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傾向と対策

「むぅ……なぜお主は靡かぬのか……?」

「俺はチラリズム派です!」



そんな話。(約1500字)



魔王城にて。

勇者一行がとうとう魔王を虫の息まで追いつめました。しかし、満身創痍の勇者一行も魔王にとどめをさす力が足りません。

魔王も勇者たちも魔王城のボロボロになった謁見の間に仰向けになっていました。


「またも我らの負けか……勇者よ……我らの敗因は何だと思う?」


虫の息の魔王は、ただ力尽きるのを待つついでにと疑問をぶつけました。勇者が顔だけを魔王に向けます。


「……なぜそれを聞く……」


「これでも……歴代の勇者共を研究していたのだ……武器、ヒトの魔法、勇者の性格……まあ、それなりだがな……ヒトも魔族について記録に残すのだろう?」


魔族、特に魔王の力は絶大です。人間とのその差はなかなか縮まらず、人間は数を使ってどうにか対抗していました。

人間の中で特に能力が突出した者を勇者と呼び、世界中から集め、彼らを中心に魔王討伐を決行。神の武器の力もあり、ほぼ魔王討伐は成功しますが、勇者一行の生還率は五分です。


生還率は五分ですが、生きて帰っても五体満足ではなかったり、パーティーの一人だけが帰ってきたという事も多いのです。なので、勇者側もこれという確かな勝因はありません。


ですが今回、魔王の方には、勝つ見込みがありました。


「ヒトのメスの裸なら戦うどころではない筈だったのだがなあ……」


魔王の呟きに、勇者一行(勇者♂、戦士♂、魔法使い♂、僧戦士♂、狩人♂)は全員が噴きました。


((((( そういう理由で女の姿だったのかい! )))))


今回の魔王の姿は人間の美女でした。床にまで流れる髪は光沢も美しい黒髪、豊かに張り出した胸、引き締まった腰、大きく包んでくれそうな尻は蛇の腹に続きますが、上半身半裸、肌の色が深緑とはいえ、それはそれは艶かしいものです。

人間の何十倍もある大きさではありましたが。


「ヒトのオスは皆、メスが裸であれば欲情し躊躇すると聞いたが?」


「くそ!悔しいかなその通り!」


狩人が仰向けのまま魔王に返します。勇者も戦士も魔法使いも、僧戦士も「ま~な~」と同意しました。


「なのになぜお主らには効かぬのだ?」


「それは知能があることの弊害である性癖のせいにございます」


魔王の疑問に脱力し過ぎて勇者の言葉使いがおかしくなりました。


「弊害……セイヘキとは?」





「顔は綺麗なんだから、そんなおっぱい丸出し同然の服とも呼べない服よりちゃんとした服を着て、そんで服が破れた時に『あ!見えそう!』の方が隙ができるっつーの」


「そうそう。女の裸は好きだが毎日毎日毎日毎日敵として見ていると煩悩も負ける。いい迷惑だ」


「俺は太もも派なんで」


「俺はチッパイ派です」


「尻尾はモフモフ!!」


「フム……我はお主らの性癖には嵌まらなかったか……それが敗因だな……」


魔王がしみじみと悟り、そして意識を無くしました。


そしてどうにか立ち上がるまで回復した勇者は、魔王の額にあるサークレットの紅い宝石を聖剣を振り下ろして割りました。その宝石は魔王には特別にもう一つあると言われていた核です。魔王の巨大さに苦労しましたが、やっと核に届きました。


砂が風に飛ぶように、魔王がサラサラと消えて行きます。

その様子を勇者一行は胡座姿で眺めていました。


「なんだか、魔王のおかげで魔王を倒せたみたいだな……」


勇者がぽつりと言い、皆が頷きました。


「さて、魔王についての報告はどうする?」


戦士が気を取り直して聞くと、皆が「う~ん」と首をひねりました。


「……まあ、恐ろしい相手ではあったな」


僧戦士がしみじみと言うと、皆が同意しました。


「だな。恐ろしい相手だった!」


狩人が自棄気味に叫び、魔法使いも繰り返しました。


「ここで性癖をさらす事になるとはな……この事は報告するか?」


「「「「 勘弁してくれ! 」」」」


「だよな~」




そうして、巨大で恐ろしい魔王は勇者たちに退治されたと新しい歴史に残ったのでした。







おしまい。



またも下ネタすみません(;>_<;)

何だろう、スランプかしら……?(笑)


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― 新着の感想 ―
[一言] みんな違って、みんな良いのです( ´∀` )
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