適性検査
「それと逆らえば殺す」
フードの男が紡いだ一言はあまりに無情だった。
「今から血を少し提供してもらう、これによってお前らの進むべき道が決定される。」
するとフード男の後ろにあったドアからぞろぞろと人が現れる、痩せていて目が虚ろさらに着ているものも粗末なものだ。どういう階級なのかひと目でわかる、手に小型のナイフと割烹着がみてとれる。
そいつらは割烹着を俺たちに渡し持っていたナイフで俺の右手の人差し指を少し傷つけて血を採る。
チクッとしたが我慢できないほどではない、これから何が起きて何をされるかのことのほうが頭にいっぱいで痛みを感じなかったのかもしれない。
渡された割烹着を頭からかぶると何とも言えない匂いが鼻腔を突き抜ける。子供の頃世話をサボって死なせてしまったカブトムシの死骸のような…死臭なのだろうか?ならなぜ割烹着からそんな匂いがするのだろうか?これは誰かが着ていて死んだ者のお下がりなのだろうか?自分もいつかこの割烹着を着ていた者と同じ運命を辿るのだろうか?ネガティブな疑問ばかりが頭の中を湧いてくる。
「刀身を見せろ」
ハッとネガティブな思考を止めフード男の言動に注意を配る。
やつはナイフに付着した俺たちの血を見て回っているらしい。
「ふむふむ、ほうほう」と一頻り見て回り満足したのかいやらしい笑顔になるとたっぷりひと呼吸おいて
説明しだした。
「気になっているようだなぁいいだろう教えてやる、これは魔力をその者が宿しているかを検査できる特別なナイフなのだ。赤のままは魔力なし黄色は微力に魔力あり青は魔力多大にありとな」
その言葉を聞いて俺は理解した。これは選別なのだと…
これから行われるのは格差による選別だ。まずここで刀身が赤だった者は切り捨てられる、まるで腐ったりんごのように… 俺の刀身の色は……黄色だった
「刀身が赤だった者を連れていけ」
無情にも告げられたその言葉に機械的に従う奴隷?達は刀身が赤の者たちを連れて行こうとする。
「It ’s not a joke.Will you die in such a place!!」
連れて行かれそうになった筋肉ムキムキの外人が悲鳴のように叫ぶ。
「やれ」
その瞬間生暖かい何かが俺の顔に付着すると同時に鉄臭さが鼻腔を満たす。そして悲鳴と何かを咀嚼するような音…
「やれやれ逆らえば殺すといったはずだよ、もっとも君がなんと言って逆らったのかはわからんがね。
この部屋一体に私の言葉を理解させる魔法を掛けておいたから君は私の言葉を理解していただろうがね。うん?死んでしまったか。」
ハハハと笑いながらこの惨状を作り出した人物が一人で喋る。この人物以外皆思っただろう…
ここは地獄だと