51.事務所
朝ごはんを食べ終わり、食器の洗い物をアズに無理やらされていた。
ああ、やばいな。このままアズの言われるままにやっていると、良い未来が見えてこないな。
ここはガツンと拒否しないと駄目だな。
「ねぇ、朝風呂をしようと思っていんだけど、手伝ってくれるかしら?」
「……は?」
「なにをキョトンしているのよ?」
「お風呂を手伝うという、意味の分からない事を言ったのお前だろ? そもそも旅館の時も浴衣の時もひとりでシャワーしてただろ?」
「貴方は知らないかもしれないけど、私はお嬢様なのよ?」
「それで、なぜそうなるんだ?」
「もしかして、私と一緒に入るところを想像して、興奮したのかしら、顔赤いわよ。ふふ」
「いやないな、その幼稚体型に興奮するようなロリコンではない」
「……」
「後なんか臭うなー? アズがトイレに行った後からなんか臭うだよな。早くお風呂に行ったどうだ?」
「女性にそんなデリカシーのない事を言うなんて、どうかしているわ……最低」
睨みつけながら、俺の方を向いて、バタバタ足音を立てながら、お風呂場に向かった。
あー反省だ。
俺は壁に身体の体重を預けた。
流石に変な事を言ってしまったかもしれない。拒否と言っても、今回のお風呂手伝って欲しいという願いは、明らかに冗談だろう。それに対して、なにをムキに反応してしまったんだ。
何よりも、女性に対して、臭いはデリカシー以前にアズに言われた通り、最低という言葉が合っている。
洗い物が終わり、左腕の手の甲辺りを触れて、透明なウィンドウを開いて、テキトーにネットの情報を確認していると、トイレに行きたくなった。
普通にトイレに行けば良い、思うかもしれないが、この家の構造上、トイレに行くためにはお風呂の前を通らなければ行けないのだ。
ついに我慢できなくなり、トイレのところに行くと、お風呂場の床にはアズの服やロングブーツ、さらに下着まで、散らばっていた。
アズは家でもロングブーツを履いたまま過ごしていた。
浴衣の時はロングブーツを履いてはいなく、下駄を履いていたので、旅館の時、部屋では下駄は脱いで足袋など履いていた。どうやら普段家では靴を脱がない生活をしていたみたいだ。
「あいつ、ここで脱いで、そのままお風呂に入ったのか」
踏まないように、ステップをするかのように移動をして、トイレの前に移動した。
さっきは臭いとか言ったが、このトイレは消臭機能付きでなので、その可能性は低いと言えるだろう。このトイレのブランドはUフォース製なので、高価なやつだ。他にも防音機能が付いており、部屋は無駄に広く、トイレのサイズもやたら大きい、俺の知らない機能がまだあるのだろうか。
扉の横を見ると、モニターが付いていた。
モニターを操作して、どんな機能が付いているのか確認すると、どうやら、排便やら尿を記録して、健康状況を把握できるみたいだ。
「こんなものもあるのか……」
既にリーアの名前が登録されていた。
登録は複数人できるようで、トイレに入る前に自分を選択して、顔認証か指紋認証をする事で記録が可能な状態にできるみたいだ。
急いでいる時は押している暇なんて無さそうだがな。
お風呂もUフォース製で自分で身体を洗わなくても、機械が手みたいになって洗ってくれる機能とかも付いているみたいだ。
Uフォースとは支配者のブランドで、朝に来たらしい配達物の中には、電子レンジとかはUフォース製だったが、使い捨てや長く使われわないものは普通の会社の製品の物だった。
支配者も家を用意したり、物を送ってきたり、相変わらず、よく分からないな。
1時間ぐらいした後、アズがお風呂から出てきた。
「なぁ、本当に事務所を作るのか?」
「そうよ。もう事務所にする予定のところはピックアップしているわ」
妙に張り切ってるな。なぜそんなに事務所を作りたいのか、理解ができないが、レイブン・シャフトにはもう戻れないと決まった以上、生活をする為にお金は必要だし、丁度いいのかもしれない。
なんか、憎き支配者の支援もあるみたいだし、活用させて貰う。
マンションを出ると、車がない俺達は駅まで20分ぐらい掛けて駅に到着した。
「喉乾いたわ」
「近くに自動販売機があるが、買うか?」
「買うわ、甘く炭酸じゃないやつでお願いするわ」
「了解」
自動販売機からリンゴジュースと水を買った。
「ほら、買ってきたぞ」
「やるじゃない」
なんか、俺が水を飲んでいるところをジロジロ見てくる。
「なんだよ」
「わざわざ、お金を払って水を買ったのね」
「別にいいだろう?」
「水を買うなら、お茶の方がまだいいと思うのだけど」
「変なところに、こだわりがあるな」
電車に乗った。
普段は車を使っていたので、電車に乗るのは久しぶりになる。
アズは周りをキョロキョロ見渡している。
電車自体は乗客はそんなにいない。
「どうしたんだ? なんだか落ち着かないように見えるが」
「別に特に何も無いわ」
「そうか?」
まぁ、こいつも普段移動は車で移動してそうだし、電車に乗るのが珍しいんだろう。
駅を降りると、アズがトコトコ歩き出した。
「今どこに向かってるんだ?」
「事務所予定のところ」
「事務所を作る前に、もう場所を決めたのか?」
「場所をピックアップしたと言ったじゃない」
「確かに言ってたが……」
迷いなく、進むアズを追いかけながら、道中を進んでいくと、建物に指さしながら、俺を見た。
「あれだと思うわ」
二階建ての古そうな建物だった。周りは新築の建物が並んでいる事もあり、なんか浮いている。建物の1部にレンガの壁があり、デザインなのか本物なのか区別ができない。




