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遥か彼方より、拝啓、お務め先へ  作者: 凍山氷河
第一章 流れ着いた、その先の物語
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第一章3  「流者の方舟」

新年あけましておめでとうございます、氷河です。

今年もぼちぼち書いていくので是非読んでやってください。


いやいやいや、サボってました、イェイ。

多分待ってた人なんていないだろうから反省はしないぜッ((


P.S.ネトゲに復帰したらハマりました。


※2017/1/1 本文、一部修正しました。


 コツン、コツン、と4人分の足音が、静かな廊下に響きわたる。


 無機質で真っすぐに伸びる廊下であるから、その状態は何も間違ってはいない。だが、俺の視界に映るものから考えれば、それは大変不自然なことである。

 右側が白い、部屋と同じような壁であるのに対し、左側には、まるでいつもの俺たちのような、生活感の溢れる光景が広がっているのだ。


 部屋内の壁の一部に映し出されている本か何かのデータを読んでいる者達、ルームメイトと昔ながらのアナログなゲーム――――ただしアナログとは言ってない――――をしている者達、暇をもてあそぶように話し合い、笑いあうお気楽な者達。果てには筋トレをやってる奴なんかもいる。しかしそうであるのであれば、人の声の全くしない、靴の音のみが響く廊下などありえない。

 この不自然が、ここ拘置所の、そしてそこを管理する看守たちにとっての、ごく自然なのである。



 ――――俺たちの部屋も、生活も、こんな風に監視されていたのか…。



 わかってはいたし、事実、この光景も何度も目にした記憶がある。日光に当たりに行く等で部屋を出ることは、よくあることなのだ。しかし、やはり実際に見てみると、この施設の本当の存在理由を、実態を窺い知れるというものだ。


 理由は重々理解している。してはいるが、やはり気持ちの悪いものである。



 ――――だから早くここを出たいんだ…。



 そう思っている俺からしてみれば、今日という日は、ある意味待ちに待った日、ということになる。




=====================================




 非常に今更ではあるが、『流刑』についての説明をしよう。



 『流刑(るけい)』。それは我が国日本における、最も重い刑罰である。

 大昔に存在した「死刑」に次ぐ「島流し」「流刑」という刑を由来とする。「死刑」についての問題点が議論され、廃止されたと同時に、それに代わる刑として導入されたのが現代の『流刑』である。


 具体的な内容を説明するには、まず『月の扉』について話さねばなるまい。



 『月の扉』。この呼び方は、世間での一般的なもの、あくまで便宜上のものである。正式な名前は、未だに定められてはいない。

 そのさっぱり意味の分からないような通称の由来は、詳細の不透明さにあるだろう。


 初めて発見されたのは200年以上も昔の話になる。月の表面に突如現れた次元の歪み。

 周期的に現れ、消滅するそれは、現代の発展した科学技術でも真相を解明することは叶わなかった。

 発見当初は、月面に小さいヒビのようなものが数分間現れるのみだったが、現在では月の表面が抉り取られるまで肥大化し、顕現時間も数日にまで拡大している。


 その次元の歪みは、所謂ワームホールのようなものとなっているのか、触れた物質は粒子化、実験で取り付けられた発信機すら、座標を乱しながら制御範囲外で見失ってしまう。それほど、遠く、果てしないところまで飛ばされてしまうのではないか、と言う仮説が立てられている。

 しかし、これらはあくまで可能性の範疇を抜け出せていない推論なのだ。



 そして『流刑』とは、この『月の扉』の真相に迫るための、これからの更なる宇宙進出の糧とする為の、ある種の実験なのである。


 極めて重罪であるとの判決を下されたものを、『月の扉』を介し、その先の未知の世界に送る。送り出すためのポッドの内部には、簡易的な観測器や発信機、通信機が備え付けてあり、搭乗する2名の受刑者が各々の判断により、その先の探索を進める。


 ポッドの操縦については、両者の脳からの指令伝達により、ある程度細かく操作できるように設計されている。なので、惑星等を見つけたら探索するもよし、地球への経路を見つけ、帰還を目指すもよし。その後の行動には自由が与えられている。


 このように『流刑』とは、住民に害を為すと思われる者に新たに与えられる、地球の未来と更なる発展の為に必要な、極めて重要な任務、労役なのである……。




=====================================




「以上が、『流刑』に関する予備的説明だ。これらを踏まえ、今からこいつを見せてやる」


 薄暗く、仄かに青い光が灯るのみの部屋。否、部屋というより、まるで円柱状の部屋を囲む長い廊下のような場所である。現在のところ、壁に阻まれているので予想の範疇を抜けることはないが、壁面のカーブの緩やかさから推測するに、相当大きな空間が、壁の向こうには広がっているのだろう。


 大方何があるかなんて予想できているが。


 そして、ここで先程までアナウンスによる、『流刑』に関する建前だらけの説明を聞いていた。突っ込みどころが多すぎて呆れるほどだった。しかし、わざわざ意見することもない。単純に興味がないのか、既に暗黙のルールと化しているのか、それを口にする馬鹿も周りにいない。


 が、



「…………ムムム」



 さっきから、俺の左の方、何方とは逆の方向に正体不明の威圧を感じていた。怒りを必死に我慢しているような、そんな気配だ。ちょっと可愛らしい憤りの声も漏れてはいたが。

 あくまで自分たちは国の道具。そう言われているのと同じである訳なのだから、少なからず腹が立つ奴はいるのだろう。爆発しないでくれることを祈るが。

 しかしどちらにせよ、そういう結果になるような行動をとったのは自分なのだ。ここで腹を立てるのは完全に筋違いなんだよな……。



「おお、遂に本物が拝めるのですね…!」


 小声ではあるが、明らかに興奮しているのが伝わる様子で何方が吐露する。いろんなことに興味の尽きない何方だが、まさかこんなものまでが対象だとは。流石に驚きだ。


「…浅江、とりあえず興奮を抑えろ」


 少し離れた場所、俺たちの列の後ろ側から看守の一人、俺たちの部屋の担当でもあるあの人が何方を咎める。看守にまで呆れらてるぞ。



 と、瞬間、その見ていた光景が一変する。

 暗かった部屋には、徐々に青白い光が入り込む。部屋内の明るさが急変した為に、俺の目はそれにすぐに慣れることができず、目を薄く閉じてしまった。

 しばらくして目を開けたその先にあったのは、



「ぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」



 俺が正しくその全貌を確認するよりも早く、何方が声を上げていた。

 しかし、そんな奴はお前1人だぞ。恥ずかしくないのか。


 ピッ


 そんな馬鹿な囚人に素早く対応する看守。リストスーツの機能により、何方の口周りを息のできる程度に締め上げる。流石、やっぱり慣れているな、この人。


(ンッ!ンンンンッ!!!)


 と言っているようだが、スーツはその呻き声さえも吸収して、彼を強制的に黙らせる。体だけがモゾモゾと蠢いて、透明な壁に張り付いている。まるで芋虫みたいだ。


 おそらく看守はこうなることは予想していたのだろうが、少々出遅れてしまったようだ。何方は看守の上を行っていたのかもしれない。



 と、どうでもいいことに思考を取られてしまったが、主役はこの目の前の巨大な部屋、そしてそこに存在する物体だ。


 恐らく俺が知る中で最も大きい部屋。そんな部屋を埋め尽くすようなそれは、海を泳ぐ青い軟体動物を連想させるフォルムをしている。色を度外視すれば、植物ともとれるかもしれない。

 縦長に見える本体の頂点に位置するのは、まるで「ここが(コア)だよ!」とでも言いたげな、青いエネルギーの塊を包み込む、白く厚い皮膜の心臓部。それは本当に生物の『心臓』のように、これまた青い管を本体中に張り巡らせている。コイツに思考する『脳』があるとすればおそらくここだろう。

 そしてそこから真下に延びる太い支柱、『茎』とでも言うべきか。その側面の至る所から枝分かれしている先に一つ一つ付くのは、総勢30個ほどの丸い『実』。これは確信をもって言える。あれが俺たちを収容する部分だ。

 更に、その本体部を覆うのは長く分厚い4本の『足』。例の心臓部から延びて、部屋の底に埋まっている所、さらに血管のような管が底から心臓部へ光を伝えているさま、これこそ植物の『根』を想像させる。


 無機質で非生物的なデザインの多いこの世の中で、とても珍しい程に生き物を連想させる見た目をしていた。

 世に出回っていないほどの技術を総動員させるほど、これは国にとって重要なものである。そう、まざまざと見せつけられているようだ。


 もうハッキリとわかるが、コイツは俺たちを追放(おく)るための、所謂『箱舟』なのである。



「これが例の『流者の方舟(アークヴィスタ)』?ハッ、笑わせるんじゃないわよ…」


 聞き取れるかどうかというくらいの囁き声は、俺の真横、左側から聞こえてきた。そう、例の激おこ女だ。


「この程度の技術力でこの姫折冬那(ひめおりとうな)を追放しようだなんて、この国も考えが甘いわね…」


「そもそもお嬢を追放しようというのがお門違いなんだ。お嬢が行きたいというならまだしも、拒否するのに耳を傾けることすらしないだなんて、国はどうかしてるぜ」


 俺の左の姫折冬那(ひめおりとうな)と名乗る、淑やかで、しかし強気そうな女性。そして、そのまた左のガタイのよく、男勝りな口調の取り巻きな感じの女性。まあ意外と女性。もしや、



 ――――こいつらお花畑か?



 取り巻きの「お嬢」という呼び方といい、怒っているものの端正な作りの崩れない綺麗な顔立ち。そしてこの不遜、と言うより世間知らずな態度。これはいいとこのお嬢様の典型だろう。

 それにさっきの発言。もしかしたら、ちょっと前に何方の話していた「内乱を起こしたお嬢様」という奴等なのではないだろうか。タイミング的にも、会話の内容的にも、その可能性は高そうだ。


 こういう奴等とはお近づきにはなりたくないものだな。





「ねえ、あなたはどう思うの?」



 …?


 チラとそいつを見ると、なんとその綺麗な怒り顔は俺の方を向いていて、


「いいから答えなさい」



 ――――ハァ?



「私たちの会話、聞こえていたのでしょう?勿論、私の意見に賛同よね?」


 どうやらフラグを建ててしまったようです。乙です。本当に、こういう面倒な奴を相手するのは俺の苦手分野なのだが…。


 面倒だし、もういっそ言ってしまえばいいかな。


「お前な、その無駄な自信と勇気、それから阿保丸出しな思想はどこから溢れ出てくるんだ?」


「…………」


 お、なんか黙ったぞ。ようやく自分の不肖さに気が付いたのだろうか?





「あなた、死刑ね」





 この日俺は、なんだかよくわからん奴に死刑宣告されたのであった。


『箱舟』で運ぶね!!!



...。

すみません、許してくださいなんでもしまs

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