地下への階段
小さな子供を床にそっと置いて、女は先へ進んでいたが、少しずつ変化していく状況に息を飲んだ。
壁は壊れ、床は割れ、天井は剥がれ、所々には、兵士達の死体があった。
死体は全て、硬い鈍器で殴られたように、身体が変形していた。
「こっこれが、戦闘数字の力なの?」
兵士の1人1人が達人の域に到達したと言っても良い筈なのに、それが、6人も殺されていたのだ。
女は言い知れぬ恐怖に襲われ、後退りをして引き返そうとしたが、先から、人の声が聞こえた。
「こっここまでか。全然駄目だな。」
そこには、全身がボロボロで、自分の血なのか、返り血なのか判断しにくい赤髪の男が座っていた。
「なっなんだ?まだ1人残っていたのか。」
息も絶え絶えで今にも死にそうな赤髪の男は、壁を使って、立ち上がろうとしていた。
「ごっごめんなさい。」
女が謝ると、赤髪の男は気の抜けたように倒れこんだ。
「何を謝っている。殺しに来たのはお前らだろうが。」
死にかけな筈なのに、男の言葉には力強さがあった。
「まぁいつか来るとは思っていたがな。」
赤髪の男は、ズボンから、真っ赤な腕輪を出した。
「こっこれは?」
「これは、俺らの家族の証だ。全員が持っている。これを持っていたら、もしかしたら攻撃されないかもな。」
女は何故敵である自分に家族の証をくれるのか謎だった。
「仲間を逃がしてくれないか?」
赤髪の男は立ち上がり、近くの壁へ体当たりして壊した。
この先には地下へ続く階段があった。
「俺らは、この研究所からは殆ど出てないし、出ても頼れる大人が居ないから、お前に頼む。」
まぁ駄目でも、あいつらなら生きていけるとは思うがなと独り言を言いながら、また倒れこんだ。
「私がもし、リーダーに報告したら?」
「そしたら、お前の仲間が全員が死ぬだけだ。まぁ後の判断はお前に任せる。」
女は何かを決心して、地下への階段を降りていった。