ワークスとフリューゲル
「私の場合拳銃やナイフを取り出せる。結構自在の武器召喚。それがワークスよ」
心が手のひらの上で拳銃をもてあそびながら言う。
やめろ、危ない。暴発したらどうするんだ。って死なないんだった……。
久住の方を見やると、それを待っていたかのように久住も右手を掲げ、武器を召喚する。
「見てなクロトだっけか。これが俺のワークスだ!」
意気込みながら取り出したのは、刃渡り一メートル以上にもなる…………木刀。
見間違うことなく木刀だった。刃渡りとか言いながら別に刃が付いてるわけじゃないや。
「……しょぼ」
「あ? 何つったてめえ!」
しょぼいと言いました。とか言ったら痛い目見そうなので止めておく。
木刀は確かに武器として良い部類かもしれないが、心の拳銃と比較するとどうしても見劣りする。
誤魔化そうと俺は苦笑いを浮かべるが、それで許してくれる気はなさそうだ。心だけじゃなく、久住も血の気は多そうだな。
久住は木刀を振りかぶり、次の瞬間
炸裂音とともに久住の体が光を纏って爆散した。
「は? え?」
「伏せて!」
何が起きたのか全く理解できない俺を、心がベッドの上から突き飛ばす。
ベッドの横に背中から落ちた俺は情けない声を上げる。
心に文句の一つでも言ってやろうと思ったが、元いたベッドの上を見て絶句する。
ベッドには無数の穴が開いて、シーツは無惨にも破けていた。そのベッドは妙に焦げ臭く、一つ一つの穴はやや黒ずんでいた。
「もう一人も狩れると思ったんだけどねぇ」
保健室の奥のベッドから知らない女性の声がする。
カシャリ、と金属の擦れる音が続いて聞こえてくる。その音に俺は底知れぬ恐怖を感じた。
恐る恐る声の主の方を見ると、そこには妖艶な女性が立っていた。
見た目の年は同じくらいなのだろうが、どこからか漂っているお姉さん気質。
年上ならではの抱擁感すら感じかねない、すらりとした長身に大きな胸。
だが俺はその腕に抱えているものに怖気を感じる他なかった。
『ショットガン』。
何発もの弾丸を拡散させながら発射する特殊銃。俺に特に知識はなかったものの、ベッドの弾痕を見れば、それが話にだけ聞いたことのある殺戮銃だとわかる。
そこでガラリ、と保健室の扉が開く。
「どもー。チームS、スカーレットの皆々様ー」
そう言いながらどかどかと、少女が二人の少年を引き連れて乱入してくる。
「我らチームF、『フリューゲル』と申します。以後お見知りおきを」