エンジニア・ジョンの実力
出張です
ジョンが何かを感じ、そして何かを誓った日の二日後、農作業中の
二人の頭上から一台のトラックが舞い降りてきた
「どうも、こうしてお会いするのは初めてになりますね、全農の
ヤクショ・ワーキンです、初めまして」
そう言えばいつぞやモニター越しに見た男だ
「そうですね!初めましてジョン・ニシガワラです」
「私は高性能アンドロイドの田吾作です」
「なにしゃしゃり出て自己紹介初めてんだよ、お前のどの辺が
高性能なんだよ、凡庸のくせに」
「ははは!愉快なアンドロイドですね」
「早速ですが!これがお約束していた軽トラです、如何ですか?」
「おおっ!これ本当に貰えるの?」
「いえっ!差し上げるわけでは・・(汗)お貸しするだけです」
「そっか!借りるだけね、壊したら弁償とか?」
「いえ、それは大丈夫ですが」
「オッケー!了解です、ありがとう」
「それでいつ頃修理にお越し頂けますでしょうか?」
ヤクショの伺うような問いかけにエリーなら条件を引き出す
ために駆け引きする処だがジョンは先日の移民農業者の声を
聞いていたので即答する
「今からでも行きましょうか?」
「今からですか!有難うございます、助かります、しかし
こちらも用意がありますので出来れば明日から・・・」
「そうですよね!了解です、明日お伺いしますよ」
「有難うございます!それでは明日全農支部の会館でお待ち
してますので私を訪ねて下さい、お願いします」
そう言うともう一台来ていた車に乗りヤクショは空へと
飛び立ち帰っていった
「マスター!あっちの車の方がかっこよいですね」
田吾作の一言で車を変えてもらえないかなぁ~と余計な事を
考えるジョンであった
その日は農作業と翌日の工具の用意などで過ぎ翌日
早朝早くに起こされたジョンは軽トラに乗り込み全農支部へと旅立つ
流石軽トラとはいえ車だ、全農支部会館に暗いうちについてしまった
、仕方がないのでかい会館の正面ドアの横で少し早い朝食をとって
いると
「なっ!何なんだお前は?なんて物食ってやがるんだ、こいつは」
おそらく早出の職員なのだろう一人の男が驚愕のまなざしで
ジョンを睨み付けている、二度と人前でレーションは食わないと
誓って二日と半日にして誓いはやぶられた
「ああ!すいません、早く着き過ぎちゃったんで朝食食べてたんです」
「ちょっ!朝食だと、本気で言ってるのか、何だって朝っぱらから」
「ヤクショさんに此処に来るよう言われたんですけど」
ジョンは少しムッとして答える
「ヤクショに何の怨みが有るんだ!お前は」
「いやっ!呼ばれただけですって」
この噛み合うようで噛み合わない会話はヤクショが出勤して来るまで
続けられた、ジョンはもうレーションを道端では食わないと誓った。
「どうしたんです?フェルナンデス部長、そんな大声出して」
「おお!ワーキン早いな、こいつを知っているか?」
「っ?ジョンさんっ!来てくれたんですね、有難う御座います」
「ああ!ヤクショさん、助かったよ、この人に説明してよ」
「部長!この人は先日説明したジョン・ニシガワラさんです」
「この男が?いや、そうか、すまん!俺は【フェルナンデス・
ギブソン】こいつの上司だ、よく来てくれた、ジョン」
そういうと右手をだして握手を求められる、さっき迄不審人物で
あったのがいきなり友好的になるあたり全農は余程困っていた様だ
握手を交わし早速農機材の収められた倉庫へと案内される
「こっちに在るのが故障した機械だ!どうだ、直せるか?」
倉庫内には100台程のトラクターが並べられているがその半数
以上が修理待ち、稼働中の機械は3、40パーセントか
「ちょっと見てみます!」
ジョンが機械をチェックしようと電源を入れると激しいエラー音
が倉庫内に響き渡る、運転席のメインモニターに不良箇所が
映し出され故障箇所が一目瞭然である
『これは便利だな』と思い故障箇所をチェックすると直ぐに
配線の焦げ付いたものが見つかる
「これですね!配線がショートしてます」
そう言って配線をそこらに有った電線で繋げるとエラー音が止まり
機械が動き始める
次の機械も電源を入れると不良箇所が映し出され直ぐに直った
その次の機械は耕作する歯が折れており直せなかったがモーター
の焼き付いた機械の歯を移植、所謂ニコイチで稼働させていく
「今迄メーカーのサービスマンが匙を投げていた機械が・・・」
「ぶっ!部長、これで農家さん達に機械を回せますね!」
何故かおっさん二人が抱き合って泣いている
「お前らなにをしてるんだ!勝手に機械に触れるな!」
そこに突然怒声が響き男が倉庫内に入って来た
「工場長さん!すみません、勝手に入らせてもらって」
「フェルナンデスさん!困りますよ、勝手な事をされたら」
「すみません!でも機械が直ったんですよ」
「はぁ~!こいつらは部品が届かないと直りませんよ」
「いいえ!こちらのジョン君が直してくれたんですよ」
「何ですって!おい!お前、勝手な事をするんじゃない!」
「いや!大して壊れてませんでしたし」
工場長と呼ばれた男は修理した機械を見ながら
「此処に有る機械は全部部品のアッセン交換が必要なんだ!」
「ちょっと配線がショートした程度ですよ」
「素人が口を挟むな!こっちはメーカーのマニュアルどうりの
仕事をしてるんだ、勝手な事をやって事故でも起きたらお前
どう保証するんだ!ああぁ~!」
どうやらこの男がメーカーのサービスマンらしい、
まるでヤクザのようだが
「いいか!メーカーじゃ、こういった故障はアッセン交換って
決めているんだ、此処にマニュアルがある」
「まぁまぁ!落ち着いて工場長さん」
「フェルナンデスさん!あんたいくらお客様だと言っても
そう勝手な事をされたらうちはもうサービス出来ないよ」
「いや!それは困る」
「それじゃ~!出てってくれ!出て行け~!」
凄い剣幕で倉庫を追い出された三人は会館の会議室へ
今後の事を話し合うことにした。
次回も出張続きます