トラバサミ
一号は田吾作
休養を取りすっかりリフレッシュしたジョンは珍しくエリーに起こされる前に起き上がる『早く稼がねば』、何せ出費の予定だけがどんどん増えて行くのだ、おちおち寝てはいられない!
「お早いですね!マスター、お加減はいかがですか?」
「ああ!お早う、エリー、大丈夫だ、絶好調って感じだよ」
「それは何よりです!では歯を磨いて朝食を・・・」
朝食を済ませ畑に出るジョンと田吾作、ジョンは芋の様子を見ていると何やら田吾作が騒いでいる
「どうした田吾作?朝っぱらから何騒いでんだ」
「ああ!マスター、こいつが私に水をかけたんです!」
見ると田吾作の足元が濡れている、どうやら水撒きアンドロイドにかけられたようだ
「ちょっとかかっただけだろ!気にするなよ」
「私が水が苦手なのを知ってて!何てことを言うんです」
「まぁまぁ!拭いてやるから怒るなよ」
「いえ!マスター、こいつは生意気です、ガツンと言ってやらねば」
「何を言うんだよ!こいつしゃべれねぇぞ」
「むむう~!マスター、こいつに注意するために言語機能を搭載して下さい」
「嫌だよっ!話をする時はお前に言うから、先輩として寛大な気持ちでゆるしてやれ!」
「仕方ないですね!先輩として許しましょう」
「おう!先輩としてこいつのミスはお前がかばってやれよ」
単純アンドロイド田吾作はうれし気に
「今度からは気を付けるように、わかりましたね」
などと話せないアンドロイドに語り掛けている、本人が楽し気なのでまぁ良いのだが・・・
田吾作の気分も良くなった処で二人は隠し畑へ
種まきを始める二人は作業をしながら会話をしている
「なぁ!田吾作、トラバサミってどの辺に仕掛けたんだ?」
「エリー様の指示でジャングルの中に散らばって設置してますが」
「だからどの辺に仕掛けたんだよ?後で見に行ってみるから」
「確か・・・あの当たり?」
「なんで疑問形なんだ?まさか場所忘れてないだろうな?」
「ははは!大体だったら覚えてますよ」
「大体ってなんだよ!印は?印とか付けてるんだろうな」
「印なんかつけたら野生動物が逃げてしまうでしょ!マスター」
「そうですね!逃げちゃいますね!そして見に行ったらこっちが足挟まれちゃいますね」
「あ!・・・・どうしましょう?マスター」
その後どの辺に仕掛けたのか田吾作に詳しく聞き取り調査した結果
「要するに全く、全然、すっかり忘れたんだな!」(怒)
「とにかく種まき終わらすぞ」
そして種まきの終わった二人はジャングルを眺めつつ途方にくれる
「どうするかなぁ!奥行何メートルぐらいにあるんだ?」
「さぁ~!奥の方ですよ、きっと」
「もう怒る気力もねえわ!田吾作、お前探して来い、見つけたらこの赤い布を罠の近くの枝に巻き付けて来い」
「何かあったらどうするんですか?危険です、マスター行ってきて下さい」
「お前なら挟まれても大丈夫なんだよ!俺が挟まったら怪我するだろうが」(怒)
結局田吾作が探しに行く事に、ジャングルに入っていく田吾作がジョンに話しかける
「マスター!そこにいてますか?何か言って下さい~」
「ああ!ここにいるぜ、早く探せよ」
「もう少し奥まで行ってみますから!声を出してて下さい」
「いいから!行けよ、トイレを怖がる子供か、お前は」
「ああっ!ありました、ありましたよ、マスター!」
「おう!よくやった、印付けて次を探してくれ」
こうして次々探していく田吾作だが、最後の一つが見つからない
「マスター!もうあきらめましょう」
「駄目だって!俺がジャングル入れなくなるだろ!」
「そうは言っても見つからないもっ!ああぁ~!」
「どうした?田吾作~」
「マスター!助けて下さい」
「どうしたってんだ?何があった?田吾作~」
「マスター!挟まれて動けません、助けて下さい」
トラバサミに足を挟まれてしまった田吾作がジョンに助けを求める
「挟まれたって何にだよ?何かいるのか?」
「いいから来てください!動けませんから」
「いやいや!行けねえよっ、危ないだろ、何がいるんだ?」
「大丈夫ですって!早く助けて下さい」
「お前が危ないのに!俺が無事な訳ないだろ」
しばらくジャングルの中と外での言いあい、もとい罵り合いが続く
「全く!罠に掛かったって言えば早かったのに、何に挟まれたのか悩んだぜ~」
「挟まれたと言えば直ぐに解るでしょうに!全くマスターときたら」
ブツブツ言いながらもトラバサミを外してやろうとするジョンだが力が強く外れない
「ダメだ!硬って~!どうやって外すんだよ、これ」
「もっと力一杯引っ張って下さい!下側をグーっと」
一生懸命力を入れているのだがうんともすんともいわないトラバサミ!おまけに田吾作にポンポンあーだこーだと言われ腹が立ってきたジョンは
「うっせ~なっ!お前がやれよ、お前の方が力があるんだから」(怒)
「ええ~!そんな~、マスター、・・・あれっ、取れました、マスター」
田吾作の怪力で閉じていた歯を開くとあっさり外れたトラバサミ、おまけに流石にアンドロイドだけあり挟まれた足元も擦り傷がついた程度である
「え~とっ!帰るか、田吾作・・・」
「そうですね!マスター、帰りましょう」
何事もなかったように家に帰る二人は帰ってエリーに作業報告をしている時に最後のトラバサミに目印を付けるのを忘れたことに気付き、翌日再び最後のトラバサミを探しに行くことになる
新兵器登場です