初めての短い会話と現代日本の素晴らしさ
俺は自分の軽率さと馬鹿さに辟易した。いやそれだけ疲労が溜まっていて思考回路が鈍っていたと見るべきか、よくよく考えてみると日系顔を見ただけで日本人だとどうして思ったのだろうか…
とりあえず笑顔は崩さずさらなる接触を試みてみる。
「幸太郎」自分を指差しながら言ってみる。
君は?と指を女の子に向ける
「ジアン」
女の子がちょっと戸惑ったように教えてくれる。
「ジアンかぁいい名前だねナイストゥミートゥージアン」
とりあえず笑を浮かべながら世界共通語の英語で挨拶しみる。
「ナイストゥミートゥコウタロウ」
彼女も今度は笑顔で挨拶してくれた。
さて会話が終了してしまったこれ以上俺にボキャブラリーはない。英語だってまともに喋れないのにそれ以外の言語なんてわかるはずがない、嫌な間があく前にさっさと退散しよう。
俺は水を飲む振りをして大壺を指差し手を振った。
彼女ジアンも苦笑いながら手を振ってくれた。大壺がある角まで歩きながらジアンの事を考える、見た目高校生くらいで髪はボブカットの茶髪スラットした体型だし目もパッチリだ。見るからにアイドル系だな
と思いこういう展開的になぜ日本人じゃないんだ!と心の中で涙した。
そんなくだらないことを妄想しながら大壺の蓋を開けた途端異臭が鼻腔を突き抜ける。
「ふぶぅ!」
なんじゃこりゃと再び匂いを嗅いでみる、こりゃ腐った水だ。よく子供の頃近くの何も住んでいない死の湖なんて言われていた湖の発する匂いに酷似している。一回突き落とされてあまりの臭さに絶叫した記憶がある。こんなの飲めるか!と蓋をそっとして気分を落ち着かせる為に頭を振る。
ん?よく見ると大壺が置かれているさらに奥にかがんで入れるような場所がある、なんだろうと入ってみると乾いた砂が敷き詰められていた。
なんでこんな所に砂場があるんだ?と一歩踏み出すとまたも異臭が鼻を突く、この匂いはそうよく子供時代公園で遊んでいた頃小便していたあのトイレの匂い…
「ここトイレかよ!」
一人でツッコミを入れてしまった。それほどに仰天してしまった、俺らは犬猫と同じ扱いかと!ふざけるなと!怒りのボルテージが振り切れそうになったが思い至る。そう俺らには人権はないのだった。
あの悪魔が言う通りの待遇である、この世界に拉致られてから妙に子供時代を思い出す。心が弱っているんだろうと思う
だが俺の心情とは別に体は正直であった。
この匂いを嗅いでそれを意識してしまうともうダメだった。
かがんでする。
狭い空間なので音が少し響く、大壺まで来ないと皆がいる広間から見えない設計になっているのはあの悪魔なりの優しさなのだろうかと本当にどうでもいいことを考えながら……