クリスタルと呼ばれる何か
『神取りゲーム』とは何なのか。
彼女、心はこう説明した。
「『神取りゲーム』は神様の娯楽よ」
最高で最悪の神の戯れ。それが『神取りゲーム』なのだと。
神とは何なのか。なぜ神に娯楽が必要なのか。
「後者は知らないけど、前者については後で分かるわ」
「あんなのが神だとは信じたくはないがな」
そう心と久住は言葉を濁した。
説明を後回しにして、『神取りゲーム』について説明を再開する。
「この世界は死後の世界。ここで行われているゲームが『神取りゲーム』なの」
「ルールはそれほど難しくねえよ。決められたクリスタルを奪い合うゲームだ」
変に気に入られてしまったのだろうか、三白眼の割に親切に俺に解説してくれる久住。
曰く、『神取りゲーム』は七つのクリスタルを使用する。赤チームと白チームに分かれる四対四のチーム戦だということ。
クリスタルにはそれぞれ名前があり、ポータルクリスタルのポーン、ルーク、ナイト、ビショップ、クイーンと、マスタークリスタルのホワイトキングとレッドキングがあるらしい。
正直名前を並べられても、チェスに関係あるということしか分からないが。
疑問符を浮かべていると丁寧に再び久住が解説してくれた。
「ポータルクリスタルていうのはデケェ置き物でな。ワークスで攻撃するたびに赤か白に発光する仕組みになってる。自分のチームの色に発光させるとそのポータルクリスタルを獲得できるわけだ。沢山獲得するほど強いスキルが発動できるんだぜ」
わけだ、とか、だぜ、とか格好つけられても、新しい用語出されたら意味わからないんだが? チェス関係ないし。
「ポーンからクイーンのポータルクリスタルは、名前と形が違うだけで、価値は変わらないわ。重要なのは二つのマスタークリスタルよ」
俺を気にせず話を進める心。どうやらこちらは親切なフリをしているだけらしい。気にしろよ。
マスタークリスタルは取られると負けになる、将棋でいう王将駒のようなものらしい。まさしくチェスの駒のキングである。
「マスタークリスタルはチームで一つ持ってるわ。ゲーム中は赤か白のクリスタルを四人の誰かが持っている。それを持ってるやつを攻撃して強引に奪い取るのよ」
「……攻撃って物騒だな」
まるで殺し合いでもするみたいじゃないか。この世界は死なないんじゃなかったのかよ。
「殺し合いをするのよ。この、ワークスでね」
そう言って心は右手を掲げた。
その右手を掲げた空中に、先ほど取り出した拳銃が突如、前触れもなく現れた。