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歯車

作者: みなはら

歯車には夢がある


この小さな工場の歯車ではなく


蒼空を飛ぶ機械の歯車になって


世界中を旅すること



飛ぶところは見えなくても


違った世界にいけばわかるはず



小さな工場の機械でも


天気や季節の空気の違いがわかるから


砂漠の街の乾いた風や


北の国の雪や氷の冷たさを


きっと感じられるはずだ





ある日


工場の機械の中へ小さな石が紛れ込んだ


石は機械のあちこちにぶつかりながら転がって


歯車たちの間に入り込み


砕けて歯車たちのいくつかに


歪みや欠けたところを作った



欠けた歯車のひとつは


蒼空の夢を見る歯車だった



工場の機械は


夢見る歯車といくつかの歯車や部品を交換して


もとに戻った



外された歯車たちは悲しげなため息を漏らしたけれど


夢見る歯車だけは違っていて


次に使われる機械のことを思い


とても嬉しそうだった



けれども


壊れた部品たちは捨てられる


歯車たちは溶鉱炉の火の中で溶かされて


新しいものに生まれ変わることになる




歯車は


自らが溶けかけた


熱い溶鉱炉の中で夢を見る



それは


真っ青な蒼空と


白い雲海の上を飛ぶ


幻のような


とても素敵な夢だった




歯車は思う


次は何に生まれ変わるのだろう




何でもいい


また蒼空の夢を見よう


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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後の一文の明るさに救われます。ややもすれば歯車という言葉からネガティブに引っ張られそうですが、終始ポジティブなイメージでまとめられているのでとても素敵だと思いました。 [一言] 夢幻企画…
[良い点] 潔い歯車の生きざまと死にざま! 爽やかで素敵でした。
[良い点] あらすじを読んで、社会の歯車的な重たい話なのかと思えば、なんとも夢のあるお話。 歯車だからこそ、製品から原料へ戻っても次があると、希望のある話ですね。
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