入学式
私はユーナ グラント。グラント家の次女だ。今日の私は今日気分がいい。それは念願だった“魔法至上学園”に首席で合格できたからだ。今年は弟のゾルや他の魔帝の一族も入学しているのだ。そんな中、首席で合格出来たのだ。誇りに思って当然だろう。ちなみに、姉さんも首席で合格していたけど今年に比べれば他の魔帝の一族がいなかった分楽だったらしい。それはさておき、私は今日気分がいい。これから始まる入学式で新入生代表として壇上に立つのが待ち遠しい。
「ユーナ、新入生代表の挨拶はしっかりやりなさい。」
「頑張れよ、姉ちゃん。」
「分かっていますよ、姉さん、ゾル。」
私たちが話しているのを両親が微笑ましそうに眺めている。本当に優しい両親だと思う。
私たちは両親と別れ、闘技場の一階の生徒用の座席に向かった。保護者用は二階でガラス張りになっており、そこから見られるようになっている。式が始まるまでまだ少し時間がある。姉さんは学年が違うため近くにいないため、ゾルと話をして時間を潰していた。
式の始まりまで残り5分を切ったところで闘技場、1人の男子が入ってきた。普通なら気にもしないのだが、何となくその男子が気になった。髪は銀髪に金の瞳、身長は175程度だろうか。顔もかなり整っており人目を引き寄せる。だが、そんな理由では無いと思った。
「ッ!」
彼は私と目が合うと驚いたように目を見開いたが、すぐに納得したような顔になった。一体なんなんだろうか。
そんな事を考えていると、彼がこちらに歩いてきた。
「お久しぶりです。」
「えっと、すみません、どちら様でしょうか?」
彼の事を何となく知っている気がしたが、結局誰だか分からず訪ねてしまった。すると彼は「いえ、どうやら勘違いしたようです。」と言って、この場を離れた。だが、彼の後ろ姿は悲しそうだった。
俺が龍玉を受け継いでから5年経った。入学試験では筆記がダメダメだった。しょうがないだろう。5歳の時に家を追い出され、イレイズと会ってからはひたすら戦いの向上を目標にして来たのだから。まぁ、その結果戦闘のテストでは恐らく満点に近い点数を叩き出したはずだ。おかげで合格はしたが、どうやら学園では筆記の成績が悪ければ補習をしなければならないらしい。俺はしっかり勉強しようと決めた。
入学式の会場に入ると既にたくさんの人がいた。まぁ、俺がギリギリすぎたのだが。俺は周りの視線を受けながら空いている席を探していると、1人の女子と目が合った。俺の元妹のユーナだ。隣にはゾルもいる。何故ここにいるのかと思ったが、ユーナとゾルは俺と同い年だ。学園に入っても不思議じゃない。
「お久しぶりです。」
「えっと、すみません、どちら様でしょうか?」
どうやら、俺の事を覚えていないらしい。まぁ、見た目もだいぶ変わってしまったから仕方がないだろう。俺は、勘違いをした、ということにしてまた、空いている席を探した。いくら昔は憎んでいた奴でも、数年もすればイレイズと出会えた事もあり、許せたのだ。そんな相手に誰だか分からないと言われても本来なら傷つかないがずっとあの森にいた俺の久しぶりの知り合いだ。少しは傷つく。
式が始まったが暇だったので自分の中にある魔力を操って暇をつぶしていた。学園長の話が終わり新入生代表挨拶でユーナが壇上に上がった。何となく何を話すのか興味があったので話を聞くことにした。
「私は水の魔帝グラント家の次女として生まれました。魔帝の一族ということもあり、幼い頃より魔法を練習しました。私の周りには私より魔法の扱いに長けた人が何人もいました。なので、私は自分には大した才能が無いと、努力しても無意味なんだと思っていました。しかし、本日、首席合格ということでその考えが誤りだと思いました。努力をすればより扱いが上手くなる。そのことをみんなにも分かってもらいたいのです。努力を惜しまないで欲しいと。私たちはまだまだ上を目指せると。1年ユーナ グラント」
普通だな。可もなく不可もなく。
その後、生徒会長の話や教育指導の先生の話を聞き解散になった。
教室は成績順にA〜Eクラスまであり、俺はAクラスだ。恐らく筆記試験より、戦闘試験の方がポイントが高いのだろう。クラスにはもちろんユーナやゾルもいた。他にも光の魔帝の長男、レイ アネル。そして、元婚約者の闇の魔帝の長女、ミュウ ノワールなど、有名人が沢山いる。
「お前ら、席につけ。」
そんな中にいかにも脳筋っという見た目のおっさんが入ってきた。
「今日からお前らの担任になったグルト サーヴァンだ。今日はとりあえず自己紹介でもするか。出席番号順でいいな。」
割と早く俺の番が来た。
「ゼラル イレイズだ。よろしく頼む。」
それだけ言って俺の自己紹介は終わった。俺の名前を聞いたゾル、ユーナ、レイ、ミュウはこちらを疑うような目で見たがすぐに逸らした。だが、ユーナだけはさっき、俺が声をかけたためまだ疑っているようだ。
「まぁ、こんなもんだろ。明日からはしっかり授業するから忘れ物すんなよ?では、解散!」
そんなこんなで今日の学園生活が終わった。




