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遥か彼方より、拝啓、お務め先へ  作者: 凍山氷河
第一章 流れ着いた、その先の物語
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第一章5  「クアムに、答え」




 ――――時と場所は移り、これはとある屋敷で起きた、とあるお話である。





 天井から垂れるは煌びやかな幾つかのシャンデリア。放つ光は部屋一面を照らし、豪華な装飾品はその輝きを一層に増す。部屋の中央に悠然と佇むのは縦長の、レトロで重厚感にあふれるテーブル。上に敷かれた真白のクロスが、その空間の”清潔さ”という要素を際立たせる。

 言うなればここは”食堂”。設えてある煌びやかな装飾品から鑑みるに、ここに住む者は相当裕福な暮らしをしているのだろう。


 そしてここにいる人物を見れば、先の予想が肯定されることは明らかである。


 部屋にいるのは2人の女性。

 一人は「静粛」。白と黒で構成された、どこにでもあるような典型的な給仕服姿。つまりは”メイド服”。その姿に似合った、美しく恭しい佇まい。その姿はまさに、主に仕えるメイドのそれである。

 主のそばで、主の指示を待つ。それが今の彼女のなすべき仕事である。


 そしてもう一人は「優雅」。豪華な内装の部屋に比べ主張は控えめだが、一般の住民と比べると一線を画す美しい衣裳とその姿。流れるような美しく長いブロンドの髪に、しなやかで緩急のある体躯。瞑目し微笑を浮かべる表情は、そうあるべき様に整っていて美しい。生まれと育ちの良さが伝わってくるような見た目に加え、特筆すべきは彼女から滲み出る、所謂”オーラ”である。それはまさにメイドの仕えるべき、延いては国民を治めるべき”主”の姿。

 そんな彼女は今、この先の世界が歩む道を分かつ程重要な”情報”と、それに関する”選択”に迫られていた。






 ――――新しい『器』、かい?



 男性のものか、女性のものか、はっきりと区別のつけられない中性的な声が部屋中に響く。否、響いているという感覚は「優雅」たる女性、”アスタロイド・園澤・アレフステン”が感じたある種の錯覚である。実際には部屋に声は響いておらず、彼女の隣に立つ「静粛」たるメイドにはその声は届いていない。彼女のみにそう聞こえるように”声の主”が発しただけのことである。


(そう、新しい『器』。”彼女”はそう言ってたわ)



 ――――そうか…



 アスタロイドが心の中で返答をすると、それに”声の主”は応じる。その会話は言うなれば、脳内で行われる”思念伝達”の様子そのものであった。



 ――――じゃあアスティ、君の見解を聞かせてもらおうか



 アスティ、とそう略して称するところから、彼女たちは少なからず親密な関係であることが窺える。そもそも親しい間柄でないのであれば、”思念伝達”を行ってまで二人きりで話すことなどないのだろうが。



 ――――『器』と言えば、ディアの時の事を忘れただなんてことはないだろう。それを踏まえて君がどうしたいか、それを聞かせてもらおうかなってね



(まあ、私がどうしたいというわけではないのだけれど。ただ”彼女”だって何も考えずに『器』を寄越すわけではないでしょ? なんたって”あの方”なのですから)



 ――――そうだね、君の言う通りだ



(だから”彼女”の意向を汲み取るのだったら、やっぱりここで、私やあなたのもとで監視、管理するのが一番じゃない?)



 ――――監視、だなんて…なんとも感じの悪い言い方だね。とりあえず僕もそれでいいと思うよ。じゃあ、具体的にはどうするつもりなんだい?



(そうね、あなたは”彼女”とは違ったわね。それで、今回の問題に対する具体的な私たちの解答についてだけど…)


 と、そこで彼女は言葉を区切る。あくまで心の中で行われた会話である為、正確に言えば思考を止めたことになる。それをした理由は、





「「――――朝ごはん♪ 朝ごはん♪ みんなでおいしい朝ごはん~ッ♪」」


 開かれた扉から入ってきた幼い女の子と男の子によるデュエットが、静かだった部屋を騒がしくする。アスタロイドのそばにいたメイドは既に丁寧に腰を折り、彼女らの入室に相応しい対応をこなしていた。恐らく事前に気配を察知しての行動だろう。よく出来たメイドだと、主であるアスタロイドはつくづく思っている。


「おはようございます、ルニー様、レニー様」


「うん! おはようターニャ! お母様も、おはようございます!」


「おはようございますなのだ!」


 メイドと挨拶を交わす子たち。そっくりな顔立ちにお揃いの赤みがかったブロンドの髪の毛、そしてそう変わらない身長。この騒がしい二人が「双子」であることは一目瞭然である。


「おはようルニーレニー、ミーネ」


「はい。おはよう、ございます、お母様」


 騒がしい双子に続いて部屋に入ってくるのは、打って変わってクール気な半眼の女の子。十代半ばであろうが、その雰囲気は既に落ち着いている様子だ。しかし、彼女の少し強気な表情からは、僅かなあどけなさが見て取れる。

 そしてその後ろには2人の女性。


「バービィ、ルナ、あなた達もおはよう」


「「おはようございます、アスティ様」」


 扉を開いていた柔和な表情の侍女達。彼女らも、主の挨拶に恭しく返事をする。タイミングの揃ったそれは、同じ仕事をする身として両者ともにこなしているということであろう。


「ねえねえ!お母様お母様!聞いてなのだ!」


 語尾に特徴のある双子の弟、レニーと呼ばれる彼がパタパタと母親に近づいていく。その年相応の幼少年らしい姿に、彼等双子の世話を担当するバービィことバーベノンと、他のメイドに比べて年の若いルナことルナマリアは思わず口元を緩めてしまう。


「どうしたのレニー?」


「さっきねさっきね! ルニーがね! 階段を走ってのぼってね! つまづいちゃってね! バービィがいなかったら、おっこっちゃいそうになってたんだよ!」


「えー、レニーも一緒に走ってたじゃん!」


「だって朝ごはんが楽しみだったんだもん!」


「あたしもー!」


 ピョンピョン飛び跳ねながら、アスタロイドに話を聞かせる(途中からは二人だけで話していた)双子。可愛らしく、子供らしいよくある話だが、実際危ない事ではある。母親としてはしっかり注意しておかなくてはいけない。


「コラッ、二人とも。屋敷の中で走り回っちゃダメっていつも言ってるでしょう?走らなくったって朝ごはんは待ってくれるわよ?」


「「はーーい!!」」


 母親の言葉に素直に返事をし、自分たちの所定の席――他と比べ座部が高い椅子が二つ並んでいる場所――に座りにいく二人。こういう素直さも子供の可愛らしいところだろう。


「この件については私の監督不行届きです。申し訳ございません、アスティ様」


 二人を危険な目に合わせたのは世話役の自分の所為だと自責し、それを謝罪するバーベノン。メイドはあらゆる場面を想定し、それに対応すべく頭を働かせねばならない。大変難しいことではあるが、それにやりがいを感じているからこそ彼女等は仕事を楽しめているのだろう。


「そうね、次からは階段を昇り降りするたびに、もっと言えば部屋を出るたびに注意してやって頂戴?」


「はい、承知しました」


 多少なり冗談の籠った言い方ではあったが、それも無言でわかりあえる程には主従の関係は良好であるといえよう。

 三人が席に着き、担当するメイドがその席の斜め後ろに立ったところで、再び正面の扉が開き、新たな声が部屋を包む。



「おはよう家族一同! 今日も清々しい朝だな!」


 先の幼い双子にも負けない声量。それより一瞬早く響いたドアの音と、そこにいた女性の体勢から、彼女が自分で勢いよく開けた、ということがよくわかる。そしてその事実に少したじろぐ様子の執事が一人、彼女の後ろに立っていた。


「…ウェルサ様、扉は自分が開けますといつも申し上げておりますのに……」


「いや、いいんだいいんだ。いつもお前には世話を焼いてもらってるからな。これくらいのことは自分でやるさ」


「…お心遣い、感謝いたします」


 これ以上言っても無駄だ、と察したかのように、若干の諦めを含ませた感謝を伝える。


 ウェルサことヴェルシーナは、朝から気分がいいぞ、といった表情で食堂の席につく面々を俯瞰する。第一印象としては、元気いっぱいなワンパク少女、と言ったところか。その豊満な体つきを隠し通せていたのであれば、の話ではあるが。

 双子が二桁に満たない年齢の見た目をしているのに対し、彼女は二十歳前後ととれる。童顔なところと醸し出すその雰囲気とが、彼女への認識と理解を妨げてしまう。

 彼女と年の近い専属の男性使用人、クローニアと比べても、部分的に幼さが垣間見えてしまうため、全体的に頼りなさが滲み出てしまう。


「おはよう、ウェルサ。今日はルフィアもいないことだし、あまりクゥロに迷惑をかけ過ぎないようにね?」


「ですから、これは彼への私なりの感謝と労いの表れだ。それに後で肩でも叩いてあげようかと思ってたんですよッ」


 満面のドヤ顔が炸裂していた。

 子供っぽい主張ではあるが、それでも信頼と感謝を感じられる言葉にクローニアも笑みを零す。


「では、みんな揃ったことだし朝餉を執り行おうではないか!」


「フフ…なんであなたが仕切るのよ…まあいいけどね? それよりフィルは? しばらくクゥロが担当のはずだけれど、まだ来てないの?」


「む? フィルだったらここに…」


 まだこの場に集まっていない家族を確認しようとした瞬間。扉の前に立っていたウェルサの背後から、ヒッソリと影のように出てくる男の子が一人。


「あら、フィル。またそこのお花でも見てたの? おはよう」


「ん、ちょっと眺めてた。おはようございます」


 物静かなところも似る姉ミナーヴァと年も近い、本名をフィルウィス、家族の中ではフィルと称される寡黙な男子である。その雰囲気と打って変わって、長時間花を眺めているという可愛い一面もあるようだ。

 この兄弟にはテンションの差がありすぎる気がしないでもないが、そういうのも含めて楽しく暮らせているのだろう。




 ヴェルシータとフィルウィスも席に着いたところで、主であるアスタロイドは部屋にいる子供達と使用人の顔を確認する。


 主君の座るべきその席から見て左側面、手前側の席に座るのは、長女にしてもっとも見た目と中身に差異の見られる「ウェルサ」こと「ヴェルシーナ・園澤・アレフステン」。

 彼女を担当する、あだ名の割には薄い茶色の髪をした長身の男性使用人(サーバント)、「クゥロ」こと「クローニア・フゥディ」。


 その奥。物静かだが自信に満ちた表情が可愛らしい次女、「ミーネ」こと「ミナーヴァ・園澤・アレフステン」。

 ある程度年の近いミナーヴァを担当する女中、「ルナ」こと「ルナマリア・ダウロ」。


 移って右。1歳差の姉と似て物静かだが花を好む長男、担当使用人不在である「フィル」こと「フィルウィス・園澤・アレフステン」。


 彼の奥に並ぶ二つの席。家族が大好きな双子の姉「ルニー」こと「ルニルダ・園澤・アレフステン」と、語尾に特徴のある弟「レニー」こと「レニウマ・園澤・アレフステン」。

 その年の離れた双子を担当する二十歳前後の柔和な女性使用人(サーバント)、「バービィ」こと「バーベノン・フゥディ」。


 そしてアスタロイドの隣で、常に全員のことを気にかけながら彼女からの指令を待つメイド長、「ターニャ」こと「ターナルミア・フェルデ」。



 いつもと比べると人は少ないが、家族の大半が集まって食事をする。これがアレフステン家での一応ルールであり、家族同士の絆を深めるための決まった行事ごとである。しかし、おそらくこの中のほとんどがそんな深いことは考えておらず、単純に家族と食事するのが習慣となっているのだろう。

 その証拠に、全員が揃わないことに明らかな疑問を抱くメンバーもいるのだ。



「あれーえ?ルフィアやベルじい達はー?」


「なんで来ないのだー?」


 先程の会話で不在が確認された使用人、ルナマリアの実の兄である「ルフィア」こと「ミラデルフィア・ダウロ」はともかく、明らかに席が空いている家族(メンバー)の不在を問うのは双子の姉弟。


「ふむ、昨日の夜、聞いていなかったのか? 賢人集会の方々は今日の朝早くからお出かけだ。ルフィアはお爺さん達の付き添いに行ってるから、今日明日はいないぞ?」


「へー、昨日の夜は眠かったから覚えてないのだー」


「えー、今日もベルじいにイタズラしてやろうとおもったのにー…」


「コラコラ、ベルお爺様にそんなことしちゃダメよ、レニー?」


 失礼なことではあるが、ベルじいと呼ばれるお爺様がそれを本当に迷惑と思ってないことを、母親であるアスタロイドは知っていた。血のつながりのない彼でも、家族の一員であることに間違いはない。これも、家族内に知らぬ間に存在する暗黙のルールの一つである。


「ルフィアがいないから、フィル(にい)は今日はクゥロと”遊ぶ”のー? いいなー! あたしもたまにはクゥロと遊びたーい!」


「ルニー、そんなこと言っちゃダメなのだ! バービィが泣いちゃうのだ!」


「えーんえんえん、悲しいですぅ」


 …ウソ泣きなのがバレバレである。


「ほら!泣いちゃったのだ。ルニー、謝るのだ!」


「うぅ……ごめんね、バービィ。あたしバービィのこと嫌いになったわけじゃないよ?」


「………………ウフフ」


 軽率なひとことに関して謝罪を返すルニルダ。そしてそれに対して、堪えきれずに漏れ出てしまった声。

 手で顔を覆っているものの、歪んだ口元が丸見えであった。


「…………たしも…」


「ん?どうしたのバービィ?」



「私もお二人の事大好きですよおおおおおお!!!!」


 赤く火照る顔に満面の笑みを浮かべて、愛する主であるルニーとレニーの頭を思い切りモフモフするバーベノン。親バカではないが、世話を担当する身としての似たような現象だろう。


「にゃー、バービィ、やめるのだぁ!」


「わふわふ、やめてぇ!」


 拒否を言葉で示しはするが、いやそうな雰囲気の全く感じられない二人の顔からはかまってもらえることへの嬉しさのようなものが滲み出ている。

 だが、


「バービィ、失礼なことをするんじゃない…」


 彼女の行動に呆れるクローニア。まさに彼の言う通りである。



「もう…その当たりにしておいたらどう? せっかくの朝ごはんが冷めちゃうわよ?」


 こちらも呆れた様子を見せる主アスタロイド。忘れてはいけないが、これから朝食を摂ろうとしていたところであった。全員集まったのに会話が弾んでしまったせいで朝食が運ばれてくるまで時間がかかるのはよくあることであった。


「フゥ……失礼しました…」


 まるで何かしらの成分を補給した後のようにうっとりした顔のバービィが呟く。反省の色は全く感じられない。先と比べて顔がテカテカしている気がするが、多分気のせいだろう。


「それじゃあ、ターニャ?」


「了解しました。皆さま、少々お待ちくださいね?」


 恭しく首を垂れ、穏やかな表情で部屋から退出するターナルミア。準備してある朝食を取りにいってくれているのだろう。おそらくすぐ帰ってくると思う。

 しかし、そんな少しの間も待てない子が若干二名、この部屋にはいた。


「まだかなまだかな! あたしおなかすいた!」


「今日の朝ごはんはなんだのだー!」


 机をバンバン叩いて催促する。そんなことをしても早く来るわけではあるまいに。


「…クアムサラダ、とかじゃ、ないかな?」


「む、クアムサラダぁ? それミー(ねえ)が食べたいだけじゃーん!」


「え、! そ、そんなこと、えへへ…」


 いままで穏やかに皆の様子を見守るだけだったミナーヴァが、ここに来て初めて会話に参加した。先程の照れからもとれるように、それほど「クアムサラダ」が好きなのだろう。

 と、


「くんくん。おお、いい匂いがしてきたのだ!」


 カラカラと鳴る台車の車輪の音と、誰かの靴音が廊下を響かせ、部屋にもかすかに聞こえてきた。しかし、それより早く匂いを嗅ぎ分けたレニウマ。よほどお腹がすいていたのだろう。


「くんくん。この匂いは…ハッ、クアムだ!」


「…!」


 食材を嗅ぎ分けたルニルダ、それに反応したミナーヴァ。何とも分かりやすい子である。



「…お待たせしました、皆様」


 そのまま扉が開き、三人分の食事を乗せたワゴンが計二台部屋へ入ってくる。瞬間、幼い双子が嗅ぎとっていたのであろう、朝ごはんのいい匂いが部屋中を包み込む。この匂いだけで空腹感が増す勢いである。


 ターナルミアと、もう一人朝食を運んできたコック帽を被るメイドによってテーブルの上に食事が並べられてゆく。


「「わああああぁぁぁぁ!!!」」


 他のものと比べ可愛らしいデザインの食器に、姉弟や母親と同じだけの量を盛られているルニルダとレニウマが、今日も今日とておいしそうな食事を前に感激の声を漏らしていた。キラキラ光る目が本当にかわいい。うん、かわいい。


「じゃあ!」


 その目のままルニルダがアスタロイドの方に顔を向ける。早く食べたいということが十二分に伝わってくる。


「はいはい…」


 その声に合わせて、席に座る全員が合掌する。そして、



「「グラティーアス(ユーティエル)ユーティエル(様に感謝を)!!! 」」



 一宗教としてのしきたり、信者を救う神への感謝。食事という行為は「生」の循環における重要なもの。最大限の感謝を、その言葉に乗せて贈る。

 これが、この家族を法王家として広まる『ユーティエル教』の最低限のマナーである。


 そしてそれに答える声が、ひとつ。




 ――――はい、どういたしましてっ



(フフフ……毎回ちゃんと返事はするのね)




 アスタロイドの脳内のみでのみ認識される”声”。所謂、神「ユーティエルクロフト」は彼等彼女等からの感謝を一心に受け止める。



「んうっまあああぁぁぁい!」


 感嘆の声を上げる双子の姉。その喜ぶ顔を見て、更ににこやかになるのはコック帽のメイド、料理長と言ったことろか。皆の満足そうな顔に幸せを感じている様子である。

 他のもの、特にミナーヴァ等は、大好物であるクアムの味を口の中でめいっぱい頬張っている。


 そんな和やかな空気に、密談、もとい会話するものが二人。



 ――――君たちの声は他の人たちに比べてよく聞こえるからね。やっぱり返事はしたくなるものさ



(それなら私に対してだけじゃなく、この子たちにも答えてあげたらいいんじゃない?)



 ――――いや、僕は極力君以外に勝手に話しかけたりはしない様にしてるからね。いきなり頭の中に声が響いても怖いだろう?



(…何をいまさら言ってるのよ。それに、私は特別、みたいな言い方ね?)



 ――――ハァ……茶化さないでもらいたいな…



(フフ…ごめんなさいね。私はあなたの巫女ではないものね)



 ユーティエルのことを信仰する者たちは決して少なくはない。しかしその中でも彼女等家族は様々な意味で距離が近い存在であるため、感謝の声には答えたくなる。と言うのが、『神』という人間を超越した存在である彼が人間らしいと言われる所以でもある。



(それで、『器』についての話、だったわね……)


 家族たちの入室により中断していた問題について、問答を再開する。


(私の中で結論は決まっているわ)



 ――――ほう、と言うと?



(よく聞いててね?)


 アスタロイドは閉じていた目を開け、スプーンのような食器を置き、食卓に着く全員に目を向ける。



「ねえ、ウェルサ、ミーネ、フィル、ルニー、レニー。今日はちょっとね、お話があるの」



「…?」


「ほむ?」


あんあのら(なんなのだ)?」


 双子はそれぞれ声を放ち、その他もすべてこちらに目を向ける。


「…アスティ様」


「いいわ、ターニャ。あなた達にも聞いてほしいお話でもあるのよね」


「…はい」


 退出の指示を伺ったターナルミアと、それを留めるアスタロイド。



「……あなた達」



 これが、アスタロイドの用意した”彼女”と呼ばれる存在への、そしてユーティエルクロフトへの、意趣返し、そして答えである。







「――――”ペット”って、欲しいとは、思わない?」


二週間振りの更新は、「幕間」というにはちょっと意味の大きい、今までとは違う場所でのお話でした。


名前だけと言うのもふくめたら、総勢14(単位はおいておきます)の新キャラですよ!

この家族はこの先、かなり後に再登場する予定ですので、名前は今覚えなくても結構だと思います。

ただ、確実にストーリーに深く関わってくるので覚えていて損は...ない...かな?


ちなみに「グラティーアスユーティエル」という言葉ですが、ご察しの通り「いただきます」に相当する言葉です。

設定上こういうのを入れておいた方がいいかなと思って考えたのですが、単純にラテン語ですね、はい。

確かハ○ルにもこんなんあったような...

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