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プロローグ 「この時を、待っていた」

初めまして、氷河と申します。


突然やりたくなって、突然書いてみました。

設定の緩さや更新の遅さ等はご了承下さい。


拙く、読みづらい文章ではあると思いますが、徐々に頑張っていくので応援してやってください。


※2017/2/19 本文、修正しました。




 ――――この部屋は、落ち着かないな



 青年は思う。ただ、意味もなく考える。


 あまりにも長い間待たされていた為、あやうく意識が飛んでしまいそうになっていた。どうにかそれを手繰り寄せるように、とりとめもない思考を巡らせる。



 ――――今更何をやったところで、何も変わんねえのにな……



 結果は解りきっている、と。今やっていることは全てが無駄なことだ、と。それが彼の、現在の認識であった。



 彼がいるのはとある"部屋"。とても広い空間である。本来から一人用の部屋として作られたであろうが、それにしては無駄に広い。

 彼の人生の殆どを過ごしてきた借家の部屋よりも、数ヶ月職場の仲間と暮らしていた、未だに馴染まなかった寮の部屋よりも、ずっと広く、しかし圧迫感に包まれる部屋。


 無機質な白い壁。一切の不審な動きも見逃すまいと、天井や壁に大量に設置された白の小型監視カメラ。その他、多くない設置物も皆白い。

 つまりそこは、不自然な程に白い部屋であった。


 しかし、その不自然は意図的なものであるのを彼は知っている。

 中にいる人間の心理状態を読み取り、最も適切で話しやすい環境にするための技術。現代の素晴らしい科学の結晶だ。


 しかしその小さな努力も、彼にとっては……



 ――――無意味、なんだよ……




 『始まり』『圧迫』の印象を与える白は、緊張感を持つことが求められるこの場に最も相応しい色彩であると言える。

 その色のまま一切の変化がないというのは、彼が初めから無関心を、無感情を貫いていたことの証左であろうか。


 そして、その部屋の中央。丁度監視カメラが目を向ける先の、柵に囲まれた円いお立ち台。一人用だと考えると十分すぎる大きさのそこに、彼は、

 代々城彼方(よよぎかなた)は拘束され、まさに相手側が指示を仰ぐのを待ち続けていた。


 薄い灰色の指先まで隠れるつなぎを着、腕を前で交差する形に服に縛り付けられている。

 "椅子"と称するには鈍角にきつすぎる、軽く曲げられただけの"板"のような物体に、足と体、首を縛られ一切動けないよう”磔”にされた姿。

 それはまさに『捕虜』、もしくは……



 『大罪人』のそれ、そのものであった。




「………では、判決を言い渡す」



「………」


 言葉を発することは無く、否、その権利はなく、目線のみで答えを待つ姿勢を示す。


 その白い壁の向こう側、何人いるか見当もつかないが、おそらく数名という表現を超えるであろう数の人間。長い時間、今の格好のままで言葉を交わした相手。拘束されるほどの『大罪人』を裁く、国の重要な官職を担う者たち。

 その中の代表の、低く、落ち着いた、しかし耳に入れた相手を圧倒するような声音が今、広い部屋に響く。


 まるで白い壁が、この部屋自体が声を発しているかのように、中にいる人間に、この場合は彼一人に向けて、決して聞き逃さないよう低く、重く、彼に……



「代々城彼方被告、第一級犯罪により…」



 彼は……





「、、、『流刑』に処す」





 現代日本で、最も重い刑を言い渡されたのであった。

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