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白百合終末論  作者: 沢ワ
3章.皆の夏休み
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48.修学旅行二日目 その1

 自由行動。その言葉には結構な魅力がある。お昼だってどこで食べてもいいというのだから楽しみだ。

 二日目はバスや電車を駆使して観光地をめぐる。三日目も同じ感じだ。

「いざ金閣寺へー!」

「れっつごー!」

「は、走らないでくださいまし!」

 エネルギッシュな光と黄泉に引っ張られる京子。それを遠目で見る藍と百合。あまり目立たないようにしたいがあの二人はそれを許さないだろう。

 それを言ったら百合だってその真っ白な髪や肌のせいで目立っているのだが。

 自由行動、なんと私服である。

 やはりというか京子を始めとした生徒たちの服は結構なブランドものである。安物を着ている生徒も『汚れないように』だし、やはり御嬢様学校というべきか。

 百合の服装は黒系統のパーカーにズボンは細いシルエットのジーンズ。肌の露出を控えなくてはならないため、長袖長ズボン。服の中には部屋の冷蔵庫で冷やしておいた保冷剤が仕込まれている。京子たちと比べればそこまで高くないが、結構な値段の服装だ。ちなみに踏み砕いたメガネの代わりはなかったので裸眼。微妙に視界が霞んでいる。

 そしてこの班一のお金持ち柳原黄泉はジャージ(結構ブランドもの)を着ている。光は親のいない一人暮らしということもあってか古着屋で買ったと言っていた服。そして藍はというと、

「藍ちゃんはなんでまた縮んでるの?」

「変装」

 ツインテールの小学生『あい』になっていた。服装は唇に目玉がついたサイコな柄のノースリーブで下は小学生らしい半ズボン(男もの)だった。

「バレるとやばい」

「蹴散らしちゃだめだって、わかってくれたんだね」

「アリスにお小遣い抜きにされる」

 微笑ましいんだかよくわからないコメントだった。



 金閣寺はその金色に輝く豪華な建物が特徴的。そして正式名称を鹿苑寺という。

 黄泉と光は知らなかったようだが。

「あの金ってどこからとってきたんだろうねぇ」

「さぁ」

「………これ、一回燃えちゃったんだ」

 思い思いの感想を言って写真を撮ったりする。なんというか、やはりこういう場所の『見方』がわからない六人はひたすら『なにこれすごい』と見ているのだった。


 しかし、次はそうはいかなかった。北野天満宮、学問の神様ということで受験生たちには願掛け人気のある場所である。

 しかし、というかわかりきっていたことだが、

「ま、この黄泉ちゃんには関係ないわけですよ!」

 この中で一番学力に不安のある黄泉が堂々と言い張った。この場合『不安のある』というのは周囲の反応で、肝心の本人は『別に平気でしょ!』と思っているのである。

「平気って、黄泉ちゃん………」

「黄泉さんはどのような進路を目指しているのですか?」

「コネとか無しにBetween社でゲーム開発部門で働きたいんだよねー。プログラム系の専門学校行こうと思ってるんだ」

 軽い調子で、しかしいつになく真剣にそういう黄泉。

「あら意外ですわね。てっきり就職するのかと思っていましたわ」

「いやね? 最近のゲームってやっててしっくり来ないんだよね。なんかシリーズ長続きしてて同じこと繰り返してるっていうか。だから私が斬新なゲームを作ってみたいなぁってさ」

「私はあまりゲームをしないのでわからないのですが……。百合さんは?」

「私海外のマイナーゲームばっかだから……」

「そう、百合のやってるマイナーゲームって発想が面白いからね。ああいう一般受けしなさそうなゲームこそ今のゲーム業界にいれる『一石』になるとおもうんだよ」

「でも黄泉はプログラミングできるの?」

 光がそう訊く。確かにプログラミングしているところは見たことないし、そういった話題にもならない。黄泉はいつだってテンションMAXで変なことを言ったりしているのだ。

「あー、まー」

「黄泉ちゃんは簡単なゲームなら作って配布してるよね?」

 黄泉が作ったゲームはレトロな音楽とドット絵の横スクロールアクション。アイテムで自分を強化してラスボスを倒しにいくというゲームだ。

 指摘してみると黄泉は少し顔を赤くして、

「うん、そうだけど。てかやってたんだ? 黄泉ちゃん恥ずかしいですのよー……。………ゆ、百合は将来なにになりたいのかなー?」

 露骨に目も話題も逸らすのだった。

「わ、私?」

「うん。もしかして学校の先生とか?」

 百合は少し考える。正直考えたことはなかったのだ。

 いつ命が尽きるか分からなかった、病弱な体。どんなに体を動かせてもこの命がすぐなくなってしまうのではと不安で、前までは将来のことなんか考えたことはなかった。

 しかし今は違う。

「お母さんみたいな立派な『お母さん』になりたいかなぁ」

 多分百合とその母親二人の境遇を知っている人ならこの言葉にとてつもない重みがあることを理解できるだろう。

 自分の命がなくなると言われても、子供の顔を見たがった綾瀬蘭。

 実の親からも勘当され大事な妹を亡くしても、折れずに妹の子供の世話をしている綾瀬桜。

 病弱だったと思えば、能力者になり先の分からない人生を歩む綾瀬百合。

 この先なにがあるか分からないが、それだからこそ、『親になりたい』という切実な願いだった。

 その重みを理解し、それだからこそ黄泉はこう言った。

「いやぁ、百合は桜先生みたいに『ガツン!』といけないとおもうなぁ」

「えぇ?」

 悪いことは言わない、と分かる信頼があるからこそ言える言葉があるのだ。

「例えば百合の子供がストーカーされてたとして、殴れるか──」

「│解体バラす」

「おおう………」

 予想の斜め上場外ホームランな解答に困惑しながら北野天満宮の参拝を終えるのだった。


 伏見稲荷大社。千本鳥居で有名だ。ここでは商売繁盛の神様を奉っているらしい。らしいというのはやはり宗教なんじゃそりゃの現代人の4人の解釈だからであり、

「私はここ、五穀豊穣を司る神様奉ってるって記憶してる。でも、商売繁盛?」

「昔の人の商売は農業だったからじゃない?」

 藍との認識の誤差も頷ける。

「イナリってことは狐の神様?」

「油揚げ持ってくるべきだったかね」

「そういうのよくありませんわ」

 ともあれ、参拝だ。時間の関係で千本鳥居をみて終了になりそうなのが悔やまれる。

 本殿に一礼し(これが作法かは知らない)、千本鳥居に入っていく。

 朱色に黒の、いつもみるより小さい鳥居が無数に広がる。そのバックの樹木の緑が神秘的な光景に深みを出していた。

「うわぁ……、すごい」

「綺麗ですわね………」

 この鳥居、今でも増えているらしく結構最近の年号が彫り込まれた鳥居も何個か見つけた。

「あ、Betweenのやつもあった」

「へー、やっぱしご利益ってあるんだ」

「信じれば応えてくれる」

 歩く。今まで見たことのない、圧倒的な光景にただただ感動しながら、千本鳥居を一周し本殿へと戻ったのだった。

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