50.朝食にて
リビングの壁にもたれかかって寝ていると、なんだか美味しそうな、いい匂いがした。
目を開けると、ツインテール姿のリーアが台所で何かをしている。台所といえば、料理以外ないと思うが、この家には料理器具なんてものは無いはずだ。
リーアは俺の視線に気づいたのか、振り返った。
「起きたんだ? 朝起きたら、なんか色々届いてたんだよ。差出人の名前は無かったけど、多分支配者だと思う。テキトーに開けて、朝ごはんを作ってたんだー」
「差出人が書いてない物を受け取るのはどうかと思うがな……」
まぁ、この家を用意したのは支配者だから、送ってくるとしたら支配者ぐらいしかいないとは思うがな。
部屋の中には空いたままのダンボールがいくつもあった。
台所を見ると、フライパンやナイフなどが置いてあり、近くに電子レンジなどもある。
支配者は以外と良い奴なのか……って、それは無いな。ますます、リーアと支配者の関係性が気になってくる。
「どうぞ」
リーアが両手でプレートを渡してきた。
プレートにはリーアが作った思われる食べ物が乗っている。目玉焼きにベーコン、チーズが乗っているトースト、デザートにヨーグルトすらある。
美味しそうだが……。
「いや、いらない」
「えーー」
「朝ごはんならもう、自分用に昨日買っているからな」
「私が作った手作りご飯だよ?」
「いや、朝食は自分で決めたものを食べる事にしてる。というか、朝に固形物を食べる気はない」
「旅館の時は食べてたじゃん!?」
「それは、旅館で出されたものを食べないやつはいないだろう」
「そ、んな……」
リーアの手から力が抜けたのか、手に持っていたプレートが床に落ちて、プレートに上にあったご飯が床に散らばった。
――
俺は朝食にあまり固形物は取らないようにしている。たまに気持ちが悪くなる時があるので、それなら、まず食べなければ良いと気づいたからだ。
今俺は片手にボトル握っていた。飲んでいるのは完全栄養食、昨日お店に行った時に売っていたので買ってみた。
この前森咲から貰った不味い飲み物と違って、味には色んなバリエーションもあり、しっかり美味しく、ミルクを混ぜるとさらに美味しい。
「貴方最低ね」
完全栄養食の感想を考えていると、ロングヘアーになったリーアが俺に向かって言った。
「いやいや、俺のルーティンを知らないで作った方が悪いな」
そっぽ向いてそんな事を言うと、
「そんなの知らない!! 作中でそんなルーティン初めて聞いたよ!?」
立ち上がり、俺を見下ろしながら言った。
「何言ってるだ?」
突然のキャラ変に困惑している俺の前で、リーアはすっと座り直した。
「一瞬だけ、もう1つの人格に乗っ取られたわ」
「そ、そうか……」
ちなみに、テーブルはまだないので、俺とリーアは壁に背を向けて座っていた。
色んな物を送ってくるなら、テーブルと椅子を送ってくれよな。
隣に座っているリーアは俺に渡すよう用と自分用に作っていたものがあったようで、プレートを床に置いて食べていた。
「ここで暮らしていくことにあたって、ひとつ思ったことがあるんだ」
「何かしら」
「リーアには2つの人格があるけど、2つとも同じ名前だと分かりにくいというか、呼びにくいんだよな」
そう、偉そうなリーアとか普通のリーアとか色々変えているが、いい加減何とかしたい考えていた。そこで、ある事を思いついた。
「リーアのフルネームは確か、リーア・アズベリルだろう? 普通な方をリーアと呼んで、戦闘狂の方をアズベリルと呼ぶ、いい考えだと思わないか?」
「全く良くないわね。なら、私をリーアと呼んでくれるかしら」
「いや、しかしなぁ……」
夢の時は偉そうな方のリーアは存在してなかったから、リーアといえば、普通な方なんだよな。
「戦闘狂だとは思ってるんだな」
「なんか言ったかしら?」
「いや、何にも。そもそも、アズベリルの何が嫌なんだ?」
「うるさいわね。その名前で呼ばないでくれるかしら?」
ムスッとした表情で俺を見ている。
しかし、これは譲れないな。
「確かにその名前を呼ぶのは言いにくいから、あだ名で呼ぼう」
「あだ名?」
「例えば……アルとかベリー、リル、ルー、ベリル、ルリとか、なんか気に入ったのがあれば呼ぶぞ」
「あだ名……悪くないわね。それなら、貴方が選んで」
「俺が?」
「そうよ」
「まぁ、良いが……」
アズベリルが上目遣いで俺を見ている。
一体俺に何を求めているんだか……。
「アルは呼びやすそうだがな……ルイ……そうだな。リーア2号とかとうだ?」
「……」
目を薄めて、俺の事をニラ目つけてきた。
お前もそんな顔できたんだな。
「嘘に決まってるだろ?」
「さっさと決めてちょうだい、やる事は沢山あるのよ?」
「分かってる。ちょっと待ってくれ」
名称とかペットとか、名前を決めるのは苦手なんだよな。
「アズ……にするか」
リルでもルリでも良かったんだが、リーアと絶妙に似ているし、戦闘狂にしては、名前が可愛いすぎる気がする。
「アズ……まぁ、悪くないわね」
僅かに頬が赤くなっているのは気のせいだろうか?
しかし、急に顔色が悪くなった。
「まさか……もう……」
「どうした?」
「ちょっと、花を摘みに行くわ」
「は? 唐突どうした? 近くに花畑なんてあったか?」
呆れたような表情で俺を見た。
「トイレよ、バカなの?」
「はぁ……」
ネットで調べて見たが、確かにそういう言葉があるみたいだ。




