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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

二遊間コンビの一日

作者: 藤田大腸

この二人については拙作『Get One Chance!!』三話からちょくちょく出てきますのでそちらもご覧ください。https://ncode.syosetu.com/n0774fg/


 星花女子ソフトボール部の二遊間コンビの一日は、どちらかが先に起きた方が相方をベッドから起こすことから始まる。今日早く起きたのは湯沢純。うーんと伸びをすると、隣でまだすーすー寝息を立てている新浦不二美のほっぺたを突っついた。


「ふじみん、起きなさーい。朝ですよー」

「んんー……」


 夢の世界から抜け出た新浦がゆっくりと身を起こした。


「じゅんじゅん、おはよー……」

「はい、おはよー」


 ちゅっ、と軽く口付けを交わす。中等部時代から五年間同室の二人が、一日たりとも欠かしたことがない朝の挨拶だ。


 この二人は中等部に入学して以来、長期休暇の帰省を除いて一時間以上別々の場所にいたことがほとんどないぐらい行動をともにしている。桜花寮では五年間ずっと同室で、クラスも五年間ずっと同じ。もはや一つ屋根の下に暮らす家族と言っても言い過ぎではない。


 朝食を取るときはいつも卵焼きを食べさせ合っている。


 朝練ではキャッチボールやトスバッティングといった二人一組のメニューを中心に。


 登校したら必ず二人一緒に教室に入る。ちなみに新浦が風邪で休んだときがあって、湯沢が単独で教室に入ったらみんな心配して湯沢に声をかけてきたことがあった。この二人が一対と認識されている何よりの証左である。


 授業では二人とも芸術科目で音楽を、社会科目は地理を選択しているので離れ離れになることはない。


 昼食はいつも購買でパンを買ってきて教室で食べる。いつも相手のパンを一口ずつかじって間接キスしている。周りが冷やかそうとも、二人にしてみれば羨ましがっているとしか思っていない。


 そして部活。準備体操でのストレッチはもちろん二人でペアを組む。お互いの温もりを確かめあう最大の機会だから、気分が乗ってついキスを交わしてしまうこともしばしば。最初は周りに咎められたが、今ではもう勝手にやってろとばかりに誰も言わなくなってしまった。二列縦隊を組んでランニングするときも、必ず二人は隣同士で。キャッチボールも当然二人で。傍から見ればピンク色の空間が出来ているようであった。


 だがソフトボールに対する姿勢は真剣そのもの。守備の上手い二人はシートノックでいくら監督が強い打球を打とうとも難なく捌く。さらにダブルプレーの練習ではまさに阿吽の呼吸を見せ、全くと言っていいほどミスをしない。


 だがこれは本人たちに言わせれば、技術の良し悪しではない。長い間一緒に暮らしてきて、お互いのことを知っているからこそできるのだと、公言してはばからなかった。


 練習が終わるとやはり二人一緒に帰寮して、一緒に風呂に入る。授業で先生に対する愚痴や練習の反省点を語らいながら洗いっこをして、湯に使って疲れを癒やす。


 夕食ではどんなオカズが出ようとも必ず食べさせ合う。横の席に誰が座っていようともお構いなしである。周りには微笑ましいと映るか目の毒と映るか様々だが、本人たちは全く気にしていない。


 部屋に戻って宿題を一気に二人で片付けて、後は音楽を聴くなり漫画を読むなりして過ごした後寝るのだが、二つあるベッドのうち使われるのは一つだけである。


 そして今日は金曜日。翌土曜日は練習試合が無くグラウンドには九時集合。いつもの登校時間より遅めである。となると少し遅く起きても構わないわけで。


「じゅんじゅん、今日は私がリードするよ」

「うん。ふじみんの好きなようにして」


 二人は熱いキスを交わしながら、ベッドに倒れ込んだ。


 これが星花女子ソフトボール部が誇る二遊間コンビの一日である。

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