プロローグ1
以前より題材にしたかった農業の話です、専門知識など無いので大雑把な架空物です、大らかな気持ちで読んで頂ければ・・・・
朽ちた機械類が雑多に放置された広場で錆び付いた車のボンネットの上に
腰を下ろした男は背負い袋から箱のような物を取り出した。
ガサゴソ箱を開けると、「あっ、芋があるじゃないか~」と嬉しそうな声が
あがる、どう見ても貧相な弁当に感激している男はどうやらお昼ご飯を
食べるようだ。
男が弁当をその胃袋に掻き込んでいると、
「おう!JJ、 ここにいたのか、随分探したぜぇ~」
恰幅の良い男が片手を上げ近づいてくる。
「あぁ!ベネディクトさん、何か用事ですか?」
返事を返しながら残りの弁当を掻き込むとボンネットから飛び降り
ベネディクトに近寄る男。
ちなみにこの男、名は【ジョン・ニシガワラ】だが皆にはいつもジャンク
あさりをしている
ジョンでJJとみっともなくもかっこ良い呼び名で呼ばれている。
「ちょいとお前さんに話が有ってな、それよりお前良くそんな不味いもん
旨そうに食えるなぁ」
ベネディクトが指摘した食べ物は軍隊レーション、安いが不味い通称生きる
為の食い物と呼ばれるおそらく軍横流し物、価格約300キーンの代物である。
「いやぁ~、芋が入ってたんですよ、今回は当たりですよ、当たり!」
「芋好きなのな」呆れるような眼差しで応えるベネディクト
「それより話しってなんですか?」ベネディクトの眼差しにダメージを
受けたジョンは話題を逸らそうとするのだがその顔は赤く染まっていた。
「いつもお前さんには世話になってるからよ、プレゼントが有るんだ。
dー2地区に有るんだが今から見に行くか?」
「dー2ってえらく遠いですけど物は何ですか?、まぁ行きますけど」
「まぁ見てのお楽しみってな、さっそくいこうぜ」
dー2地区、ここはスクラップ置き場の政府系廃棄物の置き場である、
政府より廃棄される物資には機密等一般には流出させ難いものがあるので
一般の廃棄物とは隔離された場所に保管され一般人には立ち入り禁止区域
なのだが所詮廃棄物、セキュリティーも甘々でスクラップ場の従業員
(ベネディクト)がいれば立ち入る事は可能である。
そのdー2地区で「えーと!こっちだ、先月入ってきた船なんだがどうも
密輸に失敗して軍に拿捕された船らしい、船自体は損傷も激しく積荷も
空だったんでスクラップ物でうちに廻って来たんだが・・・・」
倉庫の一画のシートをめくると古臭いアンドロイドが現れる
「隠し部屋からこいつが出てきたんだ」
「フエェー!こいつはやったじゃん、見た感じ傷もないしまだ
動くんじゃない?」
「いや!うんともすんとも動かねぇ、まぁお前さんならちょちょいと
直せるだろう」
「そっか!んじゃ~いつも通りで・・・・」
「いやいや!プレゼントって言ったろ、やるよ、お前さんに」
「嘘っ!マジで?何かやばいの、これ?」
「感謝のしるしだって言ったろ、それにやばかないだろう、
こいつが積んであったって知られてないだろうしなっ!
いいから持って帰りな」
「ええぇ!悪いよう、掘り出し物だぜ、こいつ」
「いいんだ!それと話が有るから明日の晩うちに来てくれよ、
レーションよりも旨い物食わせてやるから」
「だから今日のは当たりだったんだって!」
「はいはい!判ったよ、それより明日7時位に来てくれよ」
ニヤニヤしながらベネディクトが呼びかけるがジョンはアンドロイドを
担ぎ上げながらヨタヨタしながら帰って行くのであった。
翌日ベネディクトの家で食卓を囲むのは4人、ジョンとベネディクト、
ベネディクトの嫁のリン、一人娘のアリーが豪勢な夕食を楽しんでいる。
楽しい夕食の時も過ぎアリーがお眠の時間がきた頃リンに連れられ
アリーは寝室へ
「お休みなさいパパ、JJ!」
「お休み!アリー」
「ありがとね!お休み、アリー、ご馳走様です!リンさん」
二人が出た食卓でジョンが声をおとしてベネディクトに話しかける
「あのアンドロイド壊れてたんじゃぁなかったぜ、
OSが入ってなかったんだ!」
要するに新品だぜ!っていうか型落ちだから新古品か」
「ほぉ~!道理でうんともすんとも動かね訳だ」
「だから結構高値で捌ける筈だからいつも通り今回も折半で・・・・」
「いんや!あれはお前さんにやるって言ってんだろ」
「だけどもよぉ・・・・」
そこにアリーを寝かし付けたリンが入って来て一言
「いいのよ!JJ、この人も言ってると思うんだけどもお世話に
なってるお返しなんだし」
「お世話って俺何にもしてないよ!今日だって飯御呼ばれしてさっ!
世話になってるの俺の方だし!」
「JJ!ちょっと俺の、いやうちの話を聞いてくれ」
そう言うとベネディクトは話し始めた
ベネディクト一家は元々農業で生計を立てていたのだがアリーが小さい頃に
大病を患ったこと、その病気を治療するには大金が必要だった事、
ベネディクトには年をとってからの子供であったので
何としてでも助けたかった事、リンはまだまだ若かったが!
そうこの夫婦は年の離れた夫婦である!
二人は家、農地、財産全てを処分しアリーの治療費を工面しアリーに
治療を受けさせた事、そしてアリーは助かったが一文無しの家族は
この街に流れ着きジョンと出会った、ベネディクトはスクラップ工場に
職を見つけたが親子3人生活するには苦しかったがジョンと始めた
アルバイトの副業で生活が成り立っていたのである
それはスクラップ置き場で働くベネディクトが修理できそうな物を
ジョンに教えるとそれをジョンが買取り修理し販売、その差額を二人で
折半する事で、ジョンには機械いじりとコンピュータまで扱える能力が
あったので可能なアルバイトであった。
「そうなんだ!アリー全然健康そうだから全くわからなかったよ」
「あぁ!もう完治したからな、だけどそん時はエリザ病って不治の
病みたいに言われてたんだぜ」
「エリザ病ネェ!聞いたことあるようなないような、
だけどアンドロイドはよう・・・・」
「まぁ待て!まだ話しの続きがあるんだ」
そしてベネディクトが話し出す、今の生活ではアルバイトをしても
ギリギリでやはり農業に未練がある事、最近見つかった居住可能惑星で
移住募集がある事、そして農業移住者には有利な条件であることを・・・
「この募集に一家で応募してみるつもりなんだ」
「マジかよ!ここを出て行っちまうんだ・・・・」
「おぅ!ってかお前さんも行かねえか?お前さんも出は農家なんだろ?
農家っていってもお前さんぐらい機械いじれたらかなり楽だぜ!」
このいきなりのベネディクトの誘いにジョンは考え込んだ、確かに俺は
農家の出だ!決して農業が嫌な訳じゃ~ないし、芋は好きだし・・・・
「おおっ!お前さんもその気になったかい?でもよく考えてな、
一生が決まるっていっても大袈裟なことじゃねえんだし、帰ってゆっくり
考えな!でもな!お前さんが行くんなら俺も楽しいや!
勿論リンにアリーも喜ぶだろうしな!」
「ああ!うん、帰ってゆっくり調べてみるよ、今日は有難う」
そう言ってジョンは家路につくのであった、考え事でフラフラしながら・・・
不定期連載します。
改行でおかしかった所を修正しました