稿遅くなりました。申し訳ありません!

 『StylishArts』の一階で、激しい戦闘音が鳴り響く。


 雅と真衣華が、人工種海老科レイパーと戦っているのだ。


「はぁぁぁあっ!」

「えいっ……!」


 人工レイパーの左右から、雅と真衣華が同時に斬撃を放つ。


 剣と斧による強烈な一撃。特に斧の一撃は、真衣華のスキル『腕力強化』により威力が上がっている。


 しかし、二人の攻撃が人工レイパーにヒットすると、雅も真衣華も揃って苦悶に顔を歪めた。


 人工レイパーの体を覆う甲羅には、傷一つ付いていない。


 人工レイパーはお返しと言わんばかりに、タコの足のような見た目をした、腕の触手を真衣華の腹部に叩きつけ、彼女を大きく吹っ飛ばす。


 そして触手にある無数の吸盤の内の一つから、サッカーボール程の墨の塊を真衣華へと目掛けて放った。


 これは起爆性の墨であり、ドローンや床を破壊する程の威力を持つ。


 モロに喰らえば真衣華の体は木っ端微塵になってしまうだろう。


 故に人工レイパーに接近している雅は素早く剣銃両用アーツ『百花繚乱』の柄を曲げてライフルモードに変えると、放たれた墨の塊へと桃色のエネルギー弾を放ち、空中で相殺させる。


 しかしその行動により出来た隙を敵は見逃さない。


「むっ? ……きゃっ?」


 彼女の足元を触手で掴み、そのまま遠くへと投げ飛ばす。


 さらに、吹っ飛ばされても怯まず突っ込んできた真衣華も触手で絡めとり、そのまま羽交い絞めにしてしまう。


 このまま墨で真衣華の体を破壊しようとすれば、人工レイパーもただでは済まない。


 しかしそんなことをせずとも、触手に力を込めれば、細い真衣華の体など粉々に出来てしまう。


「ぁ……ぁぁぁ……!」


 ギリギリと込められる力に、骨が悲鳴を上げ、堪らず声を上げてしまう真衣華。


 二挺の片手斧型アーツ『フォートラクス・ヴァーミリア』が、手からポトリと落ちる。


「真衣華ちゃん……っ!」

「雅ちゃん……アーツ……!」


 真衣華の言葉に、ハッとする雅。


 咄嗟に自分のアーツを、真衣華の方へと投げる。


 すると百花繚乱は縦に半分に分離した。


 床に落ちていたフォートラクス・ヴァーミリアが浮き上がると、その左右に分離した百花繚乱がくっつく。


 合体し、まるで鳥のようなフォルムになった、二つのアーツ。


 空中を飛び回り、真衣華の体を避けながら人工レイパーへと突進をかます。


 合体したアーツは、全身が刃。


 甲羅には傷が付かなくとも、触手は軟い。


「――っ!」


 羽交い絞めにしていた触手が、合体アーツの突進によって切断され、痛みに悶え、声無き悲鳴を上げる人工レイパー。


 解放された真衣華が急いでその場を離れると、合体アーツは速度を上げ、人工レイパーの真正面から突撃する。


 甲羅は硬くとも、スピードを乗せた合体アーツに激突されれば、僅かながらもヒビは入る。


 よろめくレイパーと、激突の衝撃で吹っ飛ばされる合体アーツ。


 合体アーツは空中で分離すると、それぞれ雅と真衣華の手に舞い戻る。


 そして――


「はぁぁぁあっ!」

「せぇぇぇえい!」


 合体レイパーが作ったヒビに向けて、二人が同時に攻撃を叩きこむ。


 全体重を乗せた、重い斬撃。


 ヒビはあっという間に大きくなり、人工レイパーの体が破壊。そのまま爆発するのだった。



 ***



 十階。ロの字型のフロアにて。


 人工種黒猫科と戦っている、愛理、優、レーゼの三人。


 そこまで広い通路では無いが、人工レイパーはまるで忍者のように壁を走ったり、落下防止のための柵を足場にしたりと、縦横無尽に動き回る。


「ぐっ……!」

「ちょこまかと……!」


 アーツを構えていた愛理とレーゼは、素早い動きに翻弄され、今も背後から放たれた掌底を辛うじて躱したといったところ。


 近くでは優も、身軽な敵の動きを捉えきれず、中々矢型のエネルギー弾で援護することが出来ずにいた。


 三人とも息を切らしており、相当に苦戦している様子。


「……仕方ないわね」

「マーガロイスさんっ? 何をっ?」


 剣型アーツ『希望に描く虹』を腰に収めたレーゼに、愛理も目を丸くする。


 無理も無い。戦闘中に武器を仕舞う等、自殺行為にも程がある。


 だが――。


「すぅぅぅ……」


 レーゼは静かに息を吸うと、僅かに腰を落とす。


 敵の動きは目で追えない程では無い。


 人工レイパーは攻撃の意思が見えなくなったレーゼに攻撃する。右側へ動くと見せかけ、素早く左側に回りこみ、蹴りを繰り出した。


 しかしレーゼは人工レイパーが自分に攻撃を仕掛けるタイミングを見計らい、上手く『衣服強化』のスキルを発動させつつ、腕で蹴りを防ぐ。


 その後もあらゆる方向から人工レイパーが攻撃を仕掛けるも、その全てを身一つで捌いていくレーゼ。


 敵の動きを見切るため、防御に専念したのだ。


 ここまで敵が素早いと、レーゼとて攻撃の動作に入れず、防戦一方のまま押し切られることは明白。


 だが今の彼女は一人ではない。


 動き回る人工レイパー。三回のフェイントを入れた後、レーゼの左側から突っ込む……が。


 その人工レイパーの体に矢型エネルギー弾がヒットし、敵の体がおおきく吹っ飛んだ。


「やっと当たった……!」


 優の攻撃だ。レーゼが防御に専念し、攻撃を引きつけたことで、敵のスピードに優の目も慣れたのだ。


 吹っ飛ばされた人工レイパーは空中で体を捻り、辛うじて着地し、再び動き回る体勢をとる。


 するとそこに――


「――はぁっ!」


 目が慣れたのは愛理も同じだった。


 優が人工レイパーを吹っ飛ばしたタイミングを完璧に見計らい、一気に敵へと接近したのである。


 真上から振り下ろされた彼女のアーツ『朧月下』。


 人工レイパーは咄嗟に身を翻してそれを躱すが、その瞬間、愛理のスキル『空切之舞』が発動する。


 当てるつもりの攻撃が躱された時、敵の死角に瞬間移動するスキルだ。


 愛理の姿が視界から消え、どこにいったと人工レイパーが彼女を探そうとしたその瞬間。


「アァァァッ!」


 踵の辺りに激痛が走り、思わず劈くような声を上げて膝をついてしまう。


 人工レイパーの背後に移動した愛理が、足を斬りつけたのだ。


 これでもう、ちょこまかと動き回ることは出来ない。


 前方から再びアーツを構えたレーゼと、背後の愛理。


 二人から同時に斬り付けられ、ついに人工レイパーは爆発するのだった。



 ***



 愛理達と反対側の通路。


 そちらでは、人工種烏科レイパーと希羅々、志愛が戦っていた。


「はぁっ!」


 鋭い声と共に、レイピア型アーツ『シュヴァリカ・フルーレ』の激しい突きがレイパーへと迫る。


 スピードはあっても直線的な軌道だ。人工レイパーにとって、攻撃を躱すのは容易。


 それでも別方向から志愛の『跳烙印・躍櫛』が叩きつけられてくれば、どうしたって当たることもある。


 だが……。


「……ちぃっ!」


 人工レイパーの筋骨隆々な体。丁度鳩尾の辺りにレイピアのポイントがヒットしたのだが、筋肉に阻まれ、突き刺さらない。


 志愛も眉を顰めている。彼女の打撃も、どうにも効き目が薄い。


 そんな中、人工レイパーの右ストレートが空を切る音を立てて希羅々へと放たれる。


 太い腕から繰り出される一撃。希羅々は体を捻って躱し、拳は壁へと打ち込まれた。


 途端、いとも簡単に壁が砕けてしまい、希羅々も志愛も顔を強張らせる。


 当たったらおしまいだ。


 幸い、パワーはあるが攻撃の速度はそこまででは無く、見切るのは難しくない。


 それでもこちらの攻撃が通らないのでは埒が明かないというもの。


 希羅々としても、スキル『グラシューク・エクラ』で巨大なレイピアを呼び出し攻撃すれば何とかなる気もするが、このスキルは一時間に一発しか放てない。この後にも戦いが控えていることを考えれば、まだ温存しておきたかった。


 そもそも、然程広くないこの場所で巨大なレイピアを呼び出そうものなら、足場を破壊してしまい自分達も危険だ。


「スキル無しで何とかするしかありませんわね……っ!」

「桔梗院ッ! 危なイッ!」


 戦略に気を取られていたが故か。少し希羅々の動きに隙が出来ており、そこにさかさず人工レイパーがラリアットを繰り出してきたのだ。


 腕は、既に希羅々の回避が間に合わないところまで迫っていた。


 咄嗟にシュヴァリカ・フルーレを体の前に出し、衝撃に備える希羅々。


 しかしその時。


「ッ!」


 人工レイパーの顔面に、矢型のエネルギー弾が命中する。


 不意の一撃にラリアットの軌道が逸れ、希羅々の頭上を通過。


 冷や汗を掻きながらも、エネルギー弾が飛んできた方を見れば、反対側の通路から優が弓型アーツ『霞』を構えているのが見えた。


「優ッ!」

「ほら! ボサっとすんな!」


 希羅々も志愛も戦いに集中していて気が付かなかったが、優達は既に人工種黒猫科レイパーを倒した後だった。


 愛理とレーゼは、人工レイパーが爆発した後に倒れていた男を拘束していたが、優はこちらの援護をしてくれたという訳である。


「ボサっとなんてしていませんわ!」

「すまなイッ! 助かっタ!」


 希羅々も志愛も、人工種烏科レイパーが怯んだ隙を逃さず、一気に踏み込み攻撃を仕掛ける。


 敵の前方にいる希羅々は手数を増やし、なるべく体の柔らかそうなところを中心に突きの嵐を。


 敵の背後にいる志愛は体勢を崩すべく、足元へと、力を込めて棍を叩きつける。


 遠くからは、優が敵の顔面にエネルギー弾を放っていく。


 人工レイパーは顔面に飛んでくるエネルギー弾を躱すことに意識を向ける必要が出たことで、二人の攻撃も当たりやすくなった。


 志愛の棍が人工レイパーの膝裏に叩き付けられ、敵の体が僅かに低くなる。


 そこに、希羅々のレイピアが顔面目掛けて襲いかかってきた。


 人工レイパーは咄嗟にレイピアの側面を腕で弾くが、刹那、眼へと優の放った矢型エネルギー弾が直撃する。


 飛び散る、緑色の血。


「ガァァァッ!」


 堪らず声を上げ、目を押さえる人工レイパー。


「はぁぁぁアッ!」


 その背中に、志愛が思いっきり棍を突く。


 よろめく人工レイパー。志愛の攻撃が命中したところには、紫色の線で、虎を模した模様が刻まれていた。


「ガァ……ァァァアッ!」


 刻印を、全身に力を込め、気合と共に人工レイパーは掻き消す。


 だが。


「ガァ……ッ!」


 どうやら爆発することだけは免れたと思った、その時だ。


 鳩尾へと、希羅々のシュヴァリカ・フルーレが突き刺さった。


 いかに筋肉が鎧のようとはいえ、それは力を入れているからこそ。


 志愛の一撃に耐え、思わず力を緩めてしまった人工レイパーだが、そうなれば刃は突き刺さる。


 冷たい眼で希羅々がレイピアを抜き、その場を離れると――。


 人工レイパーは悲鳴を上げて、爆発するのだった。


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