biな彼女
瀬良先輩に彼氏が出来て数週間後、先輩は「受験が控えてるから」とぬかして、チア部を休みがちになっていた
「よっ!」
めずらしく先輩が来たなと思ったその日、先輩は客人をしたがえてやって来た
「助けて下さい!」
先輩とは違うクラスで一つ年上の慶くん…いや慶さんは、涙目でそう訴えた
「群れない感じが、かっこいいっていうか、男子にも女子にも気軽に接してるっていうか…」
「男らしくない僕にも話しかけてくれるっていうか…」
「早気さんが好きなんです。あぁ、もう…君好きなんです」
慶くんの顔が赤くなったり落ち込んだりする
「でも、恋愛対象が男性も女性もらしくて……でもってかなり女子に囲まれてて……数人の女子とキスしてる所を見てしまって……」
「でも、男子と付き合ってる事もあるって話を聞いてしまって」
「もう、日に日に気持ちがおさえられなくなって……告白したいんです! なんとか……」
『♂♀』
(みんなの頭はそれでいっぱい)
「りょ、両生類?!」
そして、千歳先輩が思わず叫ぶ
「ねぇ、みんな! 恋に性別は関係ないっていうじゃない!!」
「ね、手伝ってあげようよ!」
瀬良先輩がそうみんなに働きかける
「うんー、まぁそうねぇ」
千歳先輩が考え出す
「まぁ、慶くんだっけ? あなた何か…かわいいから私はいいわよ」
美並先輩が了解する
「まぁ、おんもしろそうだし、いっか!」
千歳先輩も了解する
「ありがとうございます! みなさん……」
慶さんが早くも泣きじゃくる
「ありがとう! みんな!!」
「応華も、だよね♪」
明るい笑顔で瀬良先輩はそう言う
(はい、はい……私の参加は自動認証ですよね…)
千歳先輩は言った
「でも、どうやって告白応援しよっか?」
「私に考えがあるの!」
瀬良先輩はそう言ってごにょごにょと説明しだした
「まず、美並は……こうして」
「千歳はね……」
私は逃れられない任務を待っていた
(私の協力は半強制だろうな……)
『コツ…コツ…コツ』
慶くんから聞いておいた教室へ美並先輩が歩いて行く
「…早気さんいます?」
美並先輩がそうたずねると教室の中がざわついた
『すご…キレー…』
『うわぁ…あの子見ろよ…タイプ』
ざわめきの中で返事がした
「……わたしだけど」
皆の視線を集めながら美並先輩がそちらへ歩いていく
「初めまして。ちょっといい?」
「何? てか誰」
早気さんは数名の女子に取り囲まれている
「いいから、付いてきて」
美並先輩は早気さんの手を引き教室を抜け出した
「ここならいいかしら…」
美並先輩は人気のない階段付近に早気さんを連れてきた
「なんの用?」
早気さんはちょっと不機嫌な感じで言った
「あなた付き合ってる人はいるの? 私はどう?」
美並先輩は唐突に質問した
「……は? なんでそんなこと。知りもしないのに」
「そうなんだけどあなた私を見て何とも思わない?」
「…意味わからないんだけど」
「だから異性として……同性としてどう? 魅力的かしら?」
早気さんは美並先輩を足からひと通り見ながら言った
「…まぁ、そこそこなんじゃない。だから何?」
「そ…そう。じゃ、これはどうかしら」
美並先輩はちょっとうろたえながら言った。
そして切り返した、早気さんを壁に押し寄せ顔を近づけて
「…わたしそういうの趣味じゃないの」
早気さんは一瞬ためらったが、顔をふいっと背けてしまった
「用がないなら帰るから」
そのまま美並先輩の手を払いのけて早気さんは行ってしまった
『…手強いわね』
そう呟く美並先輩と物陰に身をひそめて呟く瀬良さんだった。
教室へ戻ろうとする早気さんの前にまたもや男子制服を着た生徒が立ちふさがる
「やぁ」
「…? あんた誰?」
またも廊下の周りにいた生徒から歓声が上がる
『キャー! 見てあの人かっこよすぎ、あんな人いたっけ?』
早気さんはその生徒をお構いなしに教室に戻ろうとする
「ちょっと待ってよ、つれないな」
「…何なのよ。なんの用?! というか今日は何でこんなに知らないのに絡まれるの」
「まぁまぁ、そう怒らないで」
その生徒はそう言うと、グイっと早気さんの手を胸元に引き抱きよせた
「ごめんね。…怒った顔もかわいいけど」
頭を撫でながら囁く声
「……何すんのよ!!」
早気さんは生徒を突き飛ばし教室に掛けていった。
物陰に隠れていた私と瀬良先輩がその生徒に駆け寄る
「……あの、大丈夫ですか?」
「あぁ…うん。大丈夫だよ^^」
私は手を差し出してその生徒を引き起こした。階段の所にいた美並先輩もこちらへやってくる
「……あの、何なんですかこれ?」
私は瀬良先輩の作戦の意図がわからずに嘆きながら言った
「…というか、この人誰ですか?」
そして私はその生徒を指差しながら言った。
瀬良先輩があっけらかんと言う
「知らなかった? 千歳はね、髪を短くすると男になるのよ」
私)「エェーーーーッ!」
(なにこの美少年)
あの後、私達は慶くんを呼んで部室で作戦会議を開いていた。
瀬良先輩が話の口火を切る
「あのー、なに。早気さんだっけ? あの子、男も女も興味ないんじゃない?」
「…えっ、それってどういう事ですか」
慶くんが涙目で訴える
「…上手くいくように協力してくれるって言ったじゃないですかぁ!」
瀬良先輩が眉を下げながら言う
「まぁ、でも誰彼簡単に体を許すような女じゃないって事よ」
「もうあんたそのまま告白しちゃいなさい」
「えっ、いきなり告白って?! ど、どうするんですか」
慶くんはしどろもどろだ
「大丈夫よ、協力してあげるから。でも最後に想いを伝えるのはあなたよ」
慶くんはどうして良いか分からず俯いて涙目になっている
「早気さんの事が好きなんでしょう? なら考えなさい。あなたの気持ちを、言葉を」
翌日、私は授業が終わった後、早気さんの元へ駆けていた
「早気さん!」
教室から出て行く所に声をかける
「…何?」
早気さんの語尾が強い
「あの…昨日はすみませんでした。ご迷惑をおかけして……」
「…何のこと?」
「あの…変な人が2人来ましたよね? 覚えて……」
そう言いかける前に早気さんが喋り出す
「…あぁ。何? あんたもあの仲間?」
「そういうの困るんだよね、よく勘違いした輩が寄ってくるから」
「…いや、あの……」
早気さんはそう言うと、私の脇をすり抜けて行こうとする
「待ってください! あなたに話を聞いて欲しい人がいるんです!!」
「一緒に付いてきてください!」
私はそう言うと早気さんの手を引き何とか屋上まで連れて行った
「ここです!」
私は決められた通りに大声で言った
「あっ、来た来た……」
私達が来たことに気付いた先輩達が慶くんを置いて、屋上の隅に隠れる
「この先です。待ってる人がいますから、、行ってください!」
早気さんがドアを開き向かうのを見送ると、私はドアに耳を当て欹てている
(どうなるかな…><)
「あっ、」
早気さんが来てくれたことに気付き慶くんが声を出す。
それを見ていた先輩達が気づかれないようにヒソヒソ声で話している
千歳「…何で屋上なの?」
瀬良「告白といえば屋上じゃない」
「…慶じゃない? どうしたの、こんなとこに呼び出して」
「あっ…えっと、今日はですね……」
「…話したいことって何?」
「あー、はいその……」
慶くんは言い辛そうにもじもじしている
「……話が無いなら帰るけど」
それを見ていた瀬良先輩が苛立ち始める
瀬良「あー、もうじれったいな!」
美並「瀬良、やめなって!」
千歳先輩と美並先輩が今にも出て行こうとしている瀬良さんを止めている。揉み合っていると弾みで瀬良さんの体が飛び、頭がゴツンと地面に当たった
「あっ! 待ってください」
それと同時に慶くんが、帰ろうとしていた早良さんを呼び止める。
慌てて先輩達が瀬良さんを引きずり寄せ身を隠す
「あの、僕はどうしても伝えたいことがあるんです。でも…中々言えなくて」
早気さんはそれを聞いて、黙って次の言葉を待っている
「今日はそれをあなたに伝えます、伝えたいんですが……っ、早気さんは女性が好きなんですか?」
「……は? 何でそんな事聞くわけ?!」
「あの…ごめんなさい。でも僕が言うことで、困らせたくはないんです。もしそうなら僕は…」
慶くんは泣きそうになっている。早気さんが口を開いた
「……そうよ私はでも、女とか男とかそういうんじゃないの……」
「……どういうことですか?」
慶くんは半泣きで涙を堪えながら聴いている
「……どっちも好きていうか、その人が好きなの! あんたは言いふらさないと思うけど、それを知られて悪い風に言われたり言い寄ってくる奴もいたから」
「辛い目にあってきたんですね……」
慶くんは早良さんの話を聞き胸を痛めている。
それからぐっと顔を引き締めると、慶くんは口を開いた
「……僕はあなたのことが好きです。いつも凛としていて綺麗で、冷たそうに見えて実は優しい所とか。みんなに平等に接してくれて、僕なんかにも優しくしてくれて……話しかけてくれて嬉しかった」
「早気さんの恋愛のこと僕は正直よく分かりません。でも早気さんが辛いなら守ってあげたい。僕は早気さん自身がとにかく好きなんです」
「ごめんなさい、こんな形で告白してしまって。でも、これも迷惑なら聞かなかった事にして下さい……」
そう言って俯く慶くん。
暫しの静けさを破って早気さんが言った
「そんなこと聞いて嬉しくない奴なんかいない! 迷惑じゃないに決まってるでしょ」
ハッとして慶くんが顔を上げる。
早気さんは少し照れたように言った
「でもよく知らない人とは付き合わない主義なんだ…だからこれから考えてもいい?」
そう言って手を差し出した
「友達からよろしく」
「…はい、よろこんで」
慶くんも溢れる涙を抑えながら手を差し出した
「……! よかったですねぇえええ〜〜〜!!!!」
その結果を聞いた私は勢いよくドアを開けて屋上に飛び出した
『よかったねぇええええ〜〜〜〜!!!!』
それを聞いていた美並先輩と千歳先輩も出てきた。3人でワッショイと2人を祝い取り囲む
「あ、あんた!」
早気さんが美並先輩を見つけて言った
「あ、何かしら? あ、あれは私のせいじゃないわよ」
早気さんに迫ったことは自分のせいじゃないと言いたげだ
「やめて、僕が悪いんだ」
「告白の自信がなくて僕がみんなに協力を頼んだんだよ…」
慶くんは早気さんをなだめるように言った
「なっ、何でそんなこと。なによあれ、私は迫られて!」
「ごめん……でもあんなところ見ちゃったからゴニョゴニョ(女子とキスしてるとこ)」
慶くんは早気さんの耳に手を当てて喋っている
「……! あれは、向こうから突然! 迫られたのよ!!」
どうやらキスは誤解?だったようだ
「いや、でも本当」
『よかったね〜〜〜〜!!!!』
そう言って私達は告白の成功を喜びながら帰って行った
「……想いを伝えるのよーーーー!!」
それから暫くして瀬良さんが
頭を打ち付けたショックから目覚めた
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